『クリスタ3Dモデルを使った人物アニメ基本動作テンプレ作成ノート』電子書籍原稿の下書き(5)
今回は、「ポージング・プロセスの検討、ツールの再確認、そして具体的なポージング作業」について、ざっくりと書き進めていきます。
原稿を書くに当たり、改めてポージング作業を行いました。
自分自身の実際の操作を観察してみてわかったことは、想像以上に、細かな作業を感覚的に行っていることでした。
そうした細かな内容は、なかなか言葉では説明しにくいところがあります。できるだけ簡素に、そしてできるだけイメージを用いて伝えていきたいと思います。
また、わかりにくい箇所だけに絞って、動画による説明も検討した方がよいかも知れません。
以下原稿内容になります。
ポージング・プロセス
ポージングを行うに当たり、作成手順をざっくりと決めておこうと思います。
ここで、デッサン人形を使ったアニメーション(歩き)の仕上がりイメージをもう一度確認しておきたいと思います。
1ループ分として用意するポーズは8セル分8種類です。(図の①~⑧です)
繰り返しになりますが、実際にポージングを行うのは、セル1~4の4セル分です。セル5~8は、1~4の左右反転になります。
また、セル2と4は類似形なので、一方を先に作り、もう一方は最小限の変更で済ませます。
セル2と4がほぼ同じものと捉えると、実質3ポーズのみ作れば8セル分の歩くポーズができることになります。
以上の点から以下のようなステップでポージングを行っていくことにします。
プロセス
使用するツールのレビュー
次にポージングに使用する変形ツールについてレビューします。
1 ルートマニピュレータ(全身)
3Dモデル全体の位置、回転、サイズを調整するツールで、モデルの足元に中心があります。
円、または円弧が回転で、矢印は矢印が示す方向に平行移動します。
映像表現のひとつである、モデルを画面の中央に固定するフォローの場合には、このツールはほとんど使いません。
このツールは、主に、歩き、走りでモデルを前後左右に移動する動作や、ジャンプ、階段を昇るような上下移動する動作、また、振り向きや蹴る動作などの回転動作など、画面の中をデッサン人形が移動する場面に用います。
また、デッサン人形上部に表示される移動マニピュレータ内、赤枠で囲んだ5つのアイコンはルートマニュピレータと機能は同じで、より感覚的にモデルを動かすことができます。
ルートマニュピレータの方が高精度に操作できるため、ルートマニュピレータを主に使うことにします。
2 アニメーション・コントローラー
アニメーションコントローラーは、ルートマニュピレータが表示されている場面で手首、足首、首、頭部そして腰中央の主要関節部分に出現する薄紫色の円形です。
いずれかの円をクリックするとその円にある関節のルートマニュピレータが設定されます。
このツールを使うことで、他の関節を固定したまま選んだ関節を回転、あるいは移動できます。
このコントローラー使用時は、すべての関節の制限がはずれ、動かしたとおりにモデルが変形してしまいます。
無理なポーズも可能なことから、アニメーション用ポージングでは、違和感のない範囲で、隠し味程度に使っています。
なお、変形後に、動作制限がかかっている関節をマニピュレータで再調整すると、正常な位置に戻ります。
3 マニュピレータ
各パーツをクリックすると現れるツールで、3Dモデルの全身の個々の部位の調整に用います。
基本的に関節を中心とした前後左右の回転、体軸方向の3方向の回転を調整します。赤が体軸(骨を軸にして)方向、緑と青が前後左右に回転させるためのハンドルになります。(緑と青は、横回転というだけで、どちらかが前後、どちらかが左右というわけではないようです)
波型の表示は、関節の動く範囲を示します。この表示により、おおよその動作範囲がわかります。この制限はオンオフできますが、無理なポーズにしないよう、オン状態で使うのが無難です。
アニメーション用のポージングに最も多用する調整ツールです。
4 パーツの移動
パーツのマニピュレータ起動時、回転中心と反対側に黄色い枠が表示されます。この枠はカーソルで回転させることができます。
この枠をカーソルでつかんで回転した場合、パーツは操作者が見ている画面に対して平行に回転します。また、他のパーツが連動して動くため、場合によっては、予期せぬ方向への回転や予期せぬ変形が発生することがあります。
