卒論は個人戦かチーム戦か
卒業研究のテーマをどう決めたか、今までいろんな人に話を聞きましたが、やはり基本的には「降ってくる」ものが多いようです。つまり先生から「アナタはこれをやりなさい」と渡される。中には複数のテーマを出されて「この中から選べ」というケースもありますが、それだって先生が決めたテーマですもんね(ただし学生目線から見ると、「自分で選んだ→自分で決めた」という意識になることもある)。
私自身の卒論テーマは実に曖昧でした。最初は何にもわからないので、練習だからといろいろ教えてもらうじゃないですか。そこから徐々に「これをやってみて」と言われて、そのデータを先生に持っていくと「じゃ次はこれをやってみて」、という感じ。それをかき集めて卒論にしたので、やっている本人としては研究テーマについてよくわかっていない状況でしたねえ(苦笑)。
さらに、私は「外研」、つまりは自分がいる大学ではなく別の研究機関に行って実験をさせてもらっていました。つまり教えてもらっているのは「先生」ではなく、研究でお金をもらっている方だったわけですよ。今思えば、戦力にもならないピヨピヨしている学生をよく引き受けてくれたものだとも思います。
まあ、そんなわけで、教えるのが仕事ではなく、研究するのがお仕事の方についていたので、「これ何あれ何?」というようなピヨピヨした質問をすることは許されませんでした(雰囲気的に)。さらに私は同級生2人で同じ研究室に行ったのですが、実験も個別ではなく、3人一組でいつもやっていました。なのでどんな実験でも3人で動いているわけ。今から思うとシュールな感じもしますが、当時はなにせピヨピヨなので、全ての出来事に対して「そういうものである」と刷り込まれていったのですね。
で、時は流れて私は現在教員側にいるわけですが、卒論生のテーマ決めや実験指導に関しては、未だに毎年手探り暗中模索試行錯誤です。
私自身の経験から、卒論というのは必ずしもパーソナルなものではなく、グループで行うのもアリだと思っています。大学生というのは就職だの恋愛だの単位だのと日々いろんなことがあるもので、ちょっとしたことで気分が上がったり下がったりします(少なくとも私はそうだった)。落ち込んでいるときに、今日は絶対実験しなくちゃいけない、でも失敗しちゃった、となるとモチベーションが下がりますよね。でも他の人と一緒だと、一人では気づかないような「うっかりミス」に気づいてくれてケアレスミスが少なくなるし、同級生とちょっとしたおしゃべりをすることで気分が上がってくることもあります。さらに大きなミスをしたときに「みんなで謝りに行こう」が出来るのも大きい。一人だとプレッシャーが大きくなるもんね(笑)。
一方で、グループ内の学生間の相性があまり良くないと、これが完全に裏目に出てしまいます。ただ、学生間の相性って、入学時から研究室に入るまでの数年ではわからないこともあり(実際、私は上述の同級生とはほとんど接点がなかった)、「やってみないとわからない」部分は多いです。
そんなわけで、私のゼミでは個人戦にするかチーム戦にするかは学生にゆだねています。不思議なことに学年によって全然違っていて、見た目ではそんなに仲良くなさそうに見えるのにチームを組む場合もありましたし、その逆(仲良しの2人組なのに、2人とも個人戦を希望した)もあります。これまでの数年間、特に問題はなかったのですが…。
今年の4年生は3人でチームを作りました。当初から3人の中で実験に対する熱意には若干の差があったのですが、この時期になってその差がちょっと顕著になってきつつあります。3人の中で「たくさん実験する学生」と「そうでもない学生」がいると、どっちに合わせるかが難しくなってくるのですよね。
今までは(たまたま鷹揚な性格の学生が多いので)なんとなく解決していたのですが、さすがにこの時期になってくると意識が変わるらしく、今後どうするか、悩ましい今日この頃でございます。