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大切な人の最期に寄り添えない…海外在住者の覚悟と準備

海外に住むということは、日々新しい発見や挑戦がある一方で、覚悟しなければならないこともあります。その中でも最も重いのは、「家族の最後に寄り添えない可能性がある」ということではないでしょうか。

私も海外在住が決まったとき、日本にいる家族に何かあったらすぐに帰国できるのだろうか、と不安に感じたことを覚えています。

そして昨年末、祖母が亡くなり、この不安が現実のものになりました。この経験を通じて感じたことや、今後のために準備についてお話ししたいと思います。



訃報の知らせと動揺

昨年末、祖母が亡くなったという知らせをカナダで受けました。その知らせを受けた瞬間、私は動揺し、日本に帰国したいと思う一方で、「年末なので急に航空券を取れない」「年末で航空券代も高額だろう」と現実的な問題ばかりが頭をよぎりました。

日本にいる母にも「海外にいるのだから、無理に戻って来なくて大丈夫」と言われ一度は帰国を諦めました。今思うと、動揺していて正常な判断ができない状態だったと思います。

しかし、一人で祖母のことを考えたら涙が溢れ出てきてしまい……、「最後に祖母に会いたい、行かないときっと後悔する」という想いが募ってきました。


迷いと決断

東京行きの航空券を調べると、年末のため通常の3倍 近い値段だったり、乗り継ぎ 3回 36時間というようなフライトが出てきて、正直このチケットを購入していくべきなのか迷いました。

でも、「お金が理由で何かをあきらめるのはやめよう」と思い直し、帰国することを決断しました。

急な帰国なので家族全員で帰るのは難しく、夫とも相談し、夫に6歳の息子を託し一人で日本に帰ることにしました。

息子に、私が一人で帰国することを伝えると大泣きされてしまいました……。 「一緒に行きたい」「どうしてママだけ行くの?」と泣きじゃくる姿を見て、心が折れそうになりました。こんな小さな子供を置いて帰るべきなのか、カナダで過ごす年越しは今年が最後かもしれないのでこのまま家族で年越しを楽しむべきなのではないかと、悩みました。

でも息子との時間はこれから取り返すことができたとしても、祖母とのお別れは今しかないということが、私の背中を押してくれました。

こうやって人間はいつも何かを選び、決断しながら生きているのだなと改めて感じました。


一時帰国

帰国を決めた後は慌ただしく準備を進め、航空券を手配してから約12時間後の翌朝4時に自宅を出発。

出発の時、息子がまた大泣きしてしまいました。「本当にこれでよかったのだろうか」と私まで泣きそうになりました。

一人で車に乗り雪道を空港に向かいながら、見慣れたオタワの風景がとても愛おしく感じました。実は最近は寒さにうんざりしていたのに……。急に離れることになって、ここでの家族との日常が自分にとっては大切なものだったのだなと気づかれされました。

東京に到着した翌日はお通夜、その次の日は告別式。慌ただしい一時帰国でしたが、何かを理由に帰国を諦めず、祖母に最後のお別れができて本当に良かったと心から思いました。

祖母から教えられたこと

今回の帰国では、祖母からたくさんの気づきをもらいました。

祖母は好奇心旺盛な人で、この年代の人にしては難しく海外旅行や外食が好きで、90歳を超えるまで自宅で仕事をしていました。新しいお店を見つけると孫の私達を「食事に行きましょう」と誘ってくれるような人でした。その姿からは、年齢を重ねても新しいことや気になることに挑戦を忘れない大切さを学びました。

孫の私が見ても、好きなことをして後悔することのない人生だったのではないかと思ってしまうくらいです。私も孫にそう思われる最期になりたいものです。

私は最近、「失敗するかもしれない」と何かやることを躊躇することが多くなっていました。年のせいだと思っていましたが、祖母を思い出すと「私も同じ血を受け継いでいるのだから、やれないことはない」と自信が湧いてきます。

また、今回の帰国を通して、「人生は小さいことから大きいことまで、選択と決断の連続」だということも改めて感じました。そして、同じ日々が永遠に続くわけではないということも。

選択や決断をする時には、体力、知識、心の余裕、お金の余裕が必要だと気づきました。そして、これらを何もないときに蓄えておく必要があると痛感しました。


いざという時のためにしておくべき準備

海外に住んでいると、今後も家族の緊急事態が起こる可能性はあります。そんな時に慌てないために、事前にできる準備を考えてみました。

人は予想外の状況に直面するとパニックに陥り、正常な判断ができなくなりがちですよね。だからこそ、正常時に準備をしておくことを一経験者としておすすめします。

【航空券の手配方法】

緊急時に航空券をどのように手配するかを調べておく。「格安サイトで一番早く帰れるものを選ぶ」という選択になる可能性が高いですが、航空会社によっては家族の不幸に対応する特別プランがある場合もあります。実は私は今回あとからこのプランのことを知りました。


【保険の確認】

緊急帰国時の費用が保険でカバーできる場合もあります。条件や必要書類を調べておくと安心感が増します。最近出入国スタンプを押されないことも多いですが、申請時に出入国スタンプが必要な場合もあります。

私も申請が受理されるかわからないのですが、現在申請中です。仮に受理されるのであれば、高額チケットを購入する際に、あそこまでドキドキしなかったな(笑)と思います。

【家族との事前の話し合い】

どのような場合は帰国するのかを事前に家族と話し合っておくと良いと思いました。例えばどの状況なら子どもを連れて帰国するのか、現地に残すのかなど、ある程度の目安があると、今回の私のようにパニックしなくてすむと思います。


おわりに

海外生活では、家族の最期に寄り添えないというリスクがあります。それでも、日ごろから準備をし、自分なりに最善の決断をすることで、少しでも後悔を減らせるのではないでしょうか。

準備をしておくことは大切ですが、でも何よりも大切なのは、普段から「もしかしたら、この人に会うのはこれが最後になるかもしれない」と思って、その時間を大切にすることではないかとも思いました。これは、どこに住んでいるかは関係ないかと思いますが。

いつも同じ毎日がやってくる わけではないのですよね。コロナ禍の時にも同じことを考えたなと思い出しました。「一期一会」を大切に過ごしていきたいと感じています。



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