月響(げっきょう)23
歩きながら、高校に入ってからのいろんなコトを思い出して次から
次へと競争みたく喋りまくった。
そこにはいつもナリタ君が居た。
三人きりの、堅苦しくない卒業証書も何もない卒業式。
シンプルイズビューティフォー。
想い出は全て美しい。
ミサキの家は最後に来た去年の冬休みとは少し様子が違っていた。
「やっぱりわかる?」
と私の顔色の変化を読み取ったミサキ、すばやい。
「お兄ちゃんの部屋のせいだと思う。
……お兄ちゃんが閉じこもり出した頃は私もすっごくイライラしちゃって
ナリちゃんによく当たっちゃった。
今はお兄ちゃんも私の知らないトコですっごく悲しいコトとか
あったんだろうなーって思うんだ。
それで、お兄ちゃんがまた外に出たいなーって心から思える日を
待つコトにしたの。
そうだ!お好み焼、お兄ちゃんの分も作っとこう。
焼きそばが入ったのが好きだから」
と云うとミサキは、冷蔵庫からいろんな食材を取り出してテーブルに
並べ始める。
中学の頃、私はミサキの家の冷蔵庫を“魔法の箱”と呼んでいた。
その箱の中にはピチイッと音がしてきそうなほどキッチリと、大きいのや
小さいのやタッパーがきれいに並べられていてそのすき間にもいろんな
食材が詰めこまれていて、ミサキのお母さんはいつもそこからチョコチョコ
数品取り出すとあっという間に超おいしい料理を作って振るまってくれた。
ミサキはお母さんの魔法をしっかりと受け継いでいて、私がほとんど何も
手伝わないうちにお好み焼のタネは出来上がっていて、あとは二人で
おモチと焼きそば二種類のお好み焼を焼くとアツアツのうちにペロリと
たいらげた。
次葉へ(あと二話)