『壽 初春大歌舞伎』を観た記
寿曽我対面
様式美モノと判断。
意外と高校古典の知識で、台詞と最低限の背景が理解できるので、「教育、ありがとう・・・」という気持ちになります。
背景含め、ゼロからイチまで理解するためには音声ガイドなど利用した方がよいのかもしれませんが、初見の”感”と、その後の”理解”・”納得”・”昇華（消化）”を分けるのも、自分なりの楽しみ方で万人向けではないかもしれないけれど、面白いものです。
ある程度大きな役付きで、セリフの届かない役者さんがいると、「体調悪いのかな・・」と心配になるこの頃。
昔なら「なんでこの人がこの役なの？！もっと他にいるでしょ！？」と、ムキー！となっていました。
一定数の鑑賞体験を経て舞台上のハプニングや観たくないものを少なからず観てきたこと（これはできれば体験したくなかったこと）、自分も毎日ベストコンディションではないこと（経年変化）など理由はありますが。
やっぱり１回の鑑賞にそこそこのお金とお時間をかけているので、理由は様々ありけれどベストなものが観たいですね。。。
陰陽師
前半は『欽ちゃんの仮装大賞』と『仮面ライダー』を混ぜた感じ。
歌舞伎でこんな演出するんだー（まあ、歴史的には多くのエンタメに影響しているし）、という面白さがありました。
後半は『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』と『狐花』の系統。
式神がダンスバトルするのは、どの舞台にも共通することで楽しかったです。
封印切
初見。何度も上演されるということは何かしら（脚本？）がよいのだろうと、楽しみにしていた演目！
現代人の関東人には、理解できない見栄の世界でした・・・
所得以上の遊びはするな！ミエのために身を亡ぼすな！という教訓だと思っていればよいのか。。。
熊谷陣屋
様式美＆武家の理論バリバリ。
二人椀久
尾上右近さんにはどうしても陽の気を感じてしまい、悲しみに”狂ってしまった”、というにはどうしても陽で。
壱太郎さんがきれいで、ずっと目で追っていました。右近さんがすごくないわけではないのに！
壱太郎さんは、日本舞踊でよくある「スンっ」としたお顔で動作するのが、特別一等美しいのだと思いました。
『スン×動作』の掛け算で、美しさが跳ね上がるタイプの方。
大富豪同心のお役など、ちょっと笑ったりすねたりという表情になると、お顔がくしゃっとなって（それはそれで可愛いのだけれど！）、お化粧で目指したい方向と少し変わってしまうのかな？というのが、南座と歌舞伎でひたすら壱太郎さんを凝視しての感想です。
（南座の『蝶々夫人』は、スンとしたお顔が多かったので、声含めてひたすら、ずっと美しかった印象。『ぢいさんばあさん』も、あまり表情を崩さない新婚奥様のお役でした）
笑也さんはスンから大きく表情を脱線させない、笑三郎さんは表情が大きく変わってもギャップがない・・・などなど、もともとのお顔と演じる方向性・演じたい役どころ、他の女方さんのお化粧を考えても、奥深いところです。
（自分の普段のお化粧は、見ないふりをしたい・・・）
大富豪同心
最後に楽しく笑えて、満足して歌舞伎を出られた演目。
隼人さんへ「がんばってー！」という声援を送りながら、今回のMVPは絶対笑三郎さん！！！
コメディエンヌ（女方さんの場合も、この言い方で合ってます？）っぷりが半端なくて、後半全部この方に持って行かれました。
総踊りも楽しかったー！
ミュージカルっぽいけれど、関係者一同あっても舞台なのだから、観ている側としては全員に拍手を送りたい気持ちもあるので、（できれば裏方、音楽の方も含めて）全員出てくださると嬉しい。
米吉さんの振りにハロプロ（韓流ではない。ちょっと前のJ-POP）味を感じたり、巳之助さんのキレキレの動きに見とれたり、笑三郎さんの役どころ味もありつつ動きは大きいののに、なぜか袖が美しいままの振りに「日本舞踊ってすごい」と驚いたり、幸四郎さんがひたすら楽しそうでこちらまで楽しくなったり（『朧～』の終幕も楽しそうで、こちらも笑顔になりました）。
俳優祭ネタで、猿弥さんの主役も楽しみに。笑
お正月で様式美バリバリの古典演目ばかりかと思えばそうではなく、
面白おかしい”松竹”っぽい初笑いの世界かと思えばそうでもなく。
構成の意図がつかめずいましたが、大富豪同心（特に笑三郎さん）がすべて吹き飛ばしてくれました。笑
今回の客席（はずれ
こんなにいろいろ起こる？という、見事な外れ具合でした。
私語の止まらない方々（複数、四方八方）
ビニール袋ガサゴソ。３階席だったので、頭の近く（耳元）でガサゴソが響く
前の席の方がメガネを頭にあげていて、ライトが反射・邪魔で舞台が見えない
上演中、いびきをかいて爆睡する方
前のめりで鑑賞される方
遅れて入場する方。そのために立ち上がる必要があり（＝立ち上がらないと通せなかった・・・）、周囲の観劇の邪魔に。
大向こうさんの席ではないのに、掛け声をかける方
オペラグラスを上げ下げするたびに、横に張り出した肘が左右に座っている人にあたる方(本人は舞台に夢中でしばらく気づかない静かないい場面で鳴り響く、携帯着信音
後ろの方が席へ移動する際、荷物で頭を殴打される。こちらも相手は気づきもせず、周りの方が見ていて、「まさか当てた人、気づいていないの？？」という顔
宝塚はこんなことないのにと、しばしば思います。
15年ぶりに歌舞伎鑑賞を再開して1年。観る気は減少。
周りに「一緒に行こう」と勧められません。