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久しぶりに空を飛んだ。

久しぶりに空を飛んだ。とても懐かしい夢の中で。空を飛ぶ夢。それはなんて素敵なことだろう。

子供の頃、当たり前に見てたあの夢が、まるで何か風のいたずらで、そっと運ばれてきたかのようだ。他人にとっては、退屈な人の夢物語も、本人にとっては、大声で叫びたい虹色の花火だ。

子供の頃、私はよく、大空を気持ちよく飛んでる夢を見ていた。夢の中では、まるでスキップを覚えたかのような軽い感覚で私は空の飛び方を知っていて、当たり前に空を飛んでいる。という世界の中に幼い頃の私はいた。

昨夜見たその夢は、まるで私がピーターパンになったかのように、大人になってずっと忘れていた飛び方を、思い出したかのようだった。

「あ、そうか、私は空を飛べるんだ」ふと、そう思っていた。なんとも不思議に突然に思い付いていた。そして、私はあの頃のように、空を飛ぼうと試みていた。私の空の飛び方は、走り高跳びの飛び方に似ている。

そのやり方はこうだ。まず、助走をつける。だだーっと思いっきり地面を走る。そして片足を思いっきり蹴って、出来るだけ遠くに落下するように飛び上がる。そして胸から地面に落ちるようにして、一気に胸に意識を集中させる。うまくいくと地面にぶつかる寸前に、ふわりと浮かんで飛べるのだけど
最初から上手に飛ぶことは出来ない。夢なんだから一回で飛べればいいものを、その辺は妙にリアリティーがある。

何度も失敗するたびに、何度もそのまま地面にたたきつけられて、夢なのに随分と痛い思いをしてしまうけど、5回、6回と繰り返すうちに少しづつ飛べるようになる。

はじめのうちは、まるで地面と体が反発しあう同じ極同士の磁石のようにふわっとそのまま地面に浮き、そのまままっすぐ飛んでゆくような感じ。慣れないうちは、地上のわずか30センチくらいのところを浮いているに過ぎなくて、飛んでいるというよりは、リニアモーターカーのように、地面を滑っているような感じ。

でも、なれてくると頭で飛ぶ向きを、変えることが出来るようになる。頭を右に向けると右に、そして、頭を上に向けるとびゅんと、上に飛べるようになる。上達してくると、一気に100メートルの高さを飛べるようになる。一気に急降下することも出来たりする。

まさにそれは、気ままなジェットコースターのようで夢の中の夢のような、すばらしい出来事だといえる。夢とはいえ、どうしてこんな飛び方なのか、その根拠が私にはわからない。昔の漫画やテレビアニメでも、こんな飛び方はなかったように思う。超能力で飛んでいるというよりは、地面と私が反発しあって浮いているような感じなのだ。

昨夜の夢は、せいぜい地面から50センチくらいの高さを飛んでいる、いや、浮いているにしか過ぎなかった。今度こそは、思い切り飛んで、はるか彼方から、街をゆっくり見下ろしてみたい。すべてのものが小さく見えるという幸せ。地上にいると、あまりにもいろんなものたちが、暴力的に目に飛び込んでくる。そんないろんなものたちを、すべて小さく押し込んで空という大きな水彩画を、私は見ていたいのだと思う。

今度こそは、もっと高く。そしてもっと、心のびやかに。いろんなものがまわりから、すべて消えてなくなるまで・・・。

最後まで読んで下さってありがとうございます。大切なあなたの時間を使って共有できたこのひとときを、心から感謝いたします。 青木詠一