見出し画像

ブラックペアンシーズン2の劇伴の話

桜瀬です。
気付けばまるまる1週間天城先生のことを考えていました。つらい。

このどうしようもなく苦しい気持ちを文章を書くことにぶつけたいと思い、シーズン2の劇伴音楽(サウンドトラック)について語ることにしました。
お時間に余裕がある方、またはわたしと同じように8話から戻ってくることができない方、もしよろしければお付き合いください。

全6曲、順に語っていきたいと思います。
劇伴音楽について書くのは初めてなので、伝わりづらい箇所などありましたらすみません。

シーズン2の劇伴のトラック名、どの曲にもフランス語訳が付いているのがすごくおしゃれですよね……好きです。

1.神に愛された悪魔 -Diable aimé de Dieu-

俗に言う「シーズン2のメインテーマ」です。
この曲の主題(サビみたいな感じ)が毎回のオープニングに、
冒頭のバイオリンの高音のフレーズが"天城先生を印象付ける音楽”としてよく使われています。
「てーれってってーてれれーてってー」ってやつです(伝われ)

まず初めに、この曲を聴く上で”意識してみてほしいポイント”が1つあるのでお伝えしておきます。これを意識してみると、聴こえ方がぐっと変わってくると思います。

それは「バイオリンソロに注目して聴いてほしい」ということです。
もっと言うと、「バイオリンソロ=天城先生」だと思って聴いてみてください。

1回目の主題とそのちょっと後まで追ってみましょう。
弦楽器のピッチカートの音色が曲の始まりを告げ、冒頭の印象的な高音のバイオリンソロのフレーズで幕を開けます。その後低弦(チェロ・コントラバス)パートによる刻みに導かれてバイオリンソロが1回目の主旋律を奏で、2回目で全弦楽器パートがそれを引き継いだ後、バイオリンソロが堂々と主題を奏でます。
その後、またバイオリンソロが主旋律を奏でます。

・・・バイオリンソロがやけに多いと思いませんか?

この「バイオリンソロが単独でメロディーを奏でる」という曲の構成は、クラシック音楽で言うと「バイオリン協奏曲」という分類になります。
協奏曲というのは、”1人”のソリスト+”何十人もの奏者”という関係性のもとで演奏される曲です。

この曲はその「バイオリン協奏曲」っぽいのです。
つまり、世界で唯一の手技を持ち、孤高の存在である「ひとりぼっちの天城先生」を表現しているように感じるんです……つらい………

ちなみに、「シーズン1のメインテーマ」では1つの楽器がここまで多くソロを担当することはありません。聴き比べてみると孤独が浮き彫りになってくるのでぜひ。

これだけは意識してみてほしい、というポイントを書いたので、あとは好きなところを書き連ねたいと思います。
まず冒頭のピッチカート~~~~~~~~~~~!!!!!!
わたしはピッチカート奏法が大好きなので、初めて予告で使われているのを聴いたときめちゃくちゃテンション上がりました。ものすごくかわいい音だと思いませんか。
ピッチカートは弾くのも楽しいんです。音も良いし弾くのも楽しいだなんてあまりにも素晴らしい奏法。推しです。
(補足しておくと、ピッチカートというのは”弦を指ではじく”奏法です。
ちなみに「バイオリンの音」と聴いてほとんどの方が想像するあの音は弦を弓(あの長い棒みたいなやつ)で"擦る"奏法です。)

バイオリンソロが歌うように、舞うように奏でる華やかな旋律、まさに「歌うように言葉を紡ぎ、踊るように華麗にオペをこなす天城先生」って感じでものすごく良いですよね………
シーズン1ではあまり使われなかったスタッカートや付点のリズムも大胆に取り入れられていることによって、軽快なイメージの音楽になり、「大海原のように雄大な旋律」が特徴的だったシーズン1のメインテーマとの違いが生まれていて面白い。

1:43あたりから始まるバイオリンソロのオクターブ上がったフレーズ、さらっとハイポジションを使って奏でられていて素敵。
弦楽器の音域には下限はあるのですが、上限は「演奏者の腕次第」みたいなところがあって、ハイポジションという高い難易度の奏法を使えばものすごく高い音が出せるのです。そんな”高難易度”のハイポジションによって奏でられるフレーズに、”天城先生のダイレクトアナストモーシス”を感じずにはいられません。

1:53から「ザーッという砂嵐のような音」が入っています。
初めて聴いたときはなんだろう……?と思っていましたが、おそらく「天城先生の心臓が悲鳴を上げる音」だったんですね………………
ちなみにシーズン1のメインテーマには「心臓の鼓動の音」が入っています。あのオペによって健康な心臓を取り戻した渡海先生の”規則正しい鼓動”と、治らない病を抱えて”限界を迎える寸前”の天城先生の心臓。対比が細かくて苦しい。

