「瑛然」立ち上げにあたって〜然編
平成最後の年、自分にとってこの年は忘れられない年になりそうです。
結婚や27年暮らした生家を出てからの暮らし、出会いと別れ、自分中での思い切った決断。何を見てもベストなタイミングで物事は進んでいるようにも感じます。
心境の変化というのは書き記していないと忘れてしまうもので、意外と“ファーストインプレッション”は大切で、初心を忘れないという意味でもまずは「書く」ということから始めていきます。
タイトルは“瑛然”。妻のeiと自分の名前のzenから取りました。
イーハトーブ(岩手県)西和賀で27年間一度もここを出ることなく生きてきたzenと、結婚を機に西和賀に嫁いできた東京出身のeiが、雪深き厳しい西和賀の暮らしの中で感じるワクワクと、のんびりした田舎暮らしの中で感じるモヤモヤを無理のない範囲で書き綴って行きたいと思います。
イーハトーブ西和賀とはどんなところなのか。
そもそもイーハトーブというのは岩手県出身の童話作家宮沢賢治が名付けたものでこう書かれています。
「イーハトヴとは一つの地名である。強て、その地点を求むるならば、大小クラウスたちの耕していた、野原や、少女アリスが辿った鏡の国と同じ世界の中、テパーンタール砂漠の遥かな北東、イヴン王国の遠い東と考えられる。実にこれは、著者の心象中に、この様な状景をもって実在したドリームランドとしての日本岩手県である。」
西和賀はそんなイーハトーブの西側、秋田県と岩手県の県境に位置し、日本の背骨奥羽山脈のど真ん中に位置する場所です。全国でも有数の豪雪地帯であり、昨シーズンの冬は今住んでいる家の隣の家が雪の重さで潰れました。
とまあ、人が暮らすには過酷なような気もしますが、はるか大昔の縄文時代の頃からこの地域に人々は暮らしていたというから、生きる上でのメリットと情緒的に訴える何かがあったから今の時代まで人が暮らしてきたんだと思います。
西和賀に暮らしている人は雪をまるで悪のように言いますが、雪があるから春の喜びだったり、山の幸が豊富に採れるということが可能に思われます。厳しい自然環境から学び得ることは多いと考え、また、大吹雪の間の晴れ間とかは言葉に出来ないほど美しいのです。西和賀の人たちの前で「冬が楽しい」と言うとまるでキチガイのような目で見られますが、そこをあえて「美しいものは美しい」と堂々とワクワクすることを発信していきます。
もう一つ。のんびりした田舎暮らしの中で感じるモヤモヤを書き綴ると書きましたが、地縁血縁関係が濃い田舎では、本音を言わないことが美徳とされ、常に他力本願で物事は進んでいきます。そんな違和感を自分の変な感覚とせず、発信していきます。
「イーハトーブでは罪や悲しみでさえも清く綺麗に輝く」と宮沢賢治は言っていますが、我々が西和賀で感じ取るワクワクはもちろんモヤモヤでさえも綺麗に輝くという現実を現実のままに伝えて参ります。雪は踏みつけても雪のままで近くで見れば多少は汚れているかもしれませんが、遠くから見れば宝石のようにキラキラしているものです。
人が生きる上で「本当の幸い」を見つけるというのは永遠のテーマかもしれませんが、実は目の前に転がっていて、全てはその転がっているものをどう捉えるかというのが大切なんだと思います。
zen