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生命科学系の実験で使うトランスジェニックマウスってなに?

生命科学系の研究室にいると当たり前のようにトランスジェニックマウスの話が出てきます。

大学の授業などで耳で聞いたことあっても、実際にはよくわからないまま研究室の話についていけないなーって思っている学生さんもいるのではないでしょうか?

私の身近にいる学生さんも研究室に来てトランスジェニックマウスの作製をテーマにされて、よくわからなくて途方に暮れていました。

研究室って何故かみんな勉強ができて、「これなんですか?」と聞くと「そんなのも知らないの?勉強不足!」と怒られてしまって中々質問しづらい雰囲気だったりします。(うちの研究室だけ?)

今回は研究の理解の役に立てたら良いなーと思って、トランスジェニックマウスについて簡単にまとめてみました。

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トランスジェニックとは?

英語で書くと”transgenic”ですね。”trans”は「横切って」とか「向こうへ」、「別の状態にする」という意味があります。

”genic”は遺伝子のという意味なので合わせると、「遺伝子を変えた」と言ったニュアンスになって、「遺伝子組換え」という言葉でよく使われます。

「遺伝子組換え」したマウスのことを、トランスジェニックマウス、動物一般にすると遺伝子組換え動物、トランスジェニックアニマルと言われます。

どんな動物を「遺伝子組換え」したというかというと、「外から別の遺伝子を人為的に入れた」動物を指します。

※かつ、導入した変異が次世代に受け継がれるもの。(中には受け継がれないものもあります)遺伝子組み換え生物の拡散はカタルヘナ法によって規制されていて、研究室の外に出してはいけません。

何で別の遺伝子を入れるのか?使い方は様々ですが、大きく分けて3つの用途で使われることが多いです。

1. 特定の遺伝子を破壊・過剰発現して遺伝子の機能を調べる

2. 特定の細胞に蛍光タンパク質などを発現させて、その細胞の形や機能を調べる

3. ヒトと同じ突然変異を入れて疾患のモデルにする

あなたの研究室でも、心当たりがある使い方をしているのではないでしょうか?

今回はトランスジェニックの中でも、ランダムに変異を入れる方法を詳しく見てみます。(ゲノム上の特定の位置に挿入する話(現在の主流)はまた後日)


トランスジェニックマウスの作り方

大きく分けると、

1. レトロウィルスを使って外部遺伝子を導入する

2. 受精卵の前核にDNAを注入する

3. ES細胞の技術と合わせる

順番に少しずつ見ていくと...

1. レトロウィルスを使う

1970年代にRudolf Jaenischらが初めてトランスジェニックマウスを作ったときに使われた手法。

外来遺伝子の発現量は低くて、不均一なのが問題。

最近、レトロウィルスの中でもレンチウィルスを使うと発現量が高くなることから、再注目されている。


2. 受精卵の前核にDNAを注入する

1980年にJon Gardon, Frank Ruddleらが報告。


3. ES細胞の技術と組み合わせる

ES細胞とはEmbryonic Stem cell。

培養皿で遺伝子導入したES細胞の中から目的の変異が確認できるES細胞を選ぶ。

発生初期の胚盤胞期の胚にES細胞を注入する。

全身の一部の細胞がES細胞に由来するキメラマウスができる。(生殖細胞もキメラになっている)

変異が入っている卵子と精子が受精したら、次の世代で全身全ての細胞に外来遺伝子が入ったマウスを作れる。


今回ご紹介したのは、ランダムに変異を入れる方法。

次回はゲノム上の特定の位置に遺伝子を挿入する方法をご紹介したいと思います。


それでは、また!




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