この機能は必要なとき以外には使わない方が無難かも知れません。アニメーション用のポージングでは使ったことがありません。
5 関節固定機能
関節を選択して固定する機能があります。
パーツをクリックして表示された黄色枠を右クリックすると青枠に切り替わります。すると、この関節部分が固定され、パーツを動かすと固定部分を中心に全身のバランスが変化します。
アニメーション用のポージングでは使ったことがありません。
6 視点の移動
視点に関するツールも操作性を大きく左右しますので、合わせてレビューします。
移動マニピュレータの左側の3つのアイコンは、カメラの位置を変えられる機能です。
動作原理はカメラ・プリセットと全く同じです。カメラ・プリセットを使うことで、モデルの向きを正確に「正面」や「側面」になる位置にカメラを移動させるのに対して、アイコン操作では、カメラの位置を連続的、感覚的に変えることができます。
ポージングは、様々な角度のポーズを確認しながらバランス調整する作業と言えます。
これら3つのアイコン、特に左端の回転アイコンは特に重要です。
最初に作成するポーズ
最初に作成するポーズは、「セル1」右足を前側に着地したポーズです。
デッサン人形の配置と設定
デッサン人形をアニメーション・フォルダに設置する手順と方法は、前章でご紹介していますので、ここでは省略し、デッサン人形が設置済みの状態からスタートします。
脚部のポージング
太ももパーツをクリックし、マニュピレータで左右の股関節を中心に脚部を前後に開きます。
実際の作業では、全体が見やすいようカメラを回転させて視点を斜め俯瞰にしました。緑のハンドルで股関節を中心に左右の脚を前後に開きます。
このコマでは、右脚と左脚はどちらも着地していますので、足先の高さを揃えるようにします。右脚はまっすぐなままにして、左脚の膝、足首、足の指先を順に曲げ、一旦モデルを接地します。
地面を真横から見て、両足が接地していればOKです。もし高さが異なる場合は、左膝の角度、左足首の角度、左足先の角度などを微調整して高さを揃えます。(どの箇所も、緑のハンドルを使います)
両腕のポージング
どんなポーズにするか
ここではアニメっぽく、両腕をピンと伸ばしたポーズにしようと思います。
実際に自分で歩いてみるとわかりますが、歩行中の両腕は結構曲がっているものです。
逆に腕を伸ばすと、あたかも軍隊の行進や、あるいはかしこまって歩く子供たちのように、ちょっとわざとらしく見えます。それが逆にアニメっぽくてよいのではと考えました。
左右の脚と逆方向になるよう、腕を前後に開く
腕は、上腕パーツをクリックして、肩関節を中心に回転させます。右脚が前なので、右腕は後に、左脚が後なので、左腕は前に回転させます。(この場面では青ハンドル)
やってみるとわかりますが、肩関節は、前方向には簡単に回転するものの、後ろ方向には、ほとんど動きません。この場合は、肩パーツをクリックして回転させます。(この場合は、赤ハンドル)
これで脚と腕部分の横方向からのポージングができましたので、一旦カメラ・プリセットや視点回転で視点を前方向に切り替えます。(ポージング中に左右反転したため、反転しています)
やや腕が開きすぎているので、同じくマニュピレータを使って、両腕をやや内側に曲げます。(この場合は、緑ハンドル)
まとめ
一回の原稿としては、かなり長いものになってしまいましたので、ここまでにします。
それにしても、こんな作業、本当にやりたい人っているのかな、と原稿を書きながら無責任にも思ってしまいました。
日本全国のクリスタでアニメーションを制作する500人(肌感覚ですが、多くても2000人くらい?)の中で、こんな作業をやろうとする人は、恐らく数名~数十名がいいところではないかと思います。
たとえ書籍が無料でも、なかなか読む気になれない気がしますし、読んだら読んだで、長い説明を見てモチベーションがダダっと下がってしまうかも知れません。
究極の目標としては、この方法を必要、あるいは面白いと思った人が、ある程度自由に、そして感覚的にポージングできるようになっていただくことでしょうか。
そんなことを思いつつ、引き続き原稿を書き進めたいと思います。