#39 医療経営メールマガジン 2020.10.19号(メルマガでは最終号)
・経営会議での数字読み上げは上2桁で十分
・聖隷浜松病院、やまだ診療所でのLINE公式アカウント活用事例
・医療法人で常務理事を定款上設けた方がいい理由
【1 週間医療経営ニュース】
直近の医療経営ニュースのうちベスト3を独断でとりあげます。Facebook「いいね!」の人数は、「長 英一郎」のFacebookで、記事が面白いと評価していただいた方の人数です。
◆第3位◆ 経営会議での数字の読み上げ方 Facebook「いいね!」→51人
816,420,500円
このような金額を経営会議では全ての桁を読み上げがちです。ただ、会議参加者としては百の桁の5とかに意味があるわけではなく、上二桁のみ把握できれば十分ではないでしょうか?
参考音声解説:視覚的にとらえる財務三表
私が経理部長であれば8億1千万円もしくは8.1億円と読み上げるかなと。医業収益、人件費、医業利益の全てにおいて、全ての桁を読まずに上位二桁まで読めば会議の時間も短縮できます。財務数値は全て資料に載っているので、読み上げなくても会議参加者は理解できるはずです。
前年や前月と比較して異常数値があれば、その要因を詳しく説明していただいた方が会議メンバーとしても議論しやすい。経営会議は、単に情報共有の場ではなく経営改善をすることに目的があるはず?
であれば、この数値が予算と比較して実績が達成できていないので、次月に向けてこう努力していきますとか。この異常数値は3ヶ月で解消する見込みですとか。そういった期限をもうけた建設的な議論が求められるのではないでしょうか?
私が監事として出席する理事会の場合、事前に財務資料を通読しています。正直数字の発表についてはあまり聞いていません。でも、質問はするし、コメントを求められれば発言する。
理事会、経営会議は限られた時間で行われるわけなので、できるだけディスカッションに充てたいところ。いろんな会議に参加していて、いつもそんな事を考えています。
◆第2位◆ LINE公式アカウントの病院活用事例 Facebook「いいね!」→55人
LINE公式アカウントを始めて半月ほどが経過。すでに200名ほどの方に登録いただき、メールよりも距離感が近くなったような気がします。
LINEのユーザー数は8,400万人(2020年3月末現在)。国民の7割近くがLINEを使っているわけで、病院でもこれを広報手段として使わない手はありません。
聖隷浜松病院(静岡県浜松市)ではLINE公式アカウントを開設しており、私も登録しました(私はかかりつけ患者ではありませんが)。
聖隷浜松病院「LINE公式アカウント」
聖隷浜松病院ではホームページの更新情報をLINEで発信しており、新着情報がその都度LINEに届く仕組みになっています。最新ニュースでは「10月は乳がん月間」ということで乳がん検診を促しています。面白いのは駐車場の混み具合をLINEでほぼリアルタイムで発信しており、来院する患者が空いている駐車場を把握することができます。
ただ、患者の質問に対してはAIが機械的に回答するだけで、人間が回答しない形になっています。確かに、数万人がLINE公式アカウントに登録してチャットで問い合わせがあると、人間側では回答不能になってしまうので、やむを得ないと思います。
一方、やまだ診療所(大阪府寝屋川市)では、聖隷浜松病院と異なったLINE公式アカウントの運用をしています。
やまだ診療所「LINE公式アカウント」
健康にかかる情報発信もしているようですが、LINEを通じて診察の予約や予約変更ができます。また、LINEで質問チャットを送ると職員の方が回答していただけます。
両医療機関の運用をみての感想ですが、かかりつけ患者であればLINE公式アカウントへの登録を促してもいいのではないかと。
例えば、インフルエンザの予防接種が始まりましたとか、予防接種の在庫はまだ十分にありますとか、そういう情報って、患者側がホームページを頻繁に確認するとは考えにくいわけです。LINEであれば、ちょっとした更新情報も知ることができるわけです。
訪問診療の患者(患者家族)とLINEで繋がっていればちょっとした相談であれば、携帯電話でなくLINEで連絡ということも可能です。夜間に医師に電話はしにくいけど、チャットであれば送れるかなとか、患者側としても連絡しやすくなるわけです。一見、LINEで24時間拘束されているような感じですが、深夜に電話がかかってくるよりはストレスが軽減されるように思います(LINEでは応答時間の設定も可能)。
さらに、LINEはいずれオンライン診療でも使われる機会が増えるでしょうから、今のうちから患者とLINEで繋がっていくのは損ではない気がします。
◆第1位◆ 面会制限の緩和と損害賠償 Facebook 「いいね!」→56人
厚生労働省のアドバイザリーボードより高齢者施設等での面会制限、外出制限の緩和について意見が出されました。
2020.10.13 高齢者施設等における面会、外出等
https://bit.ly/3o3O3tx
面会制限については、オンライン面会も実施しつつ、地域の感染状況に応じては感染対策を講じた上でリアル面会も実施すべきとしています。
「地域の感染状況等を踏まえ、管理者が制限の程度を判断し、引き続きオンラインでの実施も考慮しつつ、施設等において面会を実施する場合は、適切な感染防止対策を行った上で実施すべきである。」(10.13 厚生労働省アドバイザリーボード)
様々な地域の高齢者施設の方に聞いたのですが、感染者ゼロが続いているような地域では人数や時間を限定した上で、すでに面会制限の緩和をしています。
一方、東京の高齢者施設では完全にリアル面会は禁止。ただし、希望があればオンライン面会も実施しているという感じです。
先日、広島県三次市での訪問介護事業所に対する損害賠償事件がありました。
「ヘルパーから感染」と提訴の遺族、訪問介護事業所側と和解
いざ施設の利用者が感染して死亡すると、訴えられるのは施設側。感染者が多い地域で面会制限をしていなければ、注意義務を払っていなかったと利用者遺族から訴えられてもおかしくありません。
確かに、面会制限があると利用者のADLや認知機能が低下すると言われていますが、経営側のリスクもあります。これは大変に難しい問題です。
音声解説はこちら
【2 Q&Aコーナー】
Q:当法人では常務理事を定款上設けていないのですが、設けた方がよろしいでしょうか?
