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一瞬一瞬に立ち会えることの大切さ

雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり、空も冷たい滑らかな青い石の板で出来ているらしいのです。
「堅雪かんこ、しみ雪しんこ。」
お日様がまっ白に燃えて百合の匂いを撒きちらしまた雪をぎらぎら照らしました。
木なんかみんなザラメを掛かけたように霜でぴかぴかしています。

宮沢賢治の童話『雪渡り』の冒頭です。
西和賀町では2月下旬〜3月中旬くらいまで、積もった雪が朝に固くなり、堅雪の上をカンジキといった道具を付けずに歩いて渡れます。
今朝、朝5時に起きて、6時から錦秋湖のほとりを歩いてきました。

今の錦秋湖は水位をドンドン落としていて、湖のすぐそばを歩ける。

東の空には太陽が昇ろうとし、西の空には月が沈もうとしている。

どこまでも歩いていける。
キックキックトントンキックキックトントン

林の中でを歩く。背中には陽の光が。気持ちがいい。

私が小さい頃、父に朝早く起こされ、堅雪の上をトントンと走っていたのが思い出されます。

こんな面白おもしろい日が、またとあるでしょうか。いつもは歩けない黍きびの畑の中でも、すすきで一杯いっぱいだった野原の上でも、すきな方へどこ迄まででも行けるのです。平らなことはまるで一枚の板です。そしてそれが沢山たくさんの小さな小さな鏡のようにキラキラキラキラ光るのです。
                          宮沢賢治 雪渡り

大人になって、宮沢賢治の描写する言葉の一つ一つが身体中に染み渡ります。

1時間ほどしたら帰ってくる。朝8時半頃にはもう雪がグサグサと腐り始めてきた。

イーハトーブの冬

午後は、これに参加してきました。

午前中の自然観察会には参加できませんでしたが、午後の部の、映像と朗読会とギャラリートークに参加してきました。

朗読をしたのは、母と友人の情野ちゃん。
母のはまぁまぁとして、情野ちゃんの朗読は素晴らしかったです。
今朝、実際に雪渡りをしてきたというのが1番大きいかもしれませんが、言葉一つ一つがきちんと理解でき、雪渡りの世界が簡単にイメージできます。それと情野ちゃんが楽しそうにリズムよく喋るから、またあの雪渡りを今からでもしたくなりました。

終わってからは父のギャラリートーク。参加者が想像以上に多かったため、客席があるホールでスライドを用いての開催でした。

左のはアカミヤドリギ。宮沢賢治の言うところの「美しい黄金いろのやどりぎのまり」です。

今回の企画展で展示してある写真一枚一枚を丁寧に説明していきます。

全体を通して思ったのは、父も言っていましたが、実際にその光景に立ち会えるかどうかだと思います。どんなにいい腕を持ったカメラマンでも、実際にその条件に立ち会わなければいい写真はとれません。気候状態、天気、光の角度、気温や湿度、それ以外にも多くの条件が重なった時、生きてて良かったと思える光景に立ち会えるのだと思います。そして、それは西和賀にはいくつもあります。私は、そんな光景にフットワークは軽く瞬発力をもってして、出会い、伝えられるような人間になりたいです。

花巻からの帰り道の1枚。太陽が沈む瞬間に立ち会えて、その時カメラをもっているかどうかが大切。

これから西和賀は雪渡りのシーズンです。
「明日の朝行きます!」というアナウンスを急にするかもしれないので、歩いてみたい方は目を見張っててください。

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