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会計事務所はいらなくなる?税務チェックBotの衝撃!

ChatGPTをはじめとした生成AIのイメージと言えば、

嘘をつく
最新情報は答えられない
人間の方が優秀でしょ

といった感じかと思います。

しかし、ここ1ヶ月ぐらいで急激に生成AIの能力が高まってきており、特に私が愛用している生成AIのClaude(クロード)が業務で相当使えることが分かってきました。

私の本業である会計事務所業務が生成AIに代替されていくことを事例により紹介します。生成AIは、有料版のClaude(月20ドル)を前提にしています。

修繕費の元帳の税務チェック

「月次税務チェック」というチャットボット(ユーザーからの質問に自動で返答してくれるプログラム)を自作してみました。

修繕費の元帳をClaudeにアップロードし、税務上の問題点を指摘してもらいます。

うちの法人の修繕費元帳

Claudeには、あらかじめ税務調査で指摘されそうな修繕費のチェックポイントを学習させています。学習項目には、修繕費に限らず売上から純資産まで全ての勘定科目を含めています。

【修繕費】
〇税務調査のポイント
修繕費以外の勘定科目の中に修繕費に該当するものはないか。
修繕費の中に資本的支出に該当するものはないか。
資本的支出に該当すべきものを修繕費として一時の損金にしているケースが多い。
〇税務調査対応のポイント
見積書、請求書等により工事の内容を説明できるようにしておく。

Claudeの事前学習項目の一部

ここで、Claudeに上記修繕費の元帳をアップロードし、

総勘定元帳を読み込ませたらProject knowledgeにある「調査のポイント」に基づき問題点を指摘し、「対応のポイント」に基づき対応案を提案する。

という命令文を入力します。このうち「Project knowledge」とは事前に学習させるテキストやPDFになります。

Claudeの画面

Project knowledgeを空欄とすると、インターネットからの公開情報から適当な回答がされてしまいます。あらかじめ学習させることで、限定された情報からのみ回答させるようにし、嘘をつかないようにします。

税務上の問題点の指摘をズバッと

以下が、上記命令文に対するClaudeからの回答です。まず修繕費の税務上の問題点について指摘してくれています。これらの指摘は税理士であれば当然できることですが、経験の浅い職員だと指摘漏れが出ることもあるでしょう。

高額な修繕費で税務調査の対象となる可能性があるとのありがたいご指摘をいただいております。

問題点
1 資本的支出の可能性
6月20日のエレベーター関連の支出(かご操作盤内基盤交換:154,000円、かご内基盤交換:300,000円)が高額であり、資本的支出に該当する可能性がある。
2 修繕費の内容確認
「エレベーター修理代」として計上されている金額(6月28日:320,199円、7月31日:77,000円)の詳細が不明確。
3 修繕費の按分
7月31日の「エレベーター修理代折半」(77,000円)の按分根拠が不明確。
4 高額な修繕費
6月の修繕費合計が454,000円と高額であり、税務調査の対象となる可能性がある。
5 修繕費の期間帰属
6月28日と7月31日の「エレベーター修理代」が連続して計上されており、同一の修繕に関する費用である可能性がある。

Claudeから修繕費の税務上の問題点が指摘

税務調査対策も教えてくれる

Claudeは問題点だけでなく、税務調査への対応策も提示してくれます。まさに会計事務所がクライアントにアドバイスするような項目が網羅されています。

対応策
1 工事内容の確認
エレベーター関連の工事について、見積書、請求書、工事報告書等を入手し、工事の内容を詳細に確認する。
特に6月20日の高額な支出については、資本的支出に該当しないか慎重に検討する。
2 資本的支出と修繕費の区分
工事内容を基に、資本的支出と修繕費の区分を明確にする。
資本的支出に該当する場合は、固定資産台帳に記載し、適切に減価償却を行う。
3 修繕費の内訳書作成
「エレベーター修理代」の内訳を明確にした書類を作成し、保管する。
特に6月28日と7月31日の支出については、具体的な修理内容を記録する。
4 按分計算の根拠資料
7月31日の「エレベーター修理代折半」について、按分計算の根拠となる資料(契約書、覚書等)を整備する。
5 修繕費計上の一貫性確認
過去の類似の修繕について、費用計上の一貫性を確認する。
6 固定資産台帳との整合性確認
エレベーター関連の支出が固定資産台帳に適切に反映されているか確認する。
7 経理担当者への教育
資本的支出と修繕費の区分について、経理担当者に教育を行い、適切な会計処理を徹底する。
8 税務調査対応の準備
上記の対応を行った上で、税務調査時に説明できるよう資料を整理し、保管する。
9 期間帰属の確認
6月28日と7月31日のエレベーター修理代が同一の修繕に関する費用かどうかを確認し、必要に応じて適切な期間に費用を帰属させる。
10 修繕費の必要性と金額の妥当性の説明準備
特に高額な修繕費について、その必要性と金額の妥当性を説明できるよう、関連資料を整理する。

Claudeから税務調査対策を提案


経理人材が病院で不足している背景

なぜ、会計事務所の代表である私がこのような生成AIを開発しているのか?一見すると、自らの首を絞めるようなチャットボットです。仮にクライアントにProject knowledge(事前学習項目)を提供すれば、顧問契約が解約されるかもしれません。

それでもこのようなチャットボットは必要だと考えています。

今日、看護師や介護職員が不足していますが、経理は一般企業との競争になり、経理人材も不足しています。なかなか日商簿記の資格を有している、経理の経験があるといった優秀な方を病院で採用することは難しくなっています。

また、人事課や総務課といった別部門から経理課に異動になるということもあり、必ずしも経理のプロフェッショナルが経理課にいるとは限りません。

では、外部委託ですべて会計事務所に丸投げをすればいいのかというと、会計事務所側も人手不足になっています。上記のような修繕費の分析を正確かつ迅速にできる会計事務所担当者が少なくなっているのです。

今はベータ版(正式版をリリースする前にユーザーに試用してもらうためのサンプル)の「月次税務チェック」のチャットボット。もう少し社内でトライアンドエラーで改善し、いずれはクライアントの病院に提供できるようにと考えています。

Claudeの使い方も含め生成AIの基本的な使い方を新刊で解説しています(ただいま予約受付中)。


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