『錦秋十月大歌舞伎』を観た記
期待を超えてきた演目が多くて、前評判・自分の思い込みなんて当てにならないなあと感じた月でした。
平家女護島 俊寛
月の一本目から「歌舞伎ってすごい!」と感動させてくれた演目。
そして、歌舞伎を観始めたこの1年で、菊之助さん主演演目の信頼感が半端ないです。「これってどういうもの?」と思っていても、必ず満足させてくださる。
それからこの演目は舞台機構。
海と孤島、崖を、一連でこうみせてくるかと、と思わせられて、歌舞伎の奥深さを実感しました。
このお話も、みんな完全な悪人じゃないんだよなあ。。。と解せない想いを抱えながら、
千鳥ちゃんがこんなに苦しんでるんだから、少将もどうにか動きなさいよ!と突っ込んだりはしました。笑
人が去って孤独になってしまうのは、本当につらい。
このあとどうなってしまうのかと、考えるともっとつらい。
そこまで思わせて幕をひくなんて~~。涙
音菊曽我彩
やっぱりまだ、舞踊・所作が続く演目のよさがそこまでわからず。。
曽我物語を大学受験レベルでしか履修していない、教養の低さが問題なのか・・・
ただ、菊五郎さんがでてきて台詞を発した瞬間に、舞台全体の雰囲気がシュンと音をたてて引き締まったように感じて、座長の凄まじさを体感しました。
宝塚でいうところの、トップオブトップなのかしら。。。
菊五郎さんの若いころからこうではないだろうけれど、これを物心ついたときから見続けている周りの方の心酔やプレッシャーはものすごいだろうなとも思いました。
応援するものとしては、演者さんの挑戦には、必ずポジティブでありたい。
権三と助十
すっごい面白かった!!!
こういう演目の座長・獅童さんは、周りのことも大事にしてくれて気風の良い、いいお兄ちゃん・旦那で、周りとのやんややんやとした息の合ったやりとりが、たまに現代っぽい突っ込みもあったりするのに、江戸・下町・長屋っていいなと、すごく観ていて楽しい!
すごい悪いやつもいて!
他の演目との違いも際立って、この演目だけ一幕見で観ても楽しいし満足だろうな~とニコニコしてしまう時間でした。
先月は薄幸の美少女で、前の演目では花魁美女だった尾上左近さんが、しっかり上方の若者になっているのも、やっぱり役者さんってすごい!と再度実感でした。
婦系図
「この演目は、女性もでるのね」とまずびっくり。
そして、仁左衛門さんが若者にしか見えなくて、さらにびっくり。
あとから何度も反芻して、この演目のよいところは、ほんとうの悪人がいないところだと。
スリをしても改心するし、先生も道理を説いて自分も無傷ではいないし。
本筋ではないところだけれど、
女は、人生を男に頼らない!自活できる収入を確保すること!!
と、それが自然にできる現代の有難さ、先輩たちが頑張ってくださった結果を思って、引き締まりました・・・
高校生の頃に、わたしの信念として、
『独身でも、結婚しても、離婚しても、自由に生きていける収入を確保すること』
を定めたのは、間違っていなかったと改めて実感しました。
源氏物語
楽しみにしていた演目。
でもなんか、筋と台詞の不自然さがあるような・・・
ビジュアルは素晴らしいし、舞台機構も丸盆を中心として照明と御簾で仕切る工夫が、美しいし「あ、なるほど、すごい」と思わせられるし。
最後に「歌舞伎、もっとできるでしょ?!」と、
自分の歌舞伎に対する期待値の高さを実感して帰ってきました。
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