実家
ご実家はどこですか。
と聞かれたら迷いなく両親が住んでいるところを答える。
ただ、そこが故郷かと聞かれると困る。
大学時代の4年間しか住んでいないから。
大学を出て一人暮らしを始めて、
その後も実家には帰らず今に至る。
その間、私の部屋だったところは荷物置き場になり、
母のワーキングスペースになり、
今はタンスが3つにドレッサーにミシンと、
足の踏み場もない。
姉の部屋だったところは父の書斎になり、
本棚が増え、パソコンが増え、という経過をたどり、
父の趣味のものも置かれてやはりぎゅうぎゅう。
家全体にモノが多くてごちゃごちゃしているので、
帰省の都度、何か捨てて帰ろうかと思うものの、
その一つ一つの「モノ」に、ちゃんとストーリーがあって、
結局手出しできない。
タンスの上に置かれている、色あせて古びた人形だって、
家族で海外に行ったときに、
選び抜いて買ったものだったよなあ・・・とか。
この家に住んでいたのは確かに4年しかないけれど、
中にあるものはそれ以上の期間を私と過ごしたものもあるわけで。
家そのもの、つまり建物ではなく、
家族の過ごした時間を共有できるようなモノ、
そういうのを全部ひっくるめて「実家」と呼ぶのかしらね。