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#28【老健】リハビリ頑張ると稼働率が下がるジレンマ

・国は在宅復帰を老健に求めるけど副作用が
・利用者のことを考えていかに稼働率を上げればいいのか?

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超強化型老健に求められる機能

介護報酬上、リハビリを頑張ってご自宅に早めに帰す介護老人保健施設(以下、老健)が評価されています。例えば、最も高い介護報酬単価となる超強化型老健(すごいネーミング)は、主に下記の基準を満たす必要があります。

在宅復帰率50%以上
→ざっくり言えば、老健を退所された方のうち半分以上が自宅などに帰った割合

ベッド回転率10%以上
平均入所日数が300日以内だとこの要件をクリアできる計算

超強化型老健は、新規入所者を入れ続けない限り、稼働率(入所定員に対する入居者数)が低くなります。入所期間が特養やサ高住などと比較すると短く、自宅に帰られれば通常すぐには老健に戻らないからです。

在宅復帰できそうな方だけ入所

A老健は強化型老健ですが、稼働率が60%と低迷しています。リハビリを頑張り、自宅に帰すことを主たる目標にしており、平均入所日数も90日と非常に短くなっています。入所させるか否かの判定も在宅復帰できる可能性があるかどうかで選別しています。ただでさえ、稼働が低いのに入居を断り、特養などに紹介してしまっています。

A老健の介護職員、リハビリスタッフは利用者ファーストで在宅に帰しているのですが、稼働率が低ければ黒字にはなりません。X理事長としては無い袖は振れないということで、賞与の引き下げを考えています。職員としては利用者のためにこんなにリハビリを頑張っているのになぜマイナス評価なのか。理解ができずにいます。

利用者のためと言うけれど

経営を優先して稼働率を上げれば利益は出るけど、在宅復帰率は下がり入所日数も延びてしまう。このジレンマをいかに解決するのかということです。

A老健の職員は利用者ファーストとしているけど、長期入所者を入所させても利用者や家族のためになるわけです。

家族は在宅介護で疲弊していて、負担軽減のために3ヶ月でもいいから入所をさせたいと思っているかもしれない。

利用者にとっても在宅療養がベストかというとそうでないかもしれない。特に、コロナ禍で自宅で療養していると外出を自粛し、1日中ワイドショーを観ていて全く運動をしない、そして家族以外コミュニケーションをとらない。独居であれば全く誰とも会話をせずに毎日が過ぎてゆく。

さすがに半年もこのような状態が続くと筋力が低下し、認知症も進行する。であれば、老健に入所し体操などで体を動かし、他の入所者と喋っている方がいいのではとなります。

経営視点と利用者視点のバランスが必要

つまり、在宅復帰は老健としては大事な機能な一つではあるけど、役割はそれだけではない。家族のレスパイト(負担軽減)もあるだろうし、看取り機能だってあってもいい。経営とのバランスを考えれば、いろんなタイプの入所者を入れてもいいのではないかと。この辺は病院でも同じような論点がありますが、それはまた別の機会に。


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