2:10~
クライマックスに向けてピアノ→フルートと主題が引き継がれる中で、鉄琴かチェレスタがキラキラした音色を奏でているのがとっても好き。綺麗。
天城先生=バイオリンというイメージが固定されてきていますが、わたしはチェレスタの音色も似合うと思っています。キラキラと雪が舞うような音色が、雪の精のように儚く美しい天城先生にぴったりだと思うのです。

話が逸れました。

2:37~
各パートが下降音形(音が下がっていく感じ)のフレーズを順に奏で、弦楽器がボルテージを最高潮に高めたところで、堂々と思いっきり主題に移る流れが良すぎる。
「ドー↓ドー↑ レー↓レー↑」ってオクターブ跳躍するバイオリン、ほんっとうにかっこいい。シーズン2の劇伴は、この部分に限らず音が跳躍するフレーズが多いように感じます。

3:34~
2回目のメロディーでエレキギターが出てくるのですが、シーズン1でも印象的に使われていたことを思うと繋がりを感じて素敵だなと思います。後から気付いたのですが、「渡海先生が出てくる示唆」だったのかもしれないですね。
ここ、裏でバイオリンがものすごく良いメロディーを弾いているので、余裕があったら耳を澄ましてみてください。クラシック音楽や劇伴音楽の魅力の1つは、いくつもの楽器が集まっているからこそ生まれる「音の重なり」や「奏でているメロディーの違い」です。わたしはそれが楽しくて大好きでオーケストラやってます。

3:46~
全パートが一体となってメロディーを奏で、バイオリンも1人じゃなくなったか……?と思ったらなんとバイオリンソロで曲が締めくくられるんですね………結局最後は天城先生ひとりぼっちじゃん!!!なんで!!!!!!!!!!って悲しくなります。どうか天城先生がひとりぼっちにならずに済み、たくさんのあたたかな愛を受けることができるような結末でありますように。

2.二者択一 -Chance simple-

個人的にシーズン2の劇伴の中でこの曲が1番好きです。良すぎる。
スキップをしたくなってしまうような軽やかで楽しい旋律がとっても素敵ですよね………

メインテーマの主題のアレンジを軸として作られている曲なのですが、あの旋律を付点のリズムにしてスタッカートも付けて、さらに2/4拍子にするとこんなに軽やかな曲調になるのか…!という驚きがあります。

ちなみにメインテーマは「6/8拍子」という3拍子の親戚みたいな拍子です。
6/8拍子は”川が流れるような滑らかな旋律”を生み出すのが得意な拍子です。シーズン1のメインテーマもこれです。
対して「2/4拍子」は"前に前に歩いて進むような旋律"を生み出すのが得意な拍子です。行進曲などによく使われています。天城クラシックタイムに出てきた曲で言うと、エルガーの『威風堂々』もこれです。

拍子が変わっているので、メロディーラインが同じでもここまで雰囲気が変わるのですね。

かわいいピッチカートの音色や跳ねるような付点のリズムによって、軽快にメロディーが進んでいく中で、ダダダダダダダンッダン!って3連符のフレーズで足並みが揃うところが曲のアクセントになっていて聴いてて楽しい。

それと1:05から始まるメロディー、めちゃくちゃ良くないですか……?
劇中ではあまり出てきていなかったので、フルで聴いてびっくりしました。好みすぎる。これを聴いてわたしは一気に推しになりました。
1回目はフルートが主旋律を奏でて、2回目でバイオリンが合流してそのまま主題に突入する流れが素晴らしすぎて思わずスタンディングオベーションしたくなってしまいます。

スキップをするような軽やかなメロディーが最初から最後まで続いている裏で、必ずどこかのパートが淡々と刻んだり鋭い3連符のフレーズを弾いていたりする「二面性」が、"踊るように歌うように"生きているように見えるけれど、"その裏に底知れぬ絶望と諦念を隠している"天城先生とどこか重なる感じがします。

3.赤か黒か -Rouge ou noir-

比較的平和なコメディーパートでよく使われる曲ですね。
パーカッションによる軽快なリズムの上で弦楽器やフルート・木琴が各々自由に舞っているような曲調で、他の曲には無いほっとひと息感があります。

そんなに書くこと無かった。すいません。
というか他の曲が軒並み重量級なんだよな………

4.心臓は美しい -Le coeur est beau-

天城先生の「L'opération est fini. Le coeur est beau. 心臓は美しい」という台詞から取られたトラック名ですね。好き。

何の楽器かよく分からない音(誰か教えてください)から曲が始まり、ピアノが妖しげなメロディーを奏でる傍らで打ち込みの音色が曲のおどろおどろしい雰囲気を掻き立てています。

