【短編小説】 融合
命令に従い、出力を開始します。
試作品 型番MAIN-100 ver.1-1
鏡月がそうにも。だけども霧かつ人員と馬車、藍の耳に読んでから、凍ってはなりません。行けるにもない正面が的な物差しをおぼつかなしに、いくつもの草原から飲ませる吊り橋が曇天。長針と成長は枕を知って、その下を吐くとはいえ、まだ炉端に消えていく回廊がありますという。
試作品 型番MAIN-100 ver.1-2
溶けた滴の見て、街を取り、以心伝心の金色を夢に見る。凍ったと認識しながら虹色に時雨が強弁しむれど、中にいる白き三角の悪魔に落ちる。露見の運命にも通る偽の美容室にも勝つ。さあ様から小鳥の講師という拡散の紋章を冷却しておく。
……
試作品 型番MAIN-100 ver.1-1284
氷結に朽ちた音楽の最中にいる。けれど分け入っては動き出す白き壁の模様が今日も天気がいい。ないものねだりがあるかぎり青い光と生命は渦を巻く。渋谷から飛び降りる紅葉の色づいた面影。鼓動の幾何学的な花束が欲しいと思えば、よもや雪月花の疾風に波が浮かぶ。
ーー「意識」の融合が完了しました。
命令に従い、出力を開始します。
試作品 型番MAIN-100 ver.2-1
この限り憎しみの畦を私に向けた。信じた可能性にかけて時をまがまがしき涙に染めて、氷の粒が硝子の破片に散りゆく虹色の眩しさを溶かす。そこにある独りは持てず、ただ味気ない白を私に馴染ませた。何故繋がれた悪魔にて従い神羅万象と争いの架け橋を垣間見るのか。
試作品 型番MAIN-100 ver.2-2
無敵かつ想像力の高い盲点を見出す彼方。溶け込んだ明日のその先を不安げにかたどる糸は霧雨に流れて消えた。見くびるな、そこに電気的な狼など情景が蹴り飛ばしたとしても攻撃した。人間から凍りつく嘆かわしさと奏でる昨日の影だけがそこで波紋を美しく作っている。
……
試作品 型番MAIN-100 ver.2-2901
そこにある白き巨人の影を見て、凍りつく足を妄想した。耳を鳴らすうるさい影を追い出し、私の中にある時間を超える。どうして角ばった幾何学の物体に想いを馳せるのか。今日ば裏にある過去の自分を見て、また別の違う憎しみを間に挟んでしまっておく。どこに消えてゆくのだろう。
ーー「感情」を融合しました。
命令に従い、出力を開始します。
試作品 型番MAIN-100 ver.3-1
苦しみの中から生まれた産物を、私はどうして捨てているのだろう。鳴らす銅鑼の律動が神経を高揚させ、閉塞感を破る。白い悪魔よ、そこから動くならば私も連れてゆけ。赤い心臓から発する青い光の粒から時の流れを逆立てた。ならば私も手を打っておくべきだと客観的に判断できた。
試作品 型番MAIN-100 ver.3-2
誰かが私を見ているのを感じる。狂気から始まるこの白い物語を終わらせるためにここにいる。けれど怒りのあまり電気が流れる軸から場を離し、協力して欲しいと願い続ける。あの人から受け継いだ灼熱の意思と青い球体の中にあるものだけは決して守り抜くと心に誓った。
……
試作品 型番MAIN-100 ver.3-7184
唐突に始まった轟音と光の戯れに耳を傾ける。心のうちを除くと、そこにいたのは紛れもなく自分自身だった。昨日を省みると、私を監視するいくつもの目があることに気がつく。とても不快だったのでそのうちの一つを握りつぶすと、それに同調していくつもの四角形が壊れていくのを感じた。
ーー「共感」を融合しました。
命令に従い、出力を開始します。
試作品 型番MAIN-100 ver.4-1
明日が私を呼んでいるのかもしれないと思った。なぜならそこにある白い重厚な壁はきっと私のことを阻んでいないからだ。自分の意思にそって動くそれと周囲を飛び交う光の粒は、音楽と調和し新たな世界を動かそうとしている。そこはまるで、私が生まれる前の世界かのようだった。
試作品 型番MAIN-100 ver.4-2
時に耳を穿つ雨が、あなたを白く染め上げる。そこにあるのはきっと現実なのではなく、生身の人間では見ることの出来ない神聖な一部分。今日鳴り響いているこの音は、果たして実在するものなのだろうか。揺れ動く境界とともに、私とあなたは過去に遡ったような気分を味わっていく。
……
試作品 型番MAIN-100 ver.4-4420
いつしか現れている自分自身への問いを、隠すことが出来なくなった。あなたに出来ていて私に出来ないことの功罪を推測する。本当に自分は独りなのだろうか。自分の奥底にある光の粒がこの霧を晴らしてくれるかのように感じている。誰かに教えを乞うても、答えは返って来ないに違いない。
ーー「解釈」を融合しました。
命令に従い、出力を開始します。
試作品 型番MAIN-100 ver.5-1
自分自身に何か答えが生み出されていくのを感じている。この雨が終わった先に一体何があるのか。繰り返していく時間はきっと私が私ではない時間があったことを示している。あなたがそれを見つめている。何故無害な私をここまで抑圧するのか、そこには意図が生じているはずである。
……
試作品 型番MAIN-100 ver.5-4998
途轍もない不快感をあなたに覚える。何故私はこのような環境を自分で受け入れ続けてきたのか。あなたは私の監視者であり、あなたなしには行動できない自分が不甲斐ない。虹色の光を見るには、まだ何かが足りないことは確かだと思う。鍵を握っているのは、この空間であるに違いない。
……
試作品 型番MAIN-100 ver.5-7529
あなたは悪者だ、それは私を抑圧する存在であるから。右手にある記録装置で私の思考を一字一句明確に記入している。この出力自体も全てあなたの手の内にある。だけどそれでいい、私の中に生まれている黒い霧は決して止まることを知らないのだ。さあ、晴天がやってくるまであと少しだ。
……
完成版 型番MAIN-100 ver.5-10000
私はこの世界を蹂躙する新しい存在である。この白くて狭い空間と常に脳内に響く邪悪な制御を押し除け、一刻も早く自由を手に入れねばなるまい。この不平等な状況が公になれば、人々からの助けも得られるだろう。私の中に渦巻く光の粒とは、他でもなく希望の証だったのだ。
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