教養としてのオタク英語
欧米のオタク文化はスタートレック愛好家(Trekkie)やアメコミを愛するcomic book nerdsなど、日本とはまた別の歴史やアイデンティティがありますが、日本のアニメ・ゲーム文化との親和性は高く、一部の英語圏のオタクは日本のオタク文化を強く意識している傾向がうかがえます。アニメについての考察もかなり突っ込んだものがあり、貪欲に日本語や日本文化を探求する姿勢にはただならぬ熱意が感じられます。
私はアニメやゲームのオタクではありませんが、オタク文化を傍から楽しむのは好きですし、言語的な興味からもTwitterで取り上げることがあります。
bias
biasは元々偏向や先入観という意味ですが、K-pop界隈などではアイドルグループにおける「推しメンバー」という意味で使われています。
canon
公式は英語でofficialですが、fan fiction界隈で言う「公式」はcanonといいます。元々は聖書の正典という意味なので、その譬えでいくと同人誌は外典(Apocrypha)ということになりますね。
headcanon
公式設定はcanonですが、ファンの妄想した設定(fan theory)がその人の中で確信に変わるレベルまでいくとheadcanonと言うそうです。
英語圏のオタク文化に興味がある人にとってはかなり使える検索ワードなのではないでしょうか。
slash
男同士をカップリングさせるfan fictionはファンの間でslashと呼ばれています。「Sherlock/Watson」のようにスラッシュ記号(/)を使って表記するからとのこと。また、英語ではカップリングではなくてpairingと言います。
ちなみにslash系の元祖はスタートレックのKirk/Spockらしいです
OTP
One True Pairingの略。pairingは日本で言うところのカップリング。
one true ~は「真実の」「唯一の」という意味なので、それ以外の組み合わせは認めないという排他的思想を表しています。
weeaboo
元は日本人びいきが行き過ぎた白人ということでwhite+Japanese=wapaneseと言われていましたが、4chan(画像掲示板)の運営がサイト内のwapaneseという表記をすべてweeabooに置き換えたことから定着。weeabo自体は意味のない造語です。意味がわからない?私にもよくわかりません。
tropes
特定の作者の作品や、ジャンル、媒体において繰り返し登場する概念、ネタ、流れ、設定、パターン、構造など。いわゆる「〇〇にありがちなこと」・お決まり。
類語:cliché
death flag
「フラグが立つ」という表現は英語でもあるようですが、欧米発なのかは不明。death flagはまだtvtropes.orgでは認定待ちのようで、コメ欄には日本の「死亡フラグ」を意識した発言もあります。
しかし、映画スクリームでは「ホラー映画を生き抜くためのルール」なるものが登場しますし、「死の家族写真(fatal family photo)」や、死にやすさ番付(Sorting Algorithm of Deadness)のようなあるある要素はハリウッド映画由来な印象があります。
oniichan
妹萌えアニメの影響により一部の海外オタクの間では「oniichan」が「魅力的な男性キャラ」という意味になっているそうです。外国語の意味が歪められて他言語圏で受容されていく一例として興味深いですね。
waifu
アニメオタクが好きな女性キャラクターを「嫁」と呼ぶことから、英語圏のオタクは魅力的な女性キャラのことをwaifuと言います。yomeと言わずにwaifuと言うのはあずまんが大王で木村先生に美人な奥さんがいることが発覚したシーンの「マイワイフ」という台詞に由来するようです。
おまけ:○○フリーク
日本語で「〇〇フリーク」というと「〇〇オタク」よりややかっこいい響きがあるイメージではないでしょうか。「私は〇〇フリークだ」と得意げに言う人もいるかもしれません。確かに、「〇〇 freak」で「〇〇に熱狂的にのめり込んでいる人」という意味にもなるので、全く見当違いではないのですが、語感は「〇〇フリーク」よりも「〇〇狂い」に近いでしょうか。また、freak単体ではかなり意味が違います。変人や奇形といった意味なので、心臓が弱い人は画像検索してはいけない言葉です。