見出し画像

「言いにくいけど、実は僕ゲイなんだ」イギリスの高校にて

LGBTという言葉をテレビやネットで見かけることが珍しくない昨今、LGBTの人の存在がだんだん人々の間で認知されてきた印象があります。ただ、現実に身近な人からカミングアウトされたら、どんなリアクションをしますか?


我が家の2人の子供が通う学校は小学校から高校まであり、クラスのメンバーの顔ぶれもほぼ同じで学年が上がっていきます。イギリスの地方都市にある小規模な学校なので1学年に1クラスしかなく、1クラスの生徒数はだいたい20人前後です。

中学に上がる時、転校生ベンが娘のクラスにやってきました。ベンジャミンだからベン。長身で金髪の青い目の男の子で、ザ・イギリス人という風貌です。性格も穏やかでフレンドリー。He is nice.とみんな彼とすぐに打ち解けました。

しばらくしてベンが少しだけ女の子っぽいしぐさや話し方をすることに、娘をはじめクラスメイトは気づき始めました。男の子たちと一緒にサッカーをすることはなく、休み時間はいつも女の子たちとおしゃべりをしていました。けれども、誰もベンに何か言ったり、聞きたりすることはなく、みんな普通に接していました。ベンはわが家にも時々遊びに来て、その礼儀正しさと気遣いの良さに私は関心していました。

ベンは自分がゲイであることを必死に隠そうとしていました。わざと男の子の様な振る舞いをしてみせたり、男であるような言動をしていました。

そんなこんなで娘の中学生生活もGCSEという中学卒業資格の全国統一試験で締めくくり、クラスの生徒たちは娘も含めほとんどが上の付属高校へ進みました。


画像1


高校では、新たな転入生がやって来ました。彼の名前はトビアス。茶色い髪で茶色い大きな目の愛嬌ある青年です。転校早々「トビーです。ボクはゲイです。みんなよろしく!」と元気に自己紹介をしたそうです。皆、拍手をして彼を迎え入れました。

トビーは運動神経が良く、男子といっしょにいつもサッカーを楽しんでいました。話もユーモアたっぷりでジョークが上手で、誰にでも気軽に声をかける明るい人柄で、だんだんクラスの人気者になっていったそうです。女子からは「おしい!トビーがゲイでなければよかったのに!」という声も出るほどでした。


とある週末、クラスのみんなで街にあるチキン専門のレストランに行こうという話になったと娘が言うので、私は娘を最寄り駅まで車で送って行きました。

夕方帰ってきた娘に、「どうだった?楽しかった?」と聞くと、「楽しかった」と答えた後、「さっきベンがレストランでみんなにカミングアウトした」と言うのです。詳しく聞いてみると、

集まったのはクラスの半分ぐらいの10人ぐらいで、レストランでは大きな長テーブルに全員で座れたそうです。各自、自分のチキンを食べ終わって、デザートでも取ろうかという時、ベンが真面目な顔で「みんなに話がある」と言ったそうです。ベンは緊張してこわばった表情で、手と声が少し震えていたのを娘は気がついたそうです。尋常でない彼の様子に皆びっくりして、「どうしたの?」「なんかあったの?」と口々に聞きました。

ベン「すごく、言いにくいことなんだけど」
みんな「何?言ってみなよ。みんなで聞くから。」
ベン「実は、僕は、、、」「、、、僕はゲイなんだ

みんな「うん。知ってる。」「で、何?」「続けて!」
ベン「だから、実は、僕ゲイなんだ。」
みんな「だから、知ってるって。」「で、何か困ったことでもあるの?」

ベンは驚いて「え?知ってたの?」
みんな「知ってたよ」「話ってそれだけ?」
   「え~、なんか深刻な話かと思った~」
ベン「驚かないんだね」
みんな「いや、別に」「ゲイ珍しくないし」「ベンはベンだろ
ベン「、、、、」

と、ここでみんながベンを囲んでハグしたり励ましたりというイギリス典型的な感動シーンは無く、皆あっさりと次の話題に移ったそうです。

娘によると、ベンはほっとした表情でその新しい話題に参加していたそうです。


この16歳の子供たちの成熟した一連の受け答えは、果たして、わざと素っ気ない表情でベンを傷つけないように配慮したものなのか、それとも、ただ単にベンの告白は別にたいしたことではないと思っていたのか、娘にもわかりませんでした。。


今日も読んでくださり、どうもありがとうございました。

トモキリ


サポートどうもありがとうございます!励みになります!