影従の霊鬼夜行 休の章 1

戦が終わると俺は、逢魔、風尾、弁慶と共に屋敷に戻り、死んだように眠った。霊力や陰力の消費が俺も激しすぎたようだ。
その間、三将、四獣神、幽吹、嵐世は綾乃の立会いの下で、戦を締めくくる話し合いをしていたらしい。

これはその翌日の話。

「……あら、おはよう司。昨夜はお疲れ様」
何かの気配を感じて目を覚ますと、寝室には綾乃が入り込んでいた。
「おい、まさか綾乃、お前もここで寝てたんじゃないだろうな」
「それはしてないわ。司が起きなければ、ここでもう一眠りしようかなとは思ってたけど」
しようとしてたのかよ。
それにしてもこの部屋、侵入者が多すぎる。俺のプライバシーは侵害されっぱなしだ。鍵を付ける必要がありそうだが……妖怪に通用するのだろうか。逢魔は薄い壁程度なら平気で通り抜けるし。
「だってみんなここで寝てるんですもの。私だけ除け者なんてひどい」
風尾と逢魔もこの部屋で眠り、弁慶は部屋の外の壁に背を預けていた。
……おや? みんなと言う割には、誰か足りないような。
「幽吹は?」
「もう他の四候と一緒に、村の外に行っちゃったわよ。多分そのうち戻ってくるとは思うけど」
鬼玄と何らかの因縁があったという鬼然には今回の戦に関わる理由があったが、炫彦と銀竹は幽吹に頼まれての助っ人だったらしい。そのため、今度は幽吹が今回の借りを返す番なんだとか。
しかし、随分と忙しない動きだ。少しくらい休めばいいのに。
「今日は、勝利を祝して庭で宴会を開くわ。あなたの歓迎会も兼ねてね。四獣神や匠骨、河童の大将河凪も来るはず」
綾乃の侵入により眠気も吹っ飛んだので、朝食の準備をする事にした。逢魔、風尾、弁慶はまだ熟睡している。
その最中、綾乃が言った。
「えっ、河童も」
確かにやる気は見えなかったが……まさか祝勝会まで来るとは。
「四候がいなくなっちゃったのは残念ね。特に銀竹」
銀竹は河童相手にやりたい放題だった。特に河童の副将沢虎は、実は俺の身を案じて動いていたところを、それを信じなかった銀竹に倒されたのだとか。銀竹がまだ村に残っていたら、少し面白い事になっていただろう。
「昨夜の戦で村の問題の多くは解決に向かうはずよ。幽吹のおかげね」
村の妖怪を監視する役目を担う、四獣神の不在という大問題を解決したのは、幽吹の活躍あってこそだ。綾乃だけでは出来なかった事なのだろう。
「三将同士の確執は、少し広がったみたいだけど……それも嵐世の帰還によって中和されるかも」
河凪は今後、鬼や天狗とは一線を画した行動方針をとるのだとか、新たな問題の火種にもなりそうだが、四獣神の存在や、マイペースな嵐世がいることで大きな問題にはならないような気がする。

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