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成瀬は天下を取れるのか

「成瀬は信じた道をいく」読みました。
前作ではまだ手探りだった様子でしたが、今作はだいぶ成瀬が確立してきました。

なにより作者さんが成瀬を信じることができた気がします。

このシリーズの成瀬がなぜこんなに魅力的なのか、僕なりに考察してみます。

今まで破天荒な行動で周りを驚かせるキャラクターは多くありましたが、成瀬はそれが身近なものばかりなのです。
漫才コンビを結成してM -1に出場するとか、テレビの中継に毎日映り込むとか、200歳まで生きるというのもそうです。
友達と話していてあれやりたい、これやりたいという話の盛り上がりだけで過ぎていってしまうことに真面目に取り組んでいくので、周りは自然と行方を見守ってしまいます。それを成瀬の視点ではなく周りの人々の視点で描いているのが上手いと思います。

成瀬はメチャクチャなことは言わず基本的に正論を言います。しかし、相手の言っていることがもっともだと思えばあっさりと自分の意見を変える柔軟さも持っているのです。なので相手が置いてけぼりにならず、自然に成瀬に引っ張られている形になってしまいます。

こういうキャラクターって意外といなかった気がします。今の時代の緩さに合っているというか。

あと、けっこう重要なファクターだと思っているのが、物語の舞台です。
滋賀県の膳所駅周辺を舞台としておりますが、この舞台設定が絶妙だと思います。
作者さんが滋賀県出身なので自然な流れなんだと思いますが、もし舞台が東京だったらこんな感じにはならない気がします。
僕の妹が結婚して滋賀県に移り住んだので最近よく行くのですが、滋賀県といのはかなり絶妙なポジションだなと思っております。
雪が多く、琵琶湖の影響が大きいのだと思いますが、我慢強く堅実な人が多いと聞きました。道路が少なくてどこも渋滞していますが、みなさん仕方なく並んで待っています。裏道だらけの名古屋岐阜育ちの僕はイライラしっぱなしです。

かなり個人的な感想ですが、つまり成瀬が滋賀県代表のような性格をしているのです。成瀬自身が滋賀県膳所出身を誇りに思っているので、あながち間違ってもいないのではと考えております。

この先シリーズが続いていけば、映像化もあるでしょう。今どきはアニメの方が影響が強いかもしれませんが、設定的に実写化が現実的でしょう。ドラマがヒットすれば地元の協力もあるでしょうから成瀬ブームが来てもおかしくありません。そうなると成瀬役を演じる役者が重要だと思いますが、キャラクター的に有名俳優を置くよりオーディションで滋賀県出身の俳優を充てて共に成長してもらっても良い気がします。

と言いながら、個人的には映画派なので、本屋大賞を受賞して映画化の流れが好ましいです。
今年の本屋大賞にもノミネートされていましたが、今年は難しいんじゃないかなと思います(デビュー作で受賞という流れもあり得ますが)。
来年「信じた道をいく」か、シリーズ3作目(できれば長篇)で受賞するのでは、と予想します。

いろいろと書いてきましたが、久々に楽しみな作家さんとシリーズが始まって嬉しい、という一言に尽きます。京大に進学した成瀬が何をしでかすのか、楽しみにしています。

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