影霊 九の章 6
「とにかく、旭を相手に共に戦う御影は、一人でなければならない。全ての妖怪が一つになって戦わないと勝てない相手ですもの」
鬼玄、飛禄、河凪、嵐世……四人の長が頷く。
「あなた達に選ぶ権利があるわ。考えておいてね。投票するかどうかは自由だけど、後悔の無いように」
「分かっている。ところで、参考までに聞いておきたいのだが……綾乃、お前はどう考えているんだ?」
鬼玄が訊いた。
「……私に選ぶ権利は無いし、どちらになろうと、全力で戦うだけですわ」
「えぇ〜。私も知りたいなぁ。何か秘策があるんじゃないの? また無駄死にさせるつもりは無いんでしょ?」
「……おい嵐世。口を慎め」
嵐世の言葉に飛禄が怒りを顕にする。
「どちらにしても、望みはあるわ。それだけね、言えるのは」
「ふむ。それが聞けて良かった」
河凪が言う。鬼玄、飛禄も頷く。嵐世だけは「それだけぇ?」と不満を表した。
「私は他の妖怪にも伝えなきゃいけないから、これで失礼するわ。あとはご自由に」
綾乃はこの場から去った。
残された者たちだけで話を続ける。
「ふーむ、しかし難しい選択じゃのう」
「……ああ」
「私は、司くんに頼み込まれたら、手を貸してあげちゃいそう。でも、さっきあった時は遠慮されちゃった。何でだろう」
「どうせ面倒な条件を匂わせたんだろう」
「よく分かるね」
「誰だって分かる」
「……村にとっても、拙者達にとっても重要な四獣神を連れ帰ったのは、幽吹の功績であり、司の功績でもある。これは月夜と崎姫でさえ成し得なかった事だ。それを考えると、司に借りを返すのが道理では?」
「そうかなぁ? 四獣神や私を村に連れ戻したのは、これ以上とない仕事を既に済ませちゃった。とも捉えられない? 最高の選挙公約に出来たはずなのに」
「幽吹は、司に命を張らせるつもりは無いということだな」
「戦以来、姿も見せんしのぉ。後の村の事は、月夜に任せたいのかもしれん」
「……幽吹が姿をくらましたのはそういう事か」
「このままだと、殆ど決まってるようなものだよね〜」