影従の霊鬼夜行 影の章 1
初瀬村で初めて拝む日の出が眩しい。眼球が痛む。
「うおおおおお。体の穢れが浄化されていくぜえええええ」
右隣に並んで朝日を浴びているのは逢魔だ。霊体からぷすぷすと煙が出ている。そのまま全て消えて無くなったりはしないだろうか。
「はぁ。何で私まで……妖怪にも睡眠は必要なのよ?」
左隣に並んで欠伸をするのは綾乃だ。何だこいつ偉そうに。俺が一番の被害者だよ。
「もう満足だろ。俺は今からでも寝る」
なぜこうして縁側で三人並び、日の出を拝んでいるのか。それは逢魔がうるさくて眠れなかったからである。久々に外の世界に出られたことに加え、話相手が出来たことが嬉しくて堪らなかったらしい。結局騒音問題は解決しなかったのだ。とにかく綾乃一人が眠る事だけは阻止した。
「そうね。少し休みましょう……と言いたいところだけど、今日は村の見回りをしないと……あら?」
綾乃が立ち上がると、何かに気付いた。俺の背中を見ている? 何か付いている?
「何?」
「ちょっとね」
綾乃は扇を取り出して、俺の背中の方を煽いだ。やはり何か付いていたようだ。
ふと隣を見ると逢魔が未だにぷすぷすと煙や煤を出している。こいつが原因だ。
「程々にしとけよ。全部無くなるぞ」
「無くならねぇよ。ずっと閉じ込められてたから垢みたいなのが溜まってんだ」
逢魔の日光浴は置いといて、俺と綾乃は朝食の用意をする事にした。