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EDHにおける追加ターンの強さ

ツイッター質問箱でこのような質問をいただいた。

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EDHで使われている追加ターン系呪文の強みがイマイチわかりません…。
ネットで調べても抽象的な答えばかり。
英宝さんに追加ターンのつよさについてコラムを書いて欲しいです。

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EDHでの追加ターンの強み。
これは追加ターン大好き野郎としては即食いついてしまう話題だ。
なにせ、
MTGを始めてから最初に《Time Walk》のテキストを読んだ時に、

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「なんだこのカードは! 
 どうみてもコストがおかしい!
 そして追加のターンとか一方的で楽しい!
 このカード、他のどんなカードよりも欲しい!」

と思った奴だ。
《Time Walk》はEDHでは使えないのだけれども。

さて、回答していこう。

追加ターンについて

最初に追加ターンについてのおさらい。

追加ターンカードというものは、
基本的に全くと言っていいほど弱くないカード。
追加ターンがデメリットに働く状況は、
《騒乱の大祭/Havoc Festival》
《硫黄の渦/Sulfuric Vortex》
のような各ターンごとに誘発する損害の出る置き物がある場合。
こういう場合を除き、
追加ターンは

・最低でもドローステップの1ドローがあるので、
 追加ターン呪文で失った1枚の手札が補充されるため、
 手札は減らない。

・ターンをまたいでいるのでセットランドが出来る。

・もう1度戦闘可能。または召喚酔いしている生物が動き出す。

・土地がアンタップされるので最初に書いた0マナサイクリング状態。

といった事が基本。
デメリットが発生する場合を除いたら、
マイナスに働く事が一切ない呪文と言えるのが追加ターン。
強いて言うなら、
《Time Walk》だけ2マナという信じがたい軽さであるカードは例外だが、
それ以外の追加ターン呪文はコストが重たく設定されているという事だけ。
というより、
《Time Walk》の2マナが軽すぎたので、
最初に調整を入れたのが《時間のねじれ/Time Warp》で、
そこから色々な派生をしているのが現状。
最近では、
「撃ったら追放」
が多い。
《運命のきずな/Nexus of Fate》が例外的だが、
このカードも墓地には置かれない。
(このカードは墓地に置かれない事で強いのだが。)

画像4

これは制作サイドの考えとしては、
「追加ターンが墓地に落ち、
 回収して連打する事を避けたい。」

というものだろう。
対戦そのものがソリティアのような一人ゲームになって欲しくない配慮なのだろうが、
《運命のきずな》はその失敗作となってしまった。
7マナという重たさで使われないだろうという考えが甘かったようで、
このカードは色々なところで問題を起こし、
いくつかのレギュレーションで禁止になった。
禁止されるという事は一つの強さの証でもある。
どちらにせよ制作サイドは追加ターン呪文を慎重に作っているのだろう。
撃ったら追放される呪文は、
おおむねそれほど弱く作られていない。
時々
「別にこんなの撃ったら追放にしなくても。」
というカードもあるけれども。
追加ターン呪文では、
《カーンの経時隔離/Karn's Temporal Sundering》
《水の帳の分離/Part the Waterveil》
《時間への侵入/Temporal Trespass》
《召し上げ/Expropriate》
《時間の熟達/Temporal Mastery》
など、ここ数年で作られたカード達は撃ったら追放ばかりだ。

置き物系でも、
《ウギンのきずな/Ugin's Nexus》
《ゴンティの霊気心臓/Gonti's Aether Heart》
は追放される。
これらは全て「使い回し」を危険視したものと考えられる。

こうまで危険視される事は根本的に追加ターン呪文が強い事の証明で、
これを理解してもらった上で、
追加ターンがEDHにおいて強いのかというお話を。

EDHにおける追加ターン

まず、
どこかで一度書いたような気がするけれども、
とてもシンプルな言い方があって、
EDHにおいての追加ターン呪文は追加ターン呪文だと思ってはいけない。

「対戦相手3人のターンを飛ばす呪文」

と認識するだけで強さの違いが理解出来る。

1対1の戦いでは、
追加ターンは前述のように、

・呼び出した生物の召喚酔いが無くなる。
・召喚酔いしてない生物は2回殴れる。
・セットランド出来る。
・とりあえずドローステップのドローが出来る。
・土地全部アンタップ。

