学位取得の基準
学位というのは、この場合は博士号のことですね。何をもって「合格」とするのかの基準は大学・分野によって大幅に違うので、聞いた人の数だけいろんな答えが出てくると思います。
ちなみに私が博士課程で通ったところは明確な基準がなく、ふんわりと「国際誌1報+国際学会発表」と言われていました。ただ、これも厳密ではなく、かなりケースバイケースでした。
該当する学生の身の振り方にも大きく関係していて、期限が決まっている留学生(特に国費留学生)とか、日本人でも大学に残るつもりがないなんていう場合は、ちょっと審査が甘くなっていたように思います。さらに、オーバードクターを何人も抱えている研究室でも、教授の定年ギリギリのタイミングで一掃セールのごとく、一斉に学位申請する場合もありました。
大学によっては学位取得の基準を「インパクトファクター〇以上」と設けているところもあります。ただ、インパクトファクターは研究者の母数が増えるほど高くなるので、分野によって大きく違ってきます。
さらに大学によっては基準を論文の数にしているところもあります。「論文数10以上」と聞いたときには耳を疑いましたが、某マンモス大学で1つの研究室の中に小学校1クラス分くらい人がいて、グループになってどんどん論文を書いていくと自然と数が増えると聞いて納得しました。
ちなみに、私が学生時代の指導教員は海外で学位を取った方だったのですが、学位審査は論文による書面審査よりも、ずっとずっとずっとずっと口頭試問のほうが重視されていて、口頭試問で「ダメ」といわれたらアウトだったそうです。どんなに素晴らしい論文を書いていても、口頭試問でいろいろと突っ込まれたときにボロが出ると「こいつは自力では書いてない」とみなされたとか。
私の指導教員は直接のボスとそりが合わなかったらしいのですが、口頭試問をクリアして「おめでとう」と言われた次の瞬間、そのボスが口調を変えて「これからキミと私は対等の関係である」と宣言したのだとか。
なんだかその話が妙に心に深く刻まれたので、時代とか、場所とか、いろいろ違っているのでしょうけれども、私もどんなに年下の人であっても、共同研究などをする際には「この人と私は対等の関係である」と自分に言い聞かせるように心がけております。
あ、そうそう。世の中にはちんたらと博士課程を3年もやらず、早期修了するとんでもなくカシコイ人もいます。このネット社会、ちょっと検索すると、そんな例がわんさか出てくるので、我が身と比較して絶望している学生もいるのではないかと思います。
私はなかなか論文が出なくて、結局1年半延長しました。3年で取れないとわかったときにはもう、泣いて泣いて、私には向いてないんだもう無理だやる価値なんてないんだやめた方がいいんだと落ち込んで思い詰めてかなり手が付けられなくなったものです。
今から思えば、指導教員も微妙にその辺のセンスがなかったというか(苦笑)、もうちょっと良い伝え方もあったんじゃないかと思いますけどね(遠い目)。
ですが、振り返ってみると(何度もこの話は書いていますけど)、あの時に意気揚々と鼻高々と私を追い抜いて行った人たち、ほとんど研究分野に残っていないんですよ。
なので博士課程で苦労している学生の皆さん、どうかどうか、あきらめないで頑張ってもらいたい。