恋愛小説「夏夜に咲く恋」
蝉が鳴き響く真夏の昼下がり。外の熱気に押されて部屋で涼んでいると、スマートフォンが軽快な音を立てた。画面を確認すると、幼なじみの美咲(みさき)からのメッセージだった。
「夏祭り、一緒に行かない?」
今年もこの季節がやってきた。町内の夏祭りは毎年恒例の行事で、子どもの頃から家族や友達と楽しんできたけれど、今年は違う。美咲と二人で行くことになるなんて、思いもしなかった。
「行こう、何時に待ち合わせ?」
少し緊張しながら返信を送ると、すぐに返事が来た。
「18時に神社の前ね!浴衣で行くから!」
浴衣姿の美咲を想像した瞬間、心が跳ねた。初恋の相手と過ごす特別な夏の夜が、これから始まろうとしていた。
夕方になると、暑さは少し和らぎ、心地よい風が吹き始めた。神社の鳥居の前に立ち、心を落ち着かせようと深呼吸する。美咲との待ち合わせに、こんなにも緊張するのは初めてだった。
「待たせちゃった?」
振り向くと、美咲が笑顔で立っていた。薄紫色の浴衣に白い朝顔の模様があしらわれ、髪はふんわりとまとめられている。普段の彼女とは違う大人びた雰囲気に、息を飲んだ。
「ううん、ちょうど来たところ。」
精一杯平静を装ったが、胸の鼓動が早すぎて、きっと顔が赤くなっている。美咲はそんな僕の様子に気づいたのか、少し照れたように笑った。
「行こっか、屋台もいっぱい出てるみたいだよ。」
彼女が差し出した手を、自然に握り返した。手のひらから伝わる温もりが、僕たちの関係を少しだけ特別なものに変えている気がした。
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