影従の霊鬼夜行 九の章 1
屋敷までの道程、青々しい草原を歩く。
弁慶と風尾は儀右衛門の手伝いを続けて貰っている。
手が空いていた逢魔は、俺と綾乃に付いてきた。
「で、どうしたの?」
綾乃に用件を尋ねた。
「あなたのお母さん、月夜が村に来てくれるわ」
「何で?」
「司の様子が見たいんじゃない? 予定だと、明後日くらいに到着よ」
久々の再会。いや、電話さえ出来なかったので、久々の会話にもなる。
「そこで。せっかく来てもらうついでに、月夜と模擬戦をしたみたらどうかしら」
「模擬戦?」
何の?
「御影の人間は、妖怪と共に戦う場面が想定されるわ。今後の事を考えると、御影の人間として先輩である月夜から学ぶ事は多いと思うの」
「なるほどねぇ」
「月夜もやるからには本気で相手したいって言ってるし、まずは模擬戦なんてどうかなって」
「頑張れよ司」
逢魔が言う。
「あなたも参加するのよ。御影の人間としての戦いは、妖怪をどれだけ活かせられるかが問われるのだから」
その言葉を聞いた逢魔はニヤけた。
「俺様も戦っていいのか。あとは誰だ? 風尾と弁慶もか?」
「そうなるわね」
「母さんの方は、咲さんと市おばさん?」
「ええ。あとは……矢を入れる道具の付喪神、古空穂の空もいるわね」
母が使っていた矢入れは、すごく古いものだった。もしかすると、あれだろうか。動いたり喋ったりするところは見たこと無いが……
となれば頭数だけなら、今のところ4対4となる。模擬戦と言えど、戦力的に厳しくないだろうか? せめてもう一人……
「……幽吹は?」
「帰って来たらいいのだけれどね」
いざという時、一番頼りになる妖怪が不在である。
まぁ、模擬戦だからいいか……