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通りすがりの幼い女の子に手を振られて、どう返したら良いかわからなかった。彼女はベビーカーに乗っていて、近くにはご両親とご兄弟。ご両親を見るに外国の方で、外国人の一家だと思われる。みんなで同じ方向に歩いていた。対向から歩いてきた私はその彼女と目が合い、気付いたら手を振られていた。外国人の幼い女の子ってまるで天使のように可愛い。そんな彼女に手を振られて私はメロメロなわけだが、ベビーカーという性質上ご両親たちは彼女が私に手を振ってることを知らないだろう。押して歩いている限り彼女の行動は殆ど死角になるのである。ここで私が手を振り返したらなんだあの東洋人は、と思われてしまうのではないか。急に弱気になってしまい手を振り返すのを止め、微笑みながら通り過ぎた。暗闇だったので彼女から私の笑みは見えなかったであろう。無反応になってしまい申し訳ない。誰かと一緒にいれば可愛いねとでも言い合って手を振れたが、ひとりだとなおさら無反応になってしまう。言いがかりつけられる世の中だしこのくらい慎重でも良いかと思う反面、幼い子からしたら何だこの大人はと思わせてはいないだろうかと不安になる。幼い子からしたらそんなことどうでも良いかもしれないが、私がそう思ってしまう以上何となく心残りになってしまう。他人の子に接する場面っていつでも難しい。いくら幼くてもひとりの人間として扱ってしまうので、なかなかフランクにコミュニケーションが取れない。はじめましての挨拶から始めたい。その子のご両親の目線を伺ってこちらに気がついて笑っていたりしたら気を遣って手を振ったりすることもあるが、それはとても稀な状況である。私は自分が子供の頃からずっとそんな感じだった。自分が親戚中の末っ子で身近に幼い子がいないからだと思っていたが、兄弟に子どもが生まれ日常的に幼い子と接するようになった今も変わらずそんな感じである。兄弟の子どもたちとは未だに敬語で接している。もう自分が子供を持つようなことがない限り、幼い子との距離感は埋まらないんだろうなと諦めている。幼い子ほど今後の人生の可能性が無限で、クソみたいな人生を送っている私が上の立場になることなどできない。輝かしい未来を潰してはいけないと思いそうなってしまうのかもしれない。だから私が敬語を使い、幼い子がタメ口で返答するのは当然の結果なのかもしれない。逆年功序列。今日もなにもない一日だった。

(1000字)

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