病院は人口減少とどう向き合う? 【101床減らしたS病院】
300床を199床にダウンサイジング
関東地方にあるS病院。2022年4月から199床の病院になった。従来300床あったので、101床減である。
200床未満になると、外来管理加算や特定疾患療養管理料を請求できるなど診療報酬上のメリットがある。また、2022年度診療報酬改定では、重症度、医療・看護必要度という急性期病棟で求められる要件が厳しくなったが、200床未満の病院では要件が緩めになっている。
S病院は、診療報酬という収益上のメリットだけでなく、新病院建築も視野にベッドを減らした。背景にあるのは建築費高騰である。
図表にあるように建築費が、建築資材や人件費の高騰により、年々上がっている。2010年からわずか10年で約2倍になっている。S病院では2025年に新病院を建築予定であるが、建築単価が安くなることは考えられず、できるだけコンパクトに建てる必要がある。
300床の病床を有していたものの、もともと病床利用率は高い月で70%。200人の入院患者数を超えることは稀であった。そのため、199床の新病院でも運用上特に問題は生じないと想定している。
職員減は避けられない
S病院のあるA市の人口予測はこちら。
A市は人口は年々減っていく。特に、40歳〜64歳の働き盛りの労働者層が2020年が16,677人だったのが、2040年には9,468人と44%減である。主な患者層である75歳以上の人口は減らないものの、病院職員の確保はより困難になる。
入院患者数が減って病床が必要なくなるというより、看護職員をはじめとする医療従事者が減ることにより病床を使えなくなることが懸念される。
病院の集約化が不可欠
S病院は公立病院である。夕張市のように財政再建団体にならない限り、財務的にS病院が潰れることはないだろう。公立病院は新病院を建築すると3分の2程度が自治体から補てんされる。一方、民間病院には若干補助金がある場合もあるが、基本的には金融機関からの融資に頼ることになる。
A市のように人口が減少していく自治体では、民間病院は建て替えができず、公立病院に統合されていくのかもしれない。
人口減少と医療のゆくえ
よほど外国人が増えていかない限り、A市のような地方では人口減少は避けられない。われわれの生活の基盤である医療をどうしたら支えられるのか?「人口減少と医療のゆくえ」というテーマでセミナーを企画させていただいた。
演者はベストセラー「未来の年表」でおなじみの河合雅司氏。河合氏の1時間の講演・パネルディスカッションの後、参加者の皆様からの質問もとりあげていく。
セミナーは11月5日!