ネビラキカフェが目指すこと・ネビラキの3シーズン目にやりたいこと
2020年7月に始めたカフェを11月に一旦閉じ、春の予感感じる季節に入り、再びカフェを開ける準備を始めた。去年の11月に生まれた長男は間もなく4ヶ月になる。そろそろハイハイやつかまり立ちといった予測不可能な動きを始める時期に近づき、また、ツアーガイドの仕事も入れながらの家族経営カフェは一段とハードルが上がるな〜と少し憂鬱な気持ちも湧き上がってくる。カフェの1年目の振り返りがきちんと出来ていなかったのと、ネビラキの3シーズン目に突入する抱負と展望のまとめnote。
どういうカフェにしたかったか
カフェの構想は振り返ると、2019年春頃からあって端的に何を表現したかったというと
①地域住民の内発的活力を生み出す場
②人の感受性に訴えかける居心地の良い場
③対話が自然に生まれる場
です。順を追って説明していきます。
①地域住民の内発的活力を生み出す場
私がこのエリアに引っ越してきてからもう少しで3年経ちますが、驚いたことの一つが駅前エリアにも関わらず空き家が多かったことです。崩れかけてる建物やもはや雪で崩れてしまった家がそのままになってたりと、町の南にある湯川温泉へ向かう道のりとは思えないロケーションが広がっていることについて誰も何も言わないことに驚きました。
小さな商店は今もいくつか営業をしていますし、行楽シーズンになれば人もたくさん来るのですが、時間が硬直したかのように思考も止まっていると見受けられることが多々あります。地域の集まりに行くと本当はこういう問題を取り上げて皆で議論するところですが、実際は通りに犬の糞が落ちてて迷惑だとかそういう小さな問題に終止してしまうことは少し残念なところでした。
人がたくさん訪れ、なお住民も暮らすエリアだからこそ暮らす人たちが自分たちの暮らしの在り方を考え、豊かさや幸せをもう一度見つめ直すこと、つまりは内発的に起こる活力を生み出す必要性を強く感じていたのです。
本来、このエリアは60年前近くに作られた人造湖『湯田ダム』により、今は湖底になっているところから移転して建てられた家も多い場所でした。JR北上線が通り、アクセスも良い。観光地というよりは街の中心地といったところでしょうか。昔はパチンコ屋があったとも聞きます。
西和賀町は岩手県で最も過疎が進む町です。高齢化率も51.4%と2人に1人は65歳以上の超高齢化社会です。町の成熟期に入り、新しく何かを起こすよりはどう老いて死に向かっていくかがとても重要なフェーズに町も人も入っているんだと思います。それはそれでいいと思います。しかし、これからこの町で生きていこうと思う若者にとってはそのことが障壁になり、暮らしにくい未来になり得るということも考慮しなければなりません。
取り壊れされる寸前の空き家を買い上げ、自分たちでカフェを作ったことの目的はそういうところにあります。荒びゆく町だからこそ自分たちができることから自分のやりたいことを表現すること、またそれが見える形で「この町はもう無理だ」というそれぞれが抱える脱力感をジワジワと打破していくことがやがてそれぞれの内発的な活力に繋がるという確信を持って駅前通りの人がよく見る場所にカフェを作りました。
11月初旬の紅葉シーズンはオープン直前に行列が出来ることも。「カフェ繁盛しているね!」って地元の方から言われることも多かったので、見えるところでお店をやることの意義は大きい。
カフェを作ったから住民の内発的活力が生まれたかどうかはまだよくわかりません。しかし、地元のこれまで出会うことの無かった層の方とカフェを通じて知り合うことができてポジティブな会話が増えた実感はあります。今年、町のキャンプ場にカフェをオープンしたいということを知り合いが言い始めたり、趣味のワークショップをカフェを通してやってみたいという声が出てきたりと、間接的・直接的にせよ個人の肌感覚では内発的活力が生まれてきている気がします。何より自分がそう感じていることが一番大切なのかもしれません。
②人の感受性に訴えかける居心地の良い場
崩れかけた建物や未だに撤去されない崩れた家。これらがなぜ放置されるのかをここ数年真剣に考えました。京都のような歴史的建物が並ぶ場所ではすぐに撤去されるはずです。私はこの理由を、自分たちが“いい”と思えることに自信が無いこと、すなわち美的センスの欠落と考えました。近所の方にあれらの建物が撤去されない理由を聞くと、「訳あり物件だ」とか「複雑な人間関係でどうしようもできないんだ、、。」という声が聞こえてきます。その前後に口を揃えて言うのは「みんな思っているけど、、」という枕詞です。いやいや、京都に行って綺麗な町並みの中にたった一つの瓦礫の家があったらどう思いますか?。私はこのエリアに引っ越してきたときここの美しさに心底惚れ込みました。
私も撤去されない崩れた家問題に対して何もしなかったわけじゃありません。持ち主とコンタクトを取り、自分たちが瓦礫を片付けるから土地ごと譲ってほしいと、リスクを取りにいったこともあります。
