「やっぱり、や~めた!」の功罪
コンサルティングの中で発生したお悩みをベースに、組織のお悩みと対処法をご紹介している本コラムですが、今回は「やっぱり、や~めた!」に振り回されないための対策について、ご紹介したいと思います。
〔お悩みの概要〕
お悩みの主は、食品メーカーにお勤めのMさんです。
Mさんの上司は、頻繁に「やっぱり、やーめた!」といろんな予定をひっくり返しまくり、周りの人が振り回されているそう。もう少し、確実な仕事の進め方をしてもらえるよう、本人にもお願いしているそうですが、改善の兆しが見られず、相変わらず作った資料が無駄になったり、しなくてもよい作業が増えるなど、業務に支障が大きいと言います。
一方で、上司のYさんは、決まってから話をするよりも、相談ベースから話をしておいたり、関わってもらった方が、部下は動けるだろうと思ったらしいのですよ。よかれと思って、の行動です。ただ、進める中で状況が変わった場合は、変更や企画が白紙になることは致し方がないと考えているようです。
さて、みなさんは上記のお悩みを読んで、どう感じたでしょうか?
私の正直な感想は、「迷惑な上司~!」です(笑)
まあ、そうですよね・・・。正直な感想ですからね・・・。
Mさんの業務は、企画立案にかかわる業務なので、企画が実現しなかったり、状況により中止になることは、ままあることです。しかし、今回のお悩みはそういうことではなく、日常的に繰り返される「やっぱ、やーめた!」という行動にあるというのが、やっかいなところですよね。
ここからは、あくまでも私がアドバイスした内容ですが、現状に起きていること(ここでは個人情報などに配慮して、職種や状況を多少変更してご紹介しています)により、対応方法は変わるので、その点を踏まえて以下を読んでいただけたらと思います。
まず、上司のYさんですが、そもそもの行動パターンが、
① オプション型:選択肢があった方がモチベーションが上がる/可能性/新しい/選べる などの言葉をよく使う
② 主体・行動型:思いついたら、すぐに行動したい/いますぐに/まずは/やってみる などの言葉をよく使う
の2つが強く出ていると推測できます。
これは、Mさんに上司のYさんが、「やっぱやーめた」というときにどんなふうに話しているのかをできるだけそのまま話してもらい、LABプロファイル®を使って、行動パターンを分析しています。
この①と②のふたつの行動パターンが重なる人は、大体の場合、
思いついたら即行動!情報は行動の後からついてくる!すぐに動き出さないとやる気がでない!
という人です。
どうでしょう、身近に同じような人はいませんか?
こういう行動パターンを持っている人は、行動の中から自分なりの答えや学びを見つけていくことが普通なので、計画の変更や失敗は、恐れません。かつ、たくさんの選択肢がある方が、モチベーションが上がるので、あれもこれもやろうとします。(そして、完結できない場合が多い。)
その結果、思いつくままに指示を出している可能性も高いと思います。
では、そのために振り回されている部下のMさんはどうすればよいのか?
まずは、いつもお願いしていることをYさんが無理なく理解できる言い方、つまりYさんの心に響く言葉(LABプロファイル®では、影響言語と言っています)で、伝えてみることをご提案しました。
例えば、こんなふうにお願いしてみるのが、よいかもしれません。
「Yさん、もしかするとご指示の他にいいやり方があるかもしれません。実現できる新しい方法がないか、いますぐに考えてみてもいいですか?それも、選択肢に入れていただいた上で、やり方を選びませんか?」
ポイントは、選びたい人なので、選ぶための選択肢を与え、そして選んでほしいということを伝えることです。ここでは、主体・行動型も考慮して、「すぐに考えます!」と言っていますが、実際にすぐに考えなくてもよいわけです(笑)
とにもかくにも、こちらがYさんの指示をやるかやらないかを調査する時間を稼げばよい、ということです。往々にして、この2つの行動パターンを持つ人は、やる必要がないと調べればわかることや、他に事例を見つけることができればやらなくても済むことについても、「まずやってみることが大事。すべては行動から!」と思ってるので、行動していることをアピールしてあげると安心してくれます。
同じ言い方でも、情報収集してから、と言ってしまうと「情報収集よりも行動せよ」という指令が下ってしまう可能性もあるので、あくまで方法を考えるとか、誰かに聞いてみるとか、行動することがわかるような言い方を選んでくださいね。(やることは同じなんですけども!)
これですべてのことが解決するとは限りませんが、少なくともすべての主導権をYさんが握っている状況は、変えられると思います。もし、身近にこんな上司がいたら、ぜひ試してみてください。
*LABプロファイル®とは
その人が普段使っている言葉から、行動パターンを分析し、そのパターンを持った人の心に響く言葉を使うことで、人を思い通りに動かすスキルのことです。
筆者は、カナダSuccess Strategies社認定 LABプロファイル®マスターコンサルタントの資格を保有しています。