A:モデル定款では下記のような記載がありますが、理事長があらかじめ順位を定めていなかったりすると、理事長の死亡後、混乱をきたすことになりかねません。
「理事は、本社団の常務を処理し、理事長に事故があるときは、理事長があらかじめ定めた順位に従い、理事がその職務を行う。」
そのため、常務理事に関する規定を下記のように定款に定めることが望ましいです。
「常務理事は、理事長を補佐して本社団の常務を処理する。」
「常務理事は理事長の職務を補佐し、理事長に事故があったときは、その職務を行う。」
これにより理事長が急死しても、とりあえずは常務理事が職務を行うことができます。
【3 医療経営士2級予想問題】
問 新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の対応(2020年10月1日現在)について、選択肢より誤っているものを一つ選べ。
[選択肢]
1 入院を要する新型コロナウィルス感染症患者に、救急医療管理加算を算定することができる。
2新型コロナウィルスへの感染を疑う患者に、必要な感染予防策を講じた上で実施される外来診療を評価し、院内トリアージ実施料を算定できる。
3 電話や情報通信機器を用いた診療は、初診では安全性に問題があるため、初診料の算定はできない。
4保険薬局において、保険医療機関から送付された処方箋情報に基づき調剤を行い、電話や情報通信機器を用いて服薬指導を行うことができる。
5 重症の新型コロナウイルス感染症患者について、特定集中治療室管理料等を算定する病棟に入院している場合の評価が引き上げられた。
*解答・解説は最下部に
【4 週間Facebookニュース】
私の配信しているFacebookの一週間の医療経営関連記事をまとめて掲載します。
長英一郎Facebookページ
http://www.facebook.com/eiichiro49
■ 名刺裏面を今日よりリニューアル。医療機関でもホームページのようにLINE公式アカウントを開設するところが増えてくると予想しています。オンライン診療との親和性が高いですし。
■ 面会制限の緩和が厚生労働省のアドバイザリーボードより。ただ、東京ではクラスターが発生している介護施設もあり、なかなか難しいところ。。
https://bit.ly/3doXWwH
■ 松村眞吾さんの講演動画。ラジオに引き続き、YouTubeでも!一か月限定公開です!
https://youtu.be/_C7na8zcm0M
■ 長隆とのラジオ共演を彩乃さんという方がとりあげてくれました!
https://bit.ly/2SY9Lki
■ Zoomの背景画像をLINE公式アカウント(患者視点の医療経営 長(おさ)英一郎)に。おかげさまで開設1週間で200人ほど登録いただいています!
■ 先日の日本医療マネジメント学会の模様をまとめました!動画、講演音声、講演資料、関連記事入り。
https://bit.ly/2HgdHuc
■ 本日午前に行われた長隆の講演を早速ラジオにアップ!菅首相との出会いからオンライン診療の方向性まで。
https://bit.ly/34ac1eN
■ 先ほど終了した3時間半の財務諸表の読み方セミナー。冒頭10分の音声と資料を皆様に!
・国の予算を図示化する
・経営会議での数字の読み上げ方
・PL、BS、CFでは伝わらない財務三表
講演音声
https://stand.fm/episodes/5f8134378f5bc01b033a6908
講演資料
https://bit.ly/33ItryF
■ 昨日は久々の対面講演。アクリル板があると想像以上に話しにくい。。300人も聴いていただき、ありがとうございました!
https://bit.ly/2HcfSPm
■ 給付金、慰労金、Go Toキャンペーンと恩恵を受けましたが、タダより怖いものはありません。。今後の日本は大丈夫なのでしょうか?
https://bit.ly/35a6JiF
<医療経営士2級予想問題解答>
[出題可能性]B
[主題意図]
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の特例的な対応については、日々情報が変わるとことであるが、現時点での情報で出題した。
[解答]3
○1コロナ中等症患者のうち、継続的な診療が必要な場合には、救急医療管理加算の3倍相当の加算を算定できる。呼吸不全管理を要する中等症以上の新型コロナウイルス感染症入院患者の診療について、5倍相当の救急医療管理加算を算定できる。コロナ中等症患者とは、酸素療法が必要な患者をいう。
○2新型コロナウイルス感染症への医療提供を診療報酬でもサポートするために、外来で新型コロナウイルス感染患者または感染疑い患者を診療した場合、施設基準を満たしていなくとも院内トリアージ実施料の算定を可能とされている。その際、院内感染防止等に留意した対応が求められる。
×3時限的・特例的な対応として、初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をする場合には、初診料214点(⻭科については185点)を算定できる。
○4保険薬局は、電話や情報通信機器を用いて服薬指導を行う場合について、調剤技術料、薬剤料及び特定保険医療材料料を、(その他の要件を満たした場合)薬剤服用歴管理指導料等を算定できる。
○5コロナ重症患者とは、ECMO(対外式心肺補助)や人工呼吸器による管理等、呼吸器を中心とした多臓器不全に対する管理を要する患者をいう。