といった挙動になり、
これだけを言っていればEDHと変わらないと言えば変わらない感じもする。
けれども、
EDHのように4人戦が基本となる戦いでは、

「対戦相手3人のターンを飛ばす呪文」

という言い方のほうが正答に近い。
具体的にこれを説明していこうと思う。

1対1との比較をしていくとわかりやすいだろうか。

1対1の戦いでは、

当然の事ながら、
通常、自分と相手のターンが交互に行われる。
「2回に1回、ターンが回ってくる」という事。

これがEDHになると違いがある。
EDHでの4人戦となると、
自分からカウントして、

自分のターン
対戦相手Aのターン
対戦相手Bのターン
対戦相手Cのターン

という動きになる。
通常の1対1とは違って、
「4回に1回、ターンが回ってくる」のだ。

1対1の戦いの時だと、追加ターンが挟まると、
「交互にターンを行う」に一回ズレが生じるだけだ。
細かく言えば、自分が追加ターンを撃ったなら、

自分のターン
自分のターン
相手のターン

という流れになる。
EDHの場合では、

自分のターン
自分のターン
対戦相手Aのターン
対戦相手Bのターン
対戦相手Cのターン

となる。
対戦相手の視点では、
「4回に1回、ターンが回ってくるものが、
 5回に1回にされた。」

になり、
自分視点では、
「4回に1回、ターンが回ってくるものが、
 5回に2回になった。」

となる。

これだけだとわかりにくいのだが、
ターンの進行が変更されるという事は、
対戦相手視点では、
「本来の予定に無かった事」
が起きる。
自分の視点では、
「相手が予定していない先手を取れるチャンス」
が起きる。
これが1対1だと危なくないとも言わないけれども、
4人戦だと、
「本来の予定に無かった事」
が3人分ある。

これを若干強引に説明する方法がある。

《時間停止/Time Stop》
という呪文だ。

画像3

《時間停止 / Time Stop》
コスト:4青青
インスタント
ターンを終了する。(スタックから、このカードを含むすべての呪文と能力を追放する。ターンを進めているプレイヤーは自分の手札のカードを、自分の手札の枚数の最大値になるまで捨てる。ダメージは取り除かれ、「このターン」と「ターン終了時まで」の効果は終了する。)
レア

このカードは1対1で戦っている際に、
対戦相手のアップキープに撃つと、
相手はドローステップも無く、
アップキープに得られる何らかのアドバンテージがあったとしても、
それらがスタックに乗っている間に《時間停止》を撃てば、
強制的にターンを終了させられる。
この使い方をした場合、
追加ターンをした事と同じになる。

自分:《時間停止》という手札1枚を失う。
対戦相手:ターンが潰されて、最低でもドローステップのドローも消える。

1対1ならば、
手札1枚と相手のドローステップが相殺され、
ターンが消えた分だけ対戦相手のほうが損と考える事が出来る。
その後、自分のターンが来てドローステップで1ドローするので、
実際には《時間停止》の手札消費はプラマイゼロになる。

しかし、EDHではこうならない。
EDHで前述と同じタイミングで、
対戦相手Aのターンに《時間停止》を撃ったとする。
当然、次のプレイヤーBのターンに移るだけで、
ターンを失うプレイヤーはプレイヤーA一人だけだ。
この場合において、

自分:《時間停止》という手札1枚を失う。
プレイヤーA:ターンが潰されて、
 最低でもドローステップのドローも消える。
プレイヤーBとC:二人のプレイヤーが手札や時間を損して、
 その差分だけアドバンテージを得る。

となる。
《時間停止》が弱いカードだという事は無いのだが、
何もしないまま利益を得てしまう人が出る事もある。
追加ターンを得る事と《時間停止》の違いはここだ。
一切の損を自分がする事無く、
次のターンを行う事が出来る。
追加ターン呪文を最初に書いた、
「対戦相手3人のターンを飛ばす呪文」
と考えた場合、

・3人のドローステップを飛ばした。
・3人の戦闘フェイズを飛ばした。
・3人のセットランドの権利を飛ばした。
・3人のメインフェイズを飛ばした。

・・・といった解釈に発展する。
このアドバンテージの考え方だと、
明らかに1対1よりも強い事になる。

似たような例では、、
《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》もそれに近い。

画像5

+1能力で全員の手札を1枚捨てさせる。
これを1対1で起動した場合と、
EDHで起動した場合では全く違う。
1対1で手札から落ちる最大枚数は2枚だが、
EDHなら最大は4枚。
対戦相手の手札を1度の起動で最大3枚落とす。
1枚のカードの威力としては相当なものだ。
自分の手札が0であった場合の起動なら、
その最大3枚の手札落としは完全なアドバンテージになる。

こういった視点で見た際に、
追加ターンは追加ターンとして考えるよりも、
「対戦相手3人のターンを飛ばす呪文」
と考えるほうが妥当だというのが持論。

プレインズウォーカーと追加ターンのシナジー

さらに追究していこう。
EDHという遊び方が出来た頃と今の差に大きな差がある。
それはプレインズウォーカーの存在とルール。
10年前と今ではプレインズウォーカーは桁違いに増え、
さらにルールが
以前は、
「同タイプのプレインズウォーカーがいたら、どちらか死ぬ。」
だったので、
プレインズウォーカー・ジェイス
は違う名であろうと1枚しか出せなかったが、
現在のルールは、
「同タイプのプレインズウォーカーでも、
 カード名が違えばOK」

に変わった。

このプレインズウォーカーという存在は、
MTGにはあまりにも影響が大きかった。
おおむね「強い」と目されるプレインズウォーカーは、
「能力のどれか1つを起動するだけで、
 確定に等しいアドバンテージを稼げる。」
と言える性能を持っている。

