09/27

「何食べたい?」と聞くと「何でも良い」と言う。冷蔵庫にあるもの、或いは今日のスーパーで安売りのものを軸に考え始めてしまう。これぞ褒められし主婦脳。私の母である。非常に合理的な行動ではあるが、今作れるものではなく今自分が食べたいものはないの?と思ってしまう。娘である私に何が食べたいか聞き「何でも良い」と答えるとムッとした顔をするくせに、私のムッとした気持ちは察せないのだろうか。「何でも良い」は禁句だと気付いてから十数年経ったが、それ以来私は一度も言っていない。本当に食べたいもの、そして作れそうなものを列挙して機嫌を伺う。気に入らなければ全部却下される。このやり取りは本当に不毛だ。もちろん母のほうが何十年も長く生きていて、食事への興味が薄れているのはわかる。でもさ、それでも食べたいものってあるはずじゃん。私が今無性にフルーツサンドが食べたいようにさ。というわけで今日は長めに問いただしてみたのよ。母にね。「お昼作るから何か食べたいものある?」って。でも母はいつも「なんか美味しいもの」と答えて、その後に決まって「食べたいものないの?」と逆質問が来る。いつもはそれに答えるが、今日の私は引かない。「私は食べたいものあるよ、でも今日は母の食べたいものだよ」と諦めないわけ。話題を逸らされながら何度も聞いて、冷蔵庫の中身は一旦忘れてもらって、ひとつやっと出たのが「煮込みハンバーグ」。いい案が出たじゃないかとレシピを調べて立ち上がり、スーパーに材料を買いに行く。土井先生の煮込みハンバーグのレシピが美味しそうな上に簡素で、ありがたく参考にさせてもらった。玉ねぎのみじん切りで涙を流し、苦手な肉を素手で混ぜる。自分のためだけに作っていたら絶対にやりたくない調理過程だ。気合を入れて作った。そのおかげで生肉とちょっと打ち解けた。ハンバーグを両面焼く。煮込み鍋にソースを作り、ハンバーグを入れる。煮ること20分、煮詰めてもう10分。煮込みハンバーグが完成した。思いの外いい出来だったので、私ってもしかして料理できるんじゃと自惚れた。母は私が作っている最中にお腹が空いたらしくパンを食べていた。自由な人である。煮込みハンバーグと白米とベビーリーフメインのサラダ。最高のお昼ごはんになった。感想を聞いたら「美味しい」と言ってくれた。人のために作った料理が美味しくないわけないじゃん。今日もなにもない一日だった。

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