影霊 キの章 12
水鉄砲ではないが、液状にした影を発射し続けるイメージを持って吉田と桐竹の引き金を引き続ける。
最初の内は普通の銃弾しか出なかったが、次第に吉田と桐竹も俺のやらんとしている事を理解してきたのか、棒状になった銃弾を吐き出すようになって来た。
「ふぅ、少しは進展したね」
やっと生物以外のものを陰力で作り出せた。
しかし、陰力の消費も激しい。弾を撃ちすぎた。少し休もう。
「司くん。どうだね、ワシのこの姿は」
儀右衛門がガラクタの山から出てきた。
青狸の玩具は、厳しい兜と鎧を身に纏い、大きな箪笥のような物を背負っている。箪笥の中には武器が入っているらしい。
「見た目はマシになったけど、その短い手足じゃあ、ちょっとね」
鎖帷子と鎧がだらんと垂れ下がっている。大きさが合っていない。それじゃあ武器があっても戦えないだろう。
「大元が問題か。しかし今はこれしか無い……ならば、延長しよう」
近未来的な世界で戦ってそうなロボットの玩具の手足をガラクタの山から引っ張り出し、短い手足に磁石のようにくっ付けた。
竹馬の要領で手足の伸びた身体に、再び鎧を着込む。
「これでどうだね」
青狸のドヤ顔が眩しい。
「いいんじゃない?」
儀右衛門は大弓や小銃、大筒といった武器を箪笥から取り出し、使用できるかどうか確かめ始めた。
どれも付喪神化しているからだろう、継ぎ接ぎの身体でも上手く運用出来ている。
「うむ。応急処置だが、これでひとまずは動けるようになったな。逢魔くん達がワシの身体やこれくしょんを集めてきてくれたおかげだ」
古道具の集合体……塵塚怪王という名前らしくなった。少し前の姿は、ただの化けて出た青い狸である。
「次は初瀬号のかすたまいずに取り掛かるとしようか。先頭車両だけでは、列車としては不十分だからな。客車も立派にしてやらねばならん」
体格の良くなった儀右衛門は、客車の改修を始めた。
幽霊機関車初瀬号の、動力源である先頭車両が牽引する後続車両は、車軸や車輪といった機械的な部品以外……上に乗っかっている箱とも言える客室や貨物室はボロボロな姿である。
列車全体でも、機械では無いとされている部分は妖怪では無いのかもしれない。
だがそれも、儀右衛門が手を加えれば命を吹き返すだろう。
「おお、弁慶くん。ここからは少し力仕事になる。きみはこちらを手伝ってくれ」
付喪神を連れて帰ってきた弁慶を、儀右衛門が呼び止める。弁慶は客車の改修を手伝う事になった。
弁慶は巨大な槌と鋸を召喚し、儀右衛門の言われた通りに木材を加工していく。
「……おや? それは付喪神だな?」
儀右衛門は弁慶の槌と鋸に目を留め、付喪神化した物の応用に関してアドバイスを始めた。線路作りに集中していた俺は、よく聞いていなかったが。