見出し画像

時には昔の話を

店主もこのMTGに世界に足を踏み入れて結構長い。
今までに色々な方の買取をやってきた。
その中でも引退された方の買取は特に楽しい時がある。
それは、デッキがそのままになっている場合。
引退された際にデッキを崩さず、
その当時のデッキのまま買取に出してくれた時、
「この人はこんなデッキをプレイしてたんだなぁ。」
と思いながらカードを見るのがとにかく楽しい。

その中で今までで一番面白かったデッキを今回のお話に。
デッキの時代は、
おそらく第4版の時代。
MTGの最初の日本語版は第4版なので、
その頃かそれより少し前に作られたデッキなのだろう。
西暦にして1995年か1996年頃のデッキということ。
全てのカードが英語版だった事も覚えている。

あまりにインパクトがあったので、
一度見ただけで60枚全て覚える事が出来た。

デッキはこんなデッキだった。

-クリーチャー0枚-

-インスタント4枚-
4《稲妻/Lightning Bolt》

-ソーサリー6枚-
2《火の玉/Fireball》
2《ハリケーン/Hurricane》
2《地震/Earthquake》

-エンチャント12枚-
4《繁茂/Wild Growth》
4《ほとばしる魔力/Mana Flare》
4《ティタニアの歌/Titania's Song》

-アーティファクト18枚-
4《アラジンのランプ/Aladdin's Lamp》
4《アラジンの指輪/Aladdin's Ring》
4《友なる石/Fellwar Stone》
2《ジェイムデー秘本/Jayemdae Tome》
2《赤の魔力貯蔵器/Red Mana Battery》
2《緑の魔力貯蔵器/Green Mana Battery》

-土地20枚-
4《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》
8《山/Mountain》
8《森/Forest》

こんなデッキ。
赤緑で生物0という珍しいデッキだ。

昔のカードを説明無しでわかる人なら、
このデッキがどんな事をしたいのかわかるはず。

ひとまず説明を入れていこう。
たぶんこのデッキの肝の部分は
《ティタニアの歌/Titania's Song》
というカードだ。

画像1

《ティタニアの歌 / Titania's Song》
コスト:3緑
エンチャント
すべてのクリーチャーでないアーティファクトはその能力をすべて失い、
そのパワーとタフネスがそれぞれ、
その点数で見たマナ・コストに等しいアーティファクト・クリーチャーになる。
ティタニアの歌が戦場を離れた場合、この効果はターン終了時まで持続する。
レア

初出はアンティキティで、
Revisedにも再録されているカード。
太古の昔からある緑の怪しいレアなのだが、
結構能力が馬鹿に出来ない面白いカード。
《機械の行進/March of the Machines》の元祖みたいなもの。
《機械の行進》と違うのは能力を消し飛ばすという点。

「能力を失わせる」
という能力はMTGの世界では稀有な存在で、
特にMTG黎明期ではかなり珍しい。
この《ティタニアの歌》を置いてあると、
《Black Lotus》もただの紙切れと化す。

今回の話には全く関係がないが、
《マイコシンスの格子/Mycosynth Lattice》と一緒に置くとややこしい。
普通の人だと「え?これどうなるの?」と必ず混乱する。

このデッキは何をしたいのかと言えば、
《ティタニアの歌》+アーティファクトで勝ちたいのだと思う。

アーティファクトはあんまり説明の必要がない。
時々《ジェイムデー秘本》だけ使うが、
基本的にはコストだけ見てもらえればいい。
なにせ《ティタニアの歌》で能力を失い、
コストの数字のパワー/タフネスの生物になるので。

《アラジンのランプ》コスト:10
《アラジンの指輪》コスト:8
《友なる石》コスト:2
《ジェイムデー秘本》:4
《赤の魔力貯蔵器》:4
《緑の魔力貯蔵器》:4

うん、こいつらでぶん殴りたいんだな。
特に、
《アラジンのランプ》を10/10
《アラジンの指輪》を8/8
にして殴りたいんだな。
あと、
《ジェイムデー秘本》を4/4
にして殴りたいんだな。
本で殴るってファイナルファンタジーか。
(※FFには本を武器にして殴れる作品がいくつかある。)

