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大学生の金銭感覚を通じて視野の狭さを知る
私の両親は大学を出ているし、祖父母も大学を出ているし(というか大学の先生だったし)、きょうだいいとこ含めてほぼ全員が大学に行っていました。
加えて、私が行った高校は大学附属でほぼ全員系列の大学に進学できました。となると私の周りのほぼ全ての人が「高校を卒業したら大学に進学する」のがデフォルトなわけですよ。そうなると知らず知らずのうちに「世の中全部の人が進学する」という意識になっちゃうんですね。
当時の大学進学率は4割弱でしたから、つまりは世の中の同い年のうち、半分以上は大学に行かずに社会に出ていたわけです。でも私の身近に高卒(あるいは中卒)で社会に出る人がいなかったので、私自身が見える狭い視野で「みんな大学に行くもの」と考えていたわけ。
「実は自分の方がマイノリティ」と痛感したのはだいぶ後のことで、それを理解したときは衝撃的でしたねえ。「アタリマエ」と思っていたことが全然当たり前じゃないという事実を突きつけられて、なんというか、堅牢だと思っていた地盤が全然そうではなかったことに気づかされたというか。
それ以降は「今私が見ているのは世の中のごく一部でしかない」と思うようにしていたのですが、数日前に「また見えている範囲だけで考えていた」ことを発見し、かなり動揺しています。
具体的に言うと、大学生の金銭感覚です。
今私がいる大学は、私立なのでそこそこ授業料がかかります。つまりは授業料を払えるレベルの経済力があるご家庭…のはずなのですが、案外そうでもないのです。もちろん裕福なご家庭出身の人もいますけれども、結構カツカツで授業料は分割払い、奨学金とバイトでなんとかしのいでいる学生もかなり多くいます。中にはほとんど仕送りがなく、バイトバイトで家賃も生活費も賄っている学生もいます。
私が大学生の頃より明らかに物価は上がっているのに仕送り額ははるかに少ないのですから、そうなるとこちら(教員側)としても気を使わざるを得ません。授業で使うちょっとしたもの(教科書も含めて)も、なるべく学生の金銭面で負担にならないように考えるし、提出書類なんかもコピー機を使わないようにデジタルファイルで送ってもらうとか配慮しています。
それが先日、某大学に行って大学生と話していたら、金銭感覚が全然違うんですよ! 私が話した学生たちはみんな実家暮らしなので家賃も食費もかからない上、お小遣いももらっていて、さらにバイトしているのです。自分が使えるお金というのは「生活」というよりは「楽しみ」のために使えるものという感覚なので、あっ、そうか…、と突然視野が狭くなっていたことに気づいたのでした。
おそらくは私自身が気づいていないだけで、実はこまごまと、狭い視野の中で考えていることたくさんあるんだろうなあ、とちょっとゾッとしたこの数日の出来事でした。