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残念な英語育児に終わらせないために 〜失敗しないための心構え〜


はじめに

「小さい頃は神童、中学高校ではただの人」というケースはいくらでもあります。英語育児もそうです。小さい頃は「成功しそう!」と期待しても、実はほとんどのお子さんは中学高校でただの人になります。残念な英語育児に終わらせたくなかったら、この文章をまずは最後まで読み切る賢さを、あなた自身が持ってください。

よくある失敗の形

伸びるどころか消えていく英語

お子さんが生まれ、あどけない顔を見ながら「絶対にこの子には英語で苦労させたくない」と願った親御さんは多いと思います。そして実際、多くの親は高額な幼児英語教材や YouTube の英語動画などをせっせと与え、子どもは柔軟な耳でネイティブの英語をどんどん吸収していきます。

0歳から4歳くらいまでは黄金期です。子どもは時に素晴らしい発音でネイティブの英語を真似て披露してくれます。英語オンリーの動画も飽きずにずっと見てくれます。英語で自分の年齢を言ったり、色の名前や天気を英語で言ったりします。

しかし、5歳、6歳、7歳と成長するにつれ、多くの親の期待は徐々に裏切られることになります。日本語の動画の面白さを知ったお子さんは当然日本語のものを見たがるようになりますし、学校が始まると忙しいので英語に触れる時間が激減します。無邪気に英語の歌を歌ったり、動物の名前をネイティブのような発音で言うこともなくなります。もちろん英語は全然話せません。

焦った親の行動

その頃になると親は焦り始めます。幼児期から頑張って英語教材を買い、英語の動画を何百、何千時間と見せてきたのに、英語ができない普通の小学生になってしまうことに納得がいきません。SNSで目にする英語ペラペラのお子さんとつい比べながら、このままではいけないと感じます。努力もしたはずなのに、たいして成果が出ていない現実を認めたくない気持ちもあります。

そうなってくると、今度は他の方法を模索し始めます。英語教室や学童保育型のスクール等もその一つです。週に1時間程度では身につかないとわかっているので、時間もお金もひたすら投下します。何十万円もの出費を何年も続ける家庭も珍しくありません。しかし、複数人を相手にする環境では一対一の会話のキャッチボールの時間は少ないですから、聞き取る耳はできても話せるようになる子どもは所詮クラスでほんの数人です。よほど積極的に先生に話しかける子どもか、自宅でも英語を使う環境のある子ども以外は、あまり英語を話したがりません。そして、通常は小学四年生くらいから読み書きの勉強が徐々に増え、楽しく通うお子さんは少数派になっていきます。

また、アプリのような教材に走る親もいます。表面上は楽しいゲームのようで、物珍しさもあって最初は取り組みます。しかし、アプリと言えど、結局は何かを覚えさせたり、正解と間違いを教えるものが多く、2年も3年も夢中になって続けるお子さんはやはり少数派です。

オンライン英会話のようなサービスを使うご家庭も増えます。よいサービスだとは思いますが、会話の内容がどうしても限定されやすいことがデメリットです。後ろで聞いていると、お子さんが流暢に英語を話しているように見えることもありますが、お子さんは「オンライン英会話で話す狭い範囲内の英語」に慣れただけで、日常会話をマスターしたわけではありません。

パラドックス

こういった親御さんたちは、「英語を勉強にさせたくない」と思って始めた英語育児だったはずなのに、手当たり次第に進めるうちに、気づけば英語はすっかり勉強になっています。子どもに対する声かけも、「英語やる時間でしょ?」、「それまた間違えてない?」、「これとこれをやっておいてね」など、いつしか英語を強要するような言葉に変わっています。英語を勉強にさせないどころか、自分たちの学生時代よりむしろもっと長い期間、子どもに「英語という勉強」を与える結果となってしまっている人も少なくありません。ここには非常に悲しい矛盾の構造が出来上がっており、それに多くの親は気づいていないのです。

成功するための基本姿勢

英語を勉強にさせない方法とは

では、どんな方法なら「英語を勉強にさせずに」子どもに習得させられるのでしょう。答えはそう、「実際に使いながら覚えること」です。結局のところ、実際のコミュニケーションを通して学ぶことに勝るものはないのです。なぜなら、英語はコミュニケーションのツールなのだから。

実際に使って覚える

もし、あなたがお箸が使えないとします。でも、子どもにはお箸を使えるようになってほしい。その時あなたはどうしますか?お箸の動画を見せるでしょうか。自分も子どももお箸は使わず、ただ動画だけを見せ続けますか?おそらくそうではないでしょう。お箸を使えるようになりたいんだから、実際に使って練習するのではないですか?