そしてそのために
《ほとばしる魔力》
《繁茂》
を入れたんだな。
で、それだけじゃマナが余った時に面白くないから、
X火力を入れたんだな。
たまに《アラジンの指輪》でショットガン撃ちたいんだろうな。

ちなみに、
MTG wikiにすら書いていないのだが、
《アラジンの指輪》はMTG黎明期に本当に
「ショットガン」
というあだ名がついていた。

画像2

あと、元ネタである、
「アラジンと魔法のランプ」
のストーリーのどこを見ても、
「指輪からビームが出る」
という記述はない。

それはともかく、
やりたい事を適当に突っ込んで、
とりあえず《稲妻》4枚採用したら、
デッキが60枚になったんだな。

という竹を割ったような構成。

あまりにコンセプトが面白くて、
この60枚のデッキを見た時に笑ってしまった。
1人で買取作業をしていて声に出して笑ったデッキだった。

1ターン目:《森》に《繁茂》つけてエンド。
2ターン目:《山》置いて《ほとばしる魔力》置いてエンド。
3ターン目:2枚目の《ほとばしる魔力》か4マナカードへ展開。
4ターン目:《アラジンの指輪》or《アラジンのランプ》
5ターン目:《ティタニアの歌》からパンチ!
6ターン目:パンチ&X火力でとどめ!

だいたいこんな感じを想定しているのだろう。
こんなにうまく行くとは思えないが。

そういえば、
マナ加速カードで展開を早め、
コストの高いフィニッシャーにつなげるデッキを
「ランプ」
と総称するが、
《アラジンのランプ》がフィニッシャーである事を含め、
まさにランプデッキではないだろうか。
(※一応誤解無い様に言っておくと違います。
 デッキのランプはRamp、アラジンのランプはLamp)

いや、間違っているのはわかっているのだが、
このデッキのマナ加速とフィニッシュまでの流れは、
一応ランプデッキの祖とも言えなくはない。
このデッキを作った人、
時代を先取りする構築力を持っていたのでは?(笑)
少なくともこのデッキに名前をつけるなら、
「赤緑ランプ」
になるはずだ。
ランプがダブルミーニング。

このデッキを作った人は大会にこれで出たのだろうか。
もし出たのなら何勝何敗だったんだろうか。
とても気になるデッキだ。

そして今になって気付く。
このデッキ、第4版のみで構築可能だ。
1枚たりとも他セット無しでいける。
本当に第4版時代のカードだけで組んだデッキだったのだろう。
黎明期にこんなオリジナリティ(と漢気)溢れるデッキを構築していたとは。
なかなかの猛者だ。
だが、わかる。
このデッキの構築者はMTG大好き野郎だったと。
MTG大好き野郎だからこそ、
ここまでとがったデッキ構築をしたのだと。
店主はこういうクレイジー(褒め言葉)が大好きだ。
出来る事なら引退前にお会いして対戦したかった。
ちょっぴり残念。

さらに、このデッキは現在オールドスクールでそのまま行ける。
全カードが第4版で作れるというのなら、
オールドスクールでは全て問題ない。
《ティタニアの歌》の能力で、
モックスシリーズを封殺する事も出来る。
モックスどころか、
《冬の宝珠/Winter Orb》だろうが、
《ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk》だろうが、
《拷問台/The Rack》だろうが、
問答無用で無効化&生物化させて《地震》で流せる。
それなりに理にはかなっている。
それなりにだけど。

このデッキ、一応ちょっといじれば、
もう少しだけスピードアップ可能なので、
誰かやってみる気のある人はおらんじゃろうか。
結構面白いような気も。
ただ、真面目に作ろうとしたら、
《アラジンのランプ》がデッキから抜けそうだ。

ではまた。





【Magic:the Gathering専門店 Cardshop Serra】

https://cardshop-serra.com/mtg

【Duel Masters専門店 Cardshop Serra】

【Weiβ Schwarz専門店 Cardshop Serra】

【Cardshop Serra (MTG) Twitter】

【Cardshop Serra (DM) Twitter】

【加藤英宝 Twitter】

【質問箱】

【加藤英宝 Instagram】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?