ワンオーダー 〜キャッシュがないと戦えないヒーローとそれを支えるボクの話〜_28
槇村さんは小洒落たカフェにボクを連れて行った。レンガテイストの壁に、開放的な店内を演出する大きな窓。そして明治時代を彷彿とさせる街灯。
店に入る前に値段が確認出来るものはないかと探したが、置いてなかった。
小洒落ているということは、それだけ設備投資しているということである。
それを回収するために、商品にもその分を上乗せしている可能性もある。
ボクは全然、マク◯ナルドでいい。
バニラシェイクが食べたい。100円だし。
店内は平日の昼間だというのに、それなりに人がいた。
やはり人気店なのだろう。雑誌とかにも掲載されている感じか。
いけ好かないぜ!
店内に入ったボクらを店員が席に案内する。
「ここは、ワッフルがオススメなんですよー」
「どれどれ」
メニュー表を見てみる。
「おうふ」
プレーンワッフルで800円。
それ以外のワッフルは1000円以上である。
「ぼ、ボクは……えーっと、病み上がりだしなー」
メニュー表を捲ってドリンクメニューを見る。
ブレンド珈琲が600円である。
殺してやろうか。
黒豆汁の分際で、ワンコインを越えて来る等、身の程知らずにも程がある。
あー、マク◯ナルドなら100円なのになー。
なんで女って金かかるとこに来たがるかなー。
なんでボクを付き合わせるかなー。
年下だからかなー。
そういうの分かんない子だからかなー。
あー、いやだー。
このくそ貧乏人にたかる女なんていやだー。
槇村さん、いやだー。
「雪道さん、なんか、すごい顔してますよ」
「え、やだー」
「どこのマダムですか!」
「ん、いや、何でも無い」
「雪道さん、コーヒーとワッフルのセットもありますよ。若干お得!」
「お得って言っても、50円程度やろ、なめとんのか、コイツ」
「きゃ、怖い〜」
「ボクは水で」
「ちょちょっと待て、お兄さん」
「……」
「私がごちそうしますよ、退院祝いということで」
「槇村さん、大好き」
そういえば、コイツとは映画館に言った時、キスしたっけ。
彼女のつもりでいるのかな?
分からんけど、まあ、いいや。
「ごちになりまーす」