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月響(げっきょう)13
卒業式の前日、ついにミサキから携帯に連絡が入った。
「ミツミ?」
「うん」
「ずっと連絡しなくてゴメンね」
「ずっと待ってたよ」
「うん。ゴメン」
ミサキは言葉に詰まり、そのまま黙ってしまった。
私はミサキの伊東美咲顔が困り顔になるのを思い浮かべる。
でもそれは本物の伊東美咲の顔になってしまい、ミサキの顔がなぜだか
思い出せなかったので私も困ってしまって何も云わずに黙っていた。
「私ね、卒業式出ないから」
「えぇ?何で?」
驚いた声を出したらまた黙ってしまった。
受験以来学校では授業はあってないようなカンジで、休んでも良いことに
なっていた。
私もミサキもずっと学校を休んでいた。
でも私は、明日の卒業式と『稔田君をしのぶ会』というウザいタイトルの会にだけは出席するつもりだった。
「このまま、学校行かないままで卒業しちゃうの?」
「うん、そうなっちゃうね。ミツミにはどうして学校行かないか
話したいんだ。会って話したいけど時間ある?」
「もちろん!私もミサキに会いたいよ、とっても」
と前のめり気味に答える。
ミサキは時間と場所だけ云うと、変な余韻を残して電話を切った。
このヘンな余韻は何だろうと考えてみたら、いつも自分の意見をはっきりとは云いたがらないミサキが妙にテキパキと電話を終えたからだった。
自分から会おうとか場所を一方的にしてきたりとかけっこう驚きだ。
さすがに話したいコトがたまっているのだろう。
三十分後に南口のジョナサン。
最近チャリを全く使わないモードの私はそろそろ家を出なくちゃならない。
コンタクトレンズのすすぎが間に合わないのでメガネと、それから財布と
携帯をポシェットにつっこんで。