影霊 九の章 4
陰力の扱いに更に慣れるため、屋敷の庭で『連雀』を発動する。群れを成した黒い小鳥が屋敷の周りを飛び回る。
『墨連雀』は翼に攻撃力を備えているが、連雀はただの鳥だ。見た目は殆ど変わらないけど。
「お前のその刀ってよ、持たなくても陰力使えるのか?」
小鳥が舞う中、逢魔が訊いてきた。
「ああ、うん。近くにありさえすれば使えるみたいだけど……」
少なくとも、手に持っていなくても陰力は発動できる。
それを証明するため、叢影を手放して縁側に置いた。
連雀達の姿が消えることは無い。
「それに、吉田と桐竹も俺の手に無くても線路引けたしね」
「ああ、確かにそうだったな」
あれはまぁ、吉田と桐竹が付喪神になっているという条件と……俺が手にしていた叢影と、吉田・桐竹が連動していたという条件が重なり合った結果かも知れない。
ツキヒの武器は、御影ツキヒの陰力によって鍛えられたものだと聞いた。単なる金属製の武器ではない。俺の常識では測れない部分が多い。
「この武器は、俺の陰力の発動を補助するものなんだと思う。だから、仮にこの武器が無くなったとしても、俺だけでも陰力自体は使えるんだよね。効率は落ちるだろうけど」
当然刀としても使えるが、叢影の真髄は使用者の陰力を増強する機能では無いだろうか。剣の腕が優れているわけではないので、そこはありがたい点である。
悲しい事に、陰力の扱いも下手な方だという事実からは目を背ける。だって、こっちはまだ上手くなる余地あるかもだし……
「……刀として使わなくても、戦える方法があるってのは大切だよね。もっと模索するべきかな」
だが、それを探求するのはあまりに時間がかかりそうだ。明後日行われるという模擬戦には間に合わない。
だとすれば、今試すべきは、もう一つの可能性……
幽吹も八房もいない状況で、母に少しでも善戦するためには……