ネット証券システム開発の現場 ~とある女性ITエンジニアの奮闘~
こんにちは、アイネの高石です。昨今の経済環境において、個人での資産形成の重要性が強く叫ばれています。そんな中で、手数料が安価で、スマートフォンやパソコンから24時間取引できる利便性から、ネット証券はますます注目を集めています。
今回は、私が携わっているネット証券システムの開発現場について、その特徴や課題、そして個人的な経験を交えてお話致します。
システムの特徴と技術的背景
私のチームが開発を担当している受注系業務処理システムは、証券取引の要となる重要なシステムです。具体的には、ユーザーからの株式売買注文の受付から、取引に必要な資金や証拠金の管理まで、証券取引の根幹を支える処理を担っています。
このシステムは20年以上の運用実績を持つレガシーシステムですが、その構成には興味深い特徴があります。一般的な証券システムでは、ユーザーインターフェース(アプリやWeb画面)とバックエンドの業務処理が一体となって開発されることが多く、開発言語もJavaが主流です。しかし、このシステムではWeb画面、業務処理をそれぞれ独立したシステムとして開発し、相互にデータを連携させる設計を採用しています。
業務ロジックの開発言語としてはC言語(一部の機能ではC++)を採用しています。その理由は、単にレガシーシステムだからというだけではありません。株式市場では、刻一刻と変化する市場価格をリアルタイムで処理する必要があり、ミリ秒単位の処理速度が求められます。C言語は低レベルな制御が可能で、高速な処理を実現できることから、現在でも重要な開発言語として位置づけられています。
開発業務の実態と課題
私の担当業務は多岐にわたり、基本設計から詳細設計、製造・単体テスト、そして結合・総合テストまで、システム開発のライフサイクル全般を経験しています。このシステムに携わって10年近くになりますが、近年は主に設計フェーズを担当しており、時折製造工程に携わることで、良い気分転換となっています。
開発において特に重視しているのが性能テストです。システムの処理速度は非常に重要な要素で、たった1回のSQL発行でも性能に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、設計段階から性能を意識した作り込みをしています。
また、金額計算の正確性には特に厳格な基準が設けられています。たとえ1円の誤差であっても、それは重大な問題となりかねません。そのため、テストフェーズでは金額計算の検証に特に多くの時間を費やしています。
証券業界の競争が激化する中、システム開発に求められる納期は年々短くなっています。多くのプロジェクトで開発期間は半年以内とされ、その中で高い品質を確保しなければなりません。これを実現するため、私たちのチームでは、メンバー間で緻密なコミュニケーションを取り、効率的な作業マネジメントを心がけています。
証券業務の複雑性への対応
証券取引には、株式、債券、先物取引など、様々な商品が存在します。これらの商品はそれぞれ異なる取引ルールを持っており、取引可能な時間帯や値動きの制限など、考慮すべき要素が多岐にわたります。特に米国株などの海外市場商品では、時差の問題も加わり、業務ロジックはさらに複雑になります。
システムの改修も頻繁に行われるため、過去に開発経験のある機能であっても、その知識をそのまま活用できるとは限りません。また、レガシーシステムにありがちな課題として、設計書が十分に整備されていない機能も存在します。そのため、改修の際には機能調査だけでも相当な工数が必要となることがあります。
ネット証券システムにかかわってきて
私はそれまで、JavaでのWebアプリケーション開発が中心で、比較的小規模なシステムの開発を担当していました。そのため、現在の開発環境に慣れるまでには相当な時間が必要でした。
特に苦労した点は、画面のないバックエンドシステムでの開発です。システム内部でどのような処理が行われているのかを把握するのに、当初は大変苦労しました。また、C言語での本格的な開発は今回が初めての経験でした。学生時代に基礎を学んだ程度の知識しかなく、特にメモリの動的確保・解放やポインタ操作など、C言語特有の概念に慣れるまでには時間がかかりました。
さらに、私は証券取引自体にもともと興味がなく、難しいと感じていました。最近でこそ時代の流れに乗って投資信託を始めてみましたが、まだ完全に苦手意識を克服できていません。しかし、システム開発において業務知識は不可欠です。日々の経済ニュースに触れながら、継続的に証券取引の知識を深めるよう心がけています。
おわりに
レガシーシステムの保守運用や、C言語での開発、複雑な証券業務ロジックの実装など、この現場では日々新しい課題に直面します。しかし、それらの課題に一つ一つ向き合い、解決していく過程で、技術者としても大きく成長できていると感じています。
画面のないバックエンドシステムでの開発や、C言語によるメモリ管理など、これまでのJava開発とは異なるスキルが要求されましたが、その分だけ貴重な経験を積むことができました。証券分野の知識も、少しずつではありますが着実に身についてきています。
今後も技術力と業務知識の両面で研鑽を続け、このミッションクリティカルなシステムの改修・運用に貢献していきたいと考えています。同じように新しい分野や技術に挑戦している他のエンジニアの皆さんにとって、この記事が何らかの参考になれば幸いです。
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