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割引オプションは、誘客のための餌ではなく、客や町を巻き込むための装置である。  (体験の値段設定の裏側で考えていたこと-後編の続編)

カヌー体験が始まった2日目、廻戸川の奥でトラツグミ(ヌエ)を見た。ちょうど数日前に鳴き声を聞いたばかりだった。3日目にはセンダイムシクイが鳴いた。滝のあたりにいるキセキレイには毎朝挨拶する。ミソサザイやクロツグミの歌声や、コガモのシルエットを覚える。日一日と芽吹きが進み、森が淡い点描画のようになる。24節気の「穀雨」にあたる今は、雨の翌日に山野草がボンボンボンッと伸びて開花するような動植物のエネルギーがそこらじゅうに満ちている。今日は偶然オオルリとキビタキを見かけたが、この先また見られるとは限らない。そういう変化の真っ只中にいると、毎日がかけがえない一日で、なにもかもが一期一会だという気がしてくる。

前置きが長くなったが、ただのカヌー乗船体験にはしたくないという意気込みを先週書いた。体験の値段設定の裏側で考えていたこと-前編- 1時間1艇1万円は高いか安いか

それに続いてzenが後編を書いてくれた。体験の値段設定の裏側で考えていたこと-後編-すきとおったほんとうのたべもの

今回は、後編でも触れられているが割引オプションについて少し考えたことを書きたい。

西和賀旅館割引のウラガワ

今回のカヌーツアーでは、西和賀の旅館に泊まったら1000円オフという割引を設定している。通常こういう割引は、旅館側と交渉して1000円オフ分は広告費として旅館側にも一部or全額負担してもらうのが普通だろう。
だが私たちの場合は違う。
「1000円オフ」は自分たちの売上を削る。
わかりやすくいえば、カヌーに乗る人が西和賀に泊まれば私たちは一銭の得にもならないどころか、売上は減る。では、なぜこの割引を入れたのか。

西和賀の宿を経営している・働いている人たちに、西和賀の魅力を発信してほしいと思ったからだ。だから宿関係者はタダでカヌー体験来てくださいともお伝えした(いまのところ乗りに来たのは2軒)。宿に泊まったお客さんがもしこの期間限定カヌー企画を面白がってくれたら、また違う季節に来たいと思ってくれるはず。特に早朝のカヌー体験は西和賀に住んでいるまたは泊まった人の特権だ。宿に泊まるインセンティブが働く。こういうチャンスを活用してほしいな、と思う。

感想文寄稿割引のウラガワ

こちらはカヌーに乗った人を巻き込む仕掛けである。いわゆる口コミなわけだけど、こちらの願望としては西和賀に住んでいる人に積極的に発信してほしいと思っている。3/28に川尻で開催した対談イベント「地域の価値をあげる場づくりとは?」(詳細は暮らしのうつくしさを楽しみ地域の価値をあげる3日間 in 西和賀レポート⑧)の中盤で、ゲストのトークに触発された地域の人たちが身の回りの「イイトコロ」を話し出したら止まらなくなったというシーンが忘れられない。みんな地域の課題ばっかり話題にするけど、実は西和賀のいいところをちゃぁーんと知ってて、ただ、話す場がなかっただけなんじゃないかと思った。だからそういう場を、なるべくたくさん、いろんな形で作りたい。毎週開催している鍋会議もその一つで、この感想文寄稿割もそう(もちろん町外の人も対象です)。身近にこんな贅沢があるってことを素直に喜ぶ余裕が大切だなあ、なんて、しみじみ。

そういうわけでまとめ=タイトルだけど

割引オプションは、誘客のための餌ではなく、客や町を巻き込むための装置である。

巻き込まれに来てくださいね。

今日はビール日和

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