『クリスタ3Dモデルを使った人物アニメ基本動作テンプレ作成ノート』電子書籍原稿の下書き(3)
ここからは、「女性の歩き」をサンプルに、3Dモデルを使った実際のポージングに入ります。
出来上がりイメージ
今でこそ、どうにかこうにか扱えている3Dモデルのポージングですが、やりはじめの頃は全くの手探り状態でした。
最初は、セル1枚1枚に張り付けた3Dモデル対してちまちまとポージングしていました。作りながら、もっと効率的な進め方はないものかと多くの試行錯誤を繰り返しました。
そんな中、3Dモデルの左右反転を駆使することで、効率的にポージングができることがわかりました。
すべてのアニメーションに対して有効というわけではありませんが、この機能を使うことで、最小限のポージングで1ループ分が作れる場合があります。
「女性の歩き」を例にして、まずは1ループ分のセルを見てみましょう。
1ループはセル8枚で構成されていて、各セルに(1)~(8)の番号を付けました。トーンを落とした(9)は(1)と同じポーズになります。
最初のポーズ(1)は、右足が前方に着地した状態にしています。そして1歩進んだ状態である(5)は、左足が前方に着地した状態です。
そして、右足が前方に着地する寸前のセル(8)までが1ループとなり、セル(9)で振り出しのセル(1)に戻ります。
タイムライン
24fpsのアニメーションを想定し、それぞれのポーズ(セル)を3コマ撮りした場合のタイムライン(時間をフレームレートで分割した軸)は次のようになります。
各ポーズ(セル)を3コマ撮りした場合、1ループでちょうど24コマ(フレーム)=1秒になります。この「歩き」は、1秒で2歩進むアニメーションになります。
実際の動きを試すには、手の指(例えば人差し指と中指)を両脚に見立てて、時計の秒針を見ながら歩かせてみると時間感覚がつかめます。もちろん自分で歩いてみてもいいです。健康にもいいし。
ポージング・プラン
実際のポージングに入る前に、今一度(1)~(8)のポーズを見ていただきたいと思います。
じっくりと観察していただくとわかりますが、(1)と(5)は、左右反転しているだけで、同じポーズだとわかります。
作成した3Dモデルのポーズは、「オブジェクトランチャー」の中の「反転ボタン」をワンクリックすることで左右反転します。
オブジェクトランチャーは、3Dモデルを含む、3Dオブジェクトを選択したときに、オブジェクトの下に出てくるポップアップメニューです。
このメニューの中に左右反転ボタンがあり、このボタンを押すごとにオブジェクトが左右反転を繰り返します。
この左右反転機能を使うことで、(1)のポージングができれば、(5)もほぼ同時にできてしまうということになります。
他のポーズの反転関係
他のポーズについても、見ていきたいと思います。
ポーズ(2)と(4)は一見すると左右対称に見えます。
(2)と(4)では軸足(接地している足)が異なるため、全く同じではありません。
ただし、腕の角度や脚の前後の開き具合などはほぼ同じと考え、(2)を左右反転させて(4)とし、微調整することで手早くポージングできます。
次に(1)と(5)の中間のポーズである(3)を見てみます。(7)が(3)と左右反転関係にあることがわかると思います。
そして、全体をじっくり眺めてみると、最初の4つのポーズ(1)~(4)を反転したものが、ポーズ(5)~(8)になることがわかります。
つまり、(1)~(4)の4セル分をポージングすれば、8セル分のポーズができてしまうということになります。
このように、ポーズの左右反転関係がわかれば、最小限のポージングで一連のポーズを作り込めますし、変更が生じた場合でも、1ポーズ分だけ手直しし、できたものをコピーしたり反転することで他のセルに展開できます。
ポーズの反転や類似関係を意識したポージングは、他の様々な「歩き」、「走り」、あるいは「自転車をこぐ」など、左右交互に同じ動きを繰り返すアニメーションの多くに応用できます。
まとめ
ポージング前の計画の段階です。この計画があるとないでは、ポージングの作業にかかる労力が大きく変わります。
計画できるということは、ポージング前の段階で使用するセルの枚数やポーズがある程度わかっているという前提になります。いやいや、そんなこと最初からわかるわけないだろう、と思われるかも知れません。
そのためにもアニメーションの教科書は、是非とも1冊用意していただきたいのです。
計画と作画を繰り返すことで、教科書にない動きについてもいつしかポージングがイメージできるようになります。そして、いつしか3Dモデルに頼らずとも、線画から入ることができるようになるかも知れません。
私にとってはまだまだ先のこと(先は決して長くはありません)ですが。