色々動いたが、個人的で複雑な問題で結局は今もなお放置されたまま。町の方では危険特定空き家に指定し行政代執行の手続きを進めていたそうだが、いざやるとなった時に所有者の関係者が春までに自分で片付けるという旨の発言をしてきたそうで未だに撤去はされていない。これまで何も進展してこなかったところを見ると春までに撤去されるかも怪しいので、撤去の期限を決めた契約書を交わしてもらうよう陳情書を準備しようか検討中。
カフェを訪れてくれた多くの方々がここのロケーションに感動していきました。
「サウナ後の“整った”という感動に近い感覚を覚えた」
「ずっとここにいられる」
「私もこの景色がある暮らしがしたい」
カフェを訪れた方の多くは町外の方でしたが、たまに訪れる地元の方も感動されているようで、夕方長居をするお客さんだな〜って思ってたらこういう場所があったことに感動していた近所の方だったりしました。
錦秋湖という湯田ダムが出来てから間もなく60年。これまで喫茶店や食堂はこの通りにありましたが、錦秋湖が見える側に何かがあったわけじゃないので、カフェはこのエリアに新しい価値付けが出来たんだと思います。自分たちが“いい”と思えることに自信を持つこと、そのためにはきちんとした値付けはやはり必要です。1年、2年、10年とカフェを続けていくうちにこちらに暮らす人々の美的センスを磨いて行き、自分自身の感受性に自信を持てる人を増やしていきたいと思います。
③対話が自然に生まれる場
田舎に限らずの話かもしれませんが、人は他人の噂話好きです。悪いことではなく時に絆や一体感が深まることがあるとは思います。しかし、そのことが逆に閉塞感を感じさせてしまうこともあるとも感じていました。人の動きが少なく関係性が硬直してくるとどうしても”なあなあ”の関係になってきてしまいます。どういう経緯でこうなったのか、なぜこうなったのかはあまり語られません。今、西和賀町では町営の温泉施設売却問題や公民館の在り方の問題が出てきています。先日、公民館の在り方についての地域説明会に参加してきましたが、ひととおり行政側から説明があった後、町民から怒号が飛ぶ場面がありました。急速な人口減少や高齢化、合併特例の交付金が終了することから、だから今急いでいろんなことを整理しているように感じてしまい、住民と行政との溝が深まっていくように感じました。そもそも、昭和52年に町に7つしか無かった公民館がどうして今44個もあるのか。地区協議会がある地域と無い地域があるのはなぜなのか。経緯を知らない私にとっては『?』が浮かぶばかりですが、そういうことをしっかり振り返っていかないと今後住民の思考停止を招く事態になりかねないと危惧しています。
町が成熟し、これから多くの変化が加速していく中で、普段から住民間で対話をしていかないと、いざという時に対応できないのは明白です。実際先日の地域説明会で起こっていた問題はそういうことなんじゃないかと思ったりもします。
対話は「なぜ?」から始まると思います。多くの課題が同時に発生する西和賀だからこそ、訪れた方にたくさん「なぜ?」と言ってもらい、住民に多くの気づきを与えて欲しい。そういう意味でおしゃれなカフェの隣に崩れた家があったりすることは本当は良い教材だと感じています。『対話が自然に生まれる場』というのは今後カフェで表現したいことの一つです。
ネビラキが目指したいこと
今までつらつらとカフェが目指したいことをを改めて書いてきましたが、持続可能なまちづくりってつまりこういうことなんだと思います。国や町でやる移住定住政策や所得と雇用を生み出す6次産業化、関係人口増の取り組み。もちろん大切なことだとは思いますが、本当に10年、20年先、もっと言えば100年続く地域を目指したいのであれば、自分の半径5mから足元を良くしていく(暮らしをつくっていく)人材を増やしていかないと地域は持続していかないと考えます。半径5mというのは、自分の家だけでなくお隣の家も円に入る大きさです。自分の幸せの追求、そのためには隣人が幸せであること。その輪が広がっていくことが本当に持続可能な地域社会を生み出していくんだと思います。
団体名にもなっている『ネビラキ』とは『根開き』から来ています。
春先、木の幹に太陽の光が当たってその輻射熱で円形状に溶けていく現象のことです。雪は暮らす人々にとって課題でもありますが、この根開きという現象は春先の2週間くらいしか見られない美しい現象です。地域にたくさん積もっている雪(課題)が照らされる太陽(事業・活動)によって雪解け(解決)に導かれるようなそんなイメージを持ってネビラキの3期目は取り組んでいきたいです。根開きが美しいのは、木の周りに雪が残っているからです。
そしてこれから
カフェは4月から2年目に入りネビラキとしては3年目に突入します。ここからはネビラキが今年実現したいこと。まだ仮名ですが。
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