いやいや、お箸を使うのは簡単だけど英語は難しいから…と思った人はいるでしょうか。でも、世界ではお箸を使える人の数より英語を使える人の数の方が多いのですよ。

「英語が話せる」と「覚えた英語を使える」は全く違う

私たちは学生時代に難しい文法を習い、テストで細かいミスを指摘され、難解な読解問題を読まされ、聞き取れないリスニング問題を聞かされたため、英語は永遠にマスターできないものと刷り込まれています。確かに、英語の全てをマスターするのは困難です。

でも、ここに大きな誤解があるのですが、「英語で子育て」で必要になるのは「簡単な文をいくつか覚えて使うこと」であって、「どんな英語も流暢に話す能力」ではないのです。「フランス料理だろうがインド料理だろうが何も見なくても作れるスキル」ではなく、「レシピを見ながら親子丼が作れるスキル」で十分なのです。

例えば、「忘れ物ない?」を英語で Do you have everything? と言います。私たちは、英語がペラペラではないけれど、Do yoy have everything? を覚えて、あるいは紙に書いて貼って、子どもに使ってあげることは余裕でできるのです。親子の日常会話に絞れば、英語は私たちが思っているほど難しくありません。簡単な英語なら、誰でも、今日からでも、しゃべれるのです。

楽しく努力する親の姿

最初は下手でも大丈夫。誰だって最初は初心者です。お子さんが1歳以上なら、お子さんにこう言ってください。「パパ/ママはね、英語が話せるようになりたいんだ。今年の目標は英語が話せるようになることだから、あなたも話し相手として協力してくれない?」こんな風にお願いをしてからスタートするのがお勧めです。

子どもというのは、やらされると思うとやりたくなくなる生き物です。でも反対に、親が好きなことは、子どももだいたい好きになります。「英語が話せるようになりたいな」という夢・目標を持ち、それに向かって毎日楽しく懸命に努力していくのってカッコいいですよね。そして、そんな姿こそが、親が子どもに見せるべき姿ではないでしょうか。「英語やりなさい!」と言うくせに自分はやらない親と、「パパ/ママは英語がんばりたいから協力してね」と言う親。あなたが子どもならどちらの親がいいですか?

失敗しない語りかけ

自作の英作文をしない

さて、英語を実際にお子さんに使っていくことの大切さは理解できましたね。それでは、次に失敗しない語りかけの方法を見ていきましょう。

まず最初は、自分で英作文して話さないことです。自分で言いたいことを頭で考え正しい英語に訳すというのは非常に難しいことです。最初からこれをやろうとするのは無謀です。誤った英語を誤った発音でお子さんにも自分にも聞かせることになり、逆効果になりかねません。また、考えて話すと時間がかかり、円滑に話せなくなります。お子さんの前で英語でもたついていると、お子さんは英語を面倒なものと認識してしまいます。会話はスムーズで自然でなければストレスがたまります。

最初は、弊社の「子育て英語表現集」などのフレーズ集を使い、完全に正しいフレーズを発音も含めて丸暗記して使うようにします。

たとえば、「喉かわいた?お茶飲む?昨日買ってきたヤクルトみたいなやつもあるよ」と言いたいとします。この時、全てを英語にしようとするのではなく、最初の簡単な2文だけを英語で言い、3つ目は普通に日本語で言います。
Are you thirsty? と、
Do you want some tea?
は確実に丸暗記していつでもスッと使える状態にしておき、3つ目の少し長い文は迷わず日本語で言います。

子どもが英語を嫌がる原因

「子どもに英語で語りかけると嫌がられる」と言う人がたまにいらっしゃいます。それは、嫌がられるようなやり方をしているからです。嫌がられては絶対にいけません。どこかに必ず原因があります。ここでは良くある3つの原因について理解してください。

まず、一番よくある原因が「親の話す英語がよくわからない」というものです。よくわからないものを聞かされてストレスがたまるのは当然です。あなたの配偶者や友達が、ある日突然知らない言語をあなたにわざと話すようになったと想像してください。うざ過ぎませんか?ですから、わからない状態は厳禁です。初めてのフレーズを使う時は、先にサッと日本語を言ってから英語を言うようにします。さりげなく、二つの言語で同じ内容を言います。

そして、特に最初は、お子さんが喜ぶような内容を英語にするといいですね。
おやつ食べる?
Do you want a snack?
のような、自分にとって嬉しい内容なら、いちいち英語に抵抗を示すことは少ないはずです。

二つ目。次によくある原因が、「スムーズに会話が流れない」というものです。一番多いのが、英語だとしゃべりがゆっくりになってしまうことです。他にも、英語を考えて詰まったり、言葉がすぐ出てこなくて止まったり、繰り返しや言い直しでくどくなったりすることが原因です。会話は流れるようにスムーズでなくてはいけません。だから、何度も口に出して練習してみましょう。

