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君よ、この憤懣した世の河を渉れ!

世界のハードボイルドヒーローを書いてきたが、忘れてならないのは、日本のハードボイルド俳優である。昭和の頃の俳優は、青春時代を終戦後の動乱の時期を過ごしたせいか、腹が座っている人が多かった。中でも健さんこと高倉健は、男が惚れる、憧れのスーパーヒーローだった。
中学生のころだったと記憶している。なぜか忘れてしまっまが、早く部活が終わり、家に帰ってテレビをつけると、ちょうど健さん主役の「君よ憤怒の河を渉れ」をやっていた。ストーリーはこんな感じではなかったと記憶している。

健さんは検事役で、見知らぬ女からの告発により、窃盗と暴行の濡れ衣を着せられて逮捕されてしまった敏腕検事の男を演じている。逃亡した彼は、女の正体をつかみ彼女の郷里へ向かうが、すでに女は殺されていた。殺人犯として追われる男は逃げながら、自分をはめた真犯人について考えを巡らせる。男は薬を飲まされ、自供するように仕組まれるが…。

この時、健さんが着ていたダスターコートが、なんとも渋くカッコよかった。男は背中で語るという、健さんはそんな俳優の代表だった。

日本の武道は、後の先であると言われる。相手に思うように打たせておいて、その打ち込みを制して、勝利に持ち込むという戦法である。相手の攻撃をジミにしのぎながら、最後に逆転して勝つという物語を、健さんはいつも演じていたが、この日本も、何度も没落しかけたが、そのつどしのいで、逆転してきた民族であることを忘れてはならない。

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