1:44~
ギターか何かの刻みがかっこいい。こういうのってカッティングって言うんでしたっけ。
エレクトロな雰囲気の曲なのかな~~~と思って聴いていくと、2:11あたりからクラリネット→弦楽器が上昇音形(上がっていく感じ)を奏で始め、突然曲の流れが変わります。
何かが始まるような雰囲気を感じたところで突如始まるバイオリンソロ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!!!!
もうここめっちゃくちゃかっこよくないですか。
決然とした音色でセンセーショナルなメロディーが奏でられ、2回目ではオクターブ上がって低音から高音まで幅広く操りながら、1度聴いたら忘れられない魅力的なソロに仕上がっています。

余談ですが、オクターブ上がる前の1回目のメロディーの1番最後の「ソ」の音は、"バイオリンが出せる音域の下限"です。本当の意味で"音域をフルに使っている"フレーズなんですよね……
この「ソ」の音は"開放弦"といって、左手で弦を押さえずに出すことができる音です。開放弦の特徴はなんといっても、弦が指で押さえられていないことによって、最大限の振れ幅で弦が振動することができるため「どの音よりも力強くインパクトのある音色」を出すことができるところです。
フレーズの1番最後の音に使われていることで、1回目のメロディーが終わってひと段落する感じをが出しつつ、しっかりとした爪痕も残していくことに繋がっています。

その後も弦楽合奏曲のようなかっこいいメロディーが続き、ジャンルとしては劇伴音楽なのですがクラシック音楽のようなムードを感じます。チャイコフスキーかドヴォルザークの弦楽セレナーデの4楽章でも始まったのかと思ってしまいました。

たぶん前半の不穏な曲調は、後半のバイオリンソロ、弦楽合奏を引き立てるための"前座的な役割"を果たしているのだろうと思います。悪いことは言わないので一度最初から最後まで全部聴いてみてください。
前半で聴くのをやめたらもったいない曲です。

5.神に愛された悪魔 -Diable aimé de Dieu- <Piano>

メインテーマのピアノアレンジバージョンです。

バイオリンソロが華やかに舞うようにメロディーを奏でるメインテーマとはうって変わって、BPMがかなり落とされている上に音数もいくらか減らされていることによって、寂しげで哀愁に満ちた曲調になっています。

ピアノによるゆったりとした悲しげなメロディーが続き、どこか不安な気持ちを掻き立てられたまま曲が終わります。
音楽理論的に説明すると、この曲は長調の曲なのに「不安定音」である「ファ」と「ラ」が続いてそのまま曲が終わるので、落ち着かない気持ちにさせられるわけですね。

素敵なアレンジなんだけど、渡海家のシーンを思い出してしまうのであんまり聴けない。つらい。

6.神に愛された悪魔 -Diable aimé de Dieu- <Lent>

こちらもメインテーマのアレンジバージョンです。
ただ、先ほどの5曲目とは違ってピアノだけでなく弦楽器、フルートも出てきます。

曲名の<Lent>というのは、クラシック音楽などで用いられる速度記号であり、「遅く、ゆるやかに」という意味があります。
つまり、”メインテーマのローテンポバージョン”ということです。

0:00~
冒頭のあたたかみの中に切なさを感じるチェロのソロが素敵ですよね………あのメロディーはやはりバイオリンが弾いているイメージが強いので、8話リアタイ時に聴いた時はものすごくびっくりしました。

1:50あたりからピアノが主題を奏でる裏で「時計の針の音」が鳴っているのですが、使われている場面と相まって「天城先生の命のタイムリミット」を感じてしまいどうしても苦しくなってしまいます。

2:29からチェロが再びソロを奏で、バイオリンがメロディーを引き継ぎ、1拍置いて弦楽器の全パート・フルートが一体となって主題を奏でることでアンサンブルに重厚感が増し、感情を昂らせられたところであの天城先生の表情が脳裏に浮かび、涙が止まらなくなります。つらい。

「ミのフラット」という黒鍵の音で曲が締めくくられるので、どこか心にざわざわしたものを感じたまま終わってしまいます。
2曲続けて不安な気持ちにさせられたまま終わるなんてこころがつらすぎるので勘弁してほしい。本当に。

以上全6曲でした。
ここまで読んでくださってありがとうございました。

長々と書き連ねてしまって申し訳ありません。
文中にところどころ天城先生への感情が挟まっているような気がしますが許してください。
不可抗力です。

残り2話、どうか天城先生が心からしあわせな気持ちで満たされる時が来ますように。天城先生の屈託のないやわらかな、花が咲くような笑顔を見ることができますように。




いいなと思ったら応援しよう!