当然プレインズウォーカーは基本的には、
「能力起動は1ターンに1回」
となっている。

これを追加ターンと組み合わせると、
よりアドバンテージを稼ぎやすくなる。
これが、
ルール変更によってさらに強化された。
それが先程の、
「同タイプのプレインズウォーカーでも、
 カード名が違えばOK」
のこと。
例えば、
《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren》
が同時に並んで追加ターンをするのと、
どちらか片方だけで追加ターンをするのでは大きく違う。
いくらプレインズウォーカー・ジェイスが並んでも構わないなら、
構築の段階でも心配無用になった事も含めて、
プレインズウォーカーのルールの変更は大きい。

このプレインズウォーカーの存在とルールが、
EDHにおける追加ターンをより強くしている一因になっている。
プレインズウォーカーを複数置いて、
追加ターンをするだけでもアドバンテージが大きく成り得るからだ。
その最たるデッキは

マナ・アーティファクト
追加ターン
プレインズウォーカー

の3種ばかりを放り込んだ、
店主が好きで作っているEDHのPWデッキ。
最強クラスのEDHジェネラルには及ばないものの、
それなりには戦えるデッキになっている。
このデッキでは、
《王冠泥棒、オーコ/Oko, Thief of Crowns》
《ヴェールのリリアナ》
《精神を刻む者、ジェイス》
《Moat》
《The Abyss》
などを採用して、
《Moat》や《The Abyss》で攻撃を封じ、
《精神を刻む者、ジェイス》
《王冠泥棒、オーコ》
等の強力なプレインズウォーカーの能力を追加ターンで連打する。
1回の起動で終わりだと思ったプレインズウォーカーの能力を、
追加ターンでもう1回と言われるだけでも、
対戦相手側は相当に予想外であり、窮地に陥る事もあるだろう。

トレストの密偵長、エドリック

次に、EDHにおいて強いとされているジェネラルを挙げて考えよう。
言うまでもなく一番簡単な奴。
見たら焼けと言われる邪悪な奴。
《トレストの密偵長、エドリック/Edric, Spymaster of Trest》だ。

画像4

《トレストの密偵長、エドリック / Edric, Spymaster of Trest 》
 コスト:1緑青
伝説のクリーチャー — エルフ(Elf) ならず者(Rogue)
クリーチャー1体があなたの対戦相手の1人に戦闘ダメージを与えるたび、それのコントローラーはカードを1枚引いてもよい。
2/2
レア

こいつの能力は完全に追加ターンと噛み合っている。
《沿岸の海賊行為/Coastal Piracy》に似た能力を持っている伝説のエルフ
で単体でも能力は生かされるものの、数が並ぶと恐ろしいドロー能力。
エドリックの能力は対戦相手のクリーチャーにも影響するため、
リスクは十分にあるカードだが、クリーチャータイプも含めてとても優秀なジェネラル。

追加1ターンするだけで何枚もカードを引ける構築にしてくるし、
その追加ドローの中に追加ターンがあれば・・・という構築をしてくるのが常識。
そして緑や青には墓地のカードを回収可能なカードがある。
追加ターン、追加ドロー、そして墓地回収。
完全にハマりきった状態になると全員を倒し終わるまで、
そのプレイヤーのターンは終わらない。

追加ターン呪文の強さの理由には、
その基本固有色である青だけでも、
墓地の追加ターン呪文の回収が可能である事もその1つだ。
《思い起こし/Call to Mind》
《呪文ねじり/Spelltwine》
《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》
《復習/Relearn》
《デジャ・ヴュ/Deja Vu》
《記憶の壁/Mnemonic Wall》
などが良い例。

最後に

EDHにおいて、
「追加ターン呪文をデッキに入れてくる人」
には
「入れてくる理由」
がある。
もちろん、ただ単純に
「とりあえず入れておく」
という理由でも決して弱くないのだが、
「入れてくる理由」
があるデッキほど追加ターンを強く使える。
そしてその戦略と戦術は、
60枚構築とは大きく異なるため、
追加ターンの使い方もより難しい。
追加ターン呪文は序盤に書いた通り、
基本的には無駄にならないカード。
けれども、弱く使ってしまうとただの0マナサイクリング。
これは他の強いカード達にも言える事なのだが、
上手な人ほど強いカードを強く使う事が出来る。

昨今のカードは、
「上から叩きつけるだけで相手に勝てる。」
「手札のカードをツモ切りするようにプレイするだけで勝てる。」

と言えるようなカードと環境を作り、
そういったカードが環境で暴れ過ぎると禁止を乱発。
そんな環境とはちょっと違う世界がEDHだ。
決してスタンダード環境などを悪く言っているのではなく、
ただ叩きつけるだけでも勝てるような環境にも、
プレイングの差というものは必ずあり、
上手なプレイヤーはその中でも負けにくい。
EDHもスタンダードもそういったプレイングの差が勝敗を必ず左右している。
追加ターンの強さも、
追加ターンの強さを他人にわからせる事が出来るようになって一人前。

「弘法筆を選ばず」

と言える程のプレイングを身に着けてこそ、
本当に強いMTGプレイヤーだ。

こんなところで、
追加ターンの強さをわかってもらえただろうか。

ではまた。




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