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私は家のゴキブリを殲滅するのだと立ち上がる。大きいホームセンターの害虫対策コーナーへ。有識者からおすすめの商品を聞いたので参考にしつつ、膨大な数の商品と対峙する。バルサン的なのを焚こうと思っていたが、自室兼寝室兼コレクションルームの部屋なので気乗りしない。殆どのものを搬出しなければいけないので面倒だ。そう思いながら商品を見ていると、いい商品があった。部屋で数回スプレーするだけで部屋にいるGを撃退するらしい。スプレーした部屋にいてもいいというのだから人間に害はないのだろう。ムエンダーという商品で、まじでいい名前じゃんと思った。有識者からも名前が出ていたのでそれを買い物かごに入れた。部屋にいるGは撃退したとしても先代や末代は、と不安になったので追加でブラックキャップも買った。これ置いとけばとりあえず対峙することはないだろう。大学時代、研究室にGが出た時に怖すぎてあらゆる物陰に置いたあの日が懐かしい。公共の建物ならまだしも、部屋に出るようになってしまった。嗚呼。終わってしまった家をまた始めるために私はやるのだ。私はGの掃除人になるのだ。掃G人に。家に帰って早速ムエンダーを部屋で使用した。30分後部屋に入ると死にかけのGのお子さんとご対面してしまった。この手のものは苦しんでいるGが人間の前に出てくるのが通例らしい。まだお子さんだったのでティッシュでつまんで捨てたが、これが大人だったらと考えたら顔が青ざめた。部屋には薬剤の匂いが残っていたがハーブ系の香りで不快ではなかった。すべての部屋で使用したが、私の部屋以外ではご対面しなかった。私が一体何をしたっていうんだ。ブラックキャップを家全体に配置し、戦いを終えた。と思っていた。夕食を食べて部屋に戻ると、ベッドの上に死にかけのGのお子さんが居た。嘘じゃん、と膝から崩れ落ちた。しかしこのことから考えるは、死にかけの奴がベッドに這い上がってくるとは考えにくい。ベッドは昨日洗ったり干したりしたのでベッドから湧く線は薄い。つまり上から来ている。ベッドの上にはエアコン。考察するに犯人はお前だ。おい!探偵ごっこなんてやってる場合じゃねぇ!ちくしょう!と思いながらお子さんを捨てて、ベッドシーツを剥がして洗濯した。布団を敷いて寝た。上から奴が降ってくる可能性を考えたら眠れなくなってきた。近いうちに部屋の模様替えをしよう。今日もなにもない一日だった。

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