三つ目は、二つ目と少し被りますが、「英語を話している時のパパ/ママの様子や雰囲気が嫌」というものです。例えば、英語を少し照れながら話していたり、あるいは、「子どもにこの英語を理解させるぞ!」と気合いが入っていたり、子どもの理解度をテストしているように見える時もあります。いずれにせよ、子どもは言葉の意味以外でパパ/ママが心の中で何か感じたり、たくらんでいることを敏感に察知し、通常に戻って欲しいと思います。ふだんと同じモードで、もしくは、ふだんよりもっと優しく楽しい雰囲気で話せるように心掛けるべきです。

失敗しないかけ流し

確実にやりたいかけ流し

もう一つ、必ず行うべきことは「かけ流し」です。かけ流しというのは、日常英会話の音声をBGMのようにずっと部屋で流しっぱなしにすることです。これにより、お子さんの耳は日常英会話に慣れていきます。

かけ流しでやりがちな失敗

かけ流しのやり方も、効率的なやり方と非効率なやり方があります。よくある非効率なやり方は、やみくもに英語の音声だけを聞かせるというものです。英語に触れる機会が今後ものすごく増えるなら完全に英語オンリーでも問題ないでしょう。しかし、私たちの多くはそうではありません。英語だけを聞かせていても、ぼんやり何となくわかるだけで細部の確実な理解はできませんから、グラグラな状態かつ、消えてなくなりやすい状態です。音のピッチや雰囲気に慣れるにはいいですが、中身の確実な理解や自分のものとして取り入れて発話に至らせるには不向きです。

歌を聴かせるのも非効率です。歌の歌詞に「このゴミ捨ててくれる?」や「冷蔵庫に牛乳入ってるよ」なんていうフレーズは出てきません。だから、素敵な歌を聴かせていてもしゃべれるようにはならないのです。

弊社のかけ流し音声なら、よく使われる日常会話だけに絞ってあります。そして、最初に日本語が流れた直後に英語が流れるので、頭にその状況のイメージがパッと浮かんだ状態で英語が流れます。日本人にとっては、結局この方式が一番英語が頭に入るのです。

英語絵本

実は明暗を分ける英語絵本

これまで、語りかけとかけ流しの重要性を見てきましたね。ここで、実はもう一つとても重要な要素があります。それが「英語絵本」です。

どんなに幼少期にYourube漬けにして耳を育てたとしても、読解力がなくては英語はグラグラなままです。冒頭でお話ししましたが、英語での視聴時間がだんだん減ってくると、読解力の育っていなかったお子さんの英語力はあっという間に衰退していきます。

絵本を読む習慣というのは何より大切です。かけ流しで聞いている英語や親が話している英語を、文字を通して再認知することで、頭の中で英語はしっかりとしたデータとして整理され、蓄えられていくからです。逆に、この作業なしには、高い英語力の習得は不可能です。

絵本タイムの習慣化

英語で子育てを実践している親御さんは、だいたい毎日の親子の英語絵本タイムを習慣化できています。この習慣化ができると、子どもといえど年間で500冊や1000冊くらいは当たり前のように読みます。毎日30分以上親子で読む習慣のあるお子さんは、年間5000冊以上読むケースも珍しくありません。

なぜそんなにたくさん読めるのかというと、絵本読みが楽しいからです。楽しくなければこんなに読めるはずがありませんよね。では、なぜ楽しいのか。それは、普段から親が日常で英語を話し、かけ流しで大量の英語に触れているので、英語の意味がわかり、日本語の絵本と同様に内容を楽しめるからです。そして、親御さんの愛情をたっぷりと感じられる絵本タイムが、何よりのご褒美タイムになっているからです。絵本タイムの習慣化は、英語育児において必ず成功させなくてはならない取り組みです。

最後に

以上、英語育児を失敗に終わらせないための基本的な考え方と、お子さんに英語での語りかけとかけ流しを始める際の失敗しないやり方、英語絵本の重要性について見てきました。

親が家庭で英語を話すと、子どもにとって実生活の中で英語を使うということが日常になります。それが、例えほんの数十センテンスであったとしても、お子さんと英語との関係を、私たちの時代のものとは全く異なるものに変えていきます。英語は机上の面倒な勉強ではなく、日常にあって当たり前なもの、自分でも毎日使っているもの、大切な相棒になるのです。

幼少期に日常会話に慣れたお子さんが順調に英語力を伸ばせば、中学や高校では英語の勉強に膨大な時間を割かなくても良い成績が取れるようになりますし、世界中の情報にアクセスでき、仕事の選択肢が広がり、たくさんの友達もできます。

それだけではなく、英語がわかることが一つの自信になり、他のことにも挑戦しようという意欲が湧いたり、目標を持って努力する親の姿を見て育つことで、自然とお子さん自身もそんな生き方を真似るようになります。

本当に、英語で子育てはたくさんの良い効果が得られる素晴らしい取り組みです。お子さんに英語の基礎力という最高のプレゼントをあげられるのは、一番身近にいるお父さん、お母さんです。是非、自分の成長とお子さんの成長のために、間違えないやり方でがんばってみてください。



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