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2021.11.28 - 地域CL : 伊勢志摩×お京都

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introduction

西が丘で開催されている地域CL・決勝ラウンドの最終日。先に行われた第1試合では、Criacao ShinjukuがFC徳島を2-1の逆転で下し、決勝ラウンドの勝点を「7」に延ばして全試合終了。既にJFL入替戦の出場権を得られる2位以内を確定させている。大会最後の試合となる第2試合、東海1部のFC ISE-SHIMAと、関西1部のおこしやす京都ACの対戦は、JFL入替戦に進むことのできる2つめの椅子を賭けた大一番となった。

伊勢志摩は東海1部リーグで優勝こそ逃したものの2位に入り、今大会では中国・東海・北信越の3地域に割り振られた「輪番枠」での大会出場。東海リーグ王者の藤枝市役所が1次ラウンドで敗退の憂き目に遭った一方、伊勢志摩は1次ラウンドの3試合を全て無失点で凌ぎ決勝ラウンドに進出。更に決勝ラウンドに入ってからの2試合でも無失点に抑え、今大会ではここまでただの1点も失っていないという鉄壁の守備を誇っている。

一方の京都は、激戦区でもある関西1部リーグを制しての大会出場。昨年の地域CLでは関西リーグから出場したFC TIAMO枚方がJFL昇格を果たしており、関西勢として2年連続のJFL昇格に向けて山場となる一戦だ。決勝ラウンドでは初戦のクリアソン戦に0-1で敗れ、一歩遅れる形。第2日のFC徳島戦では2-0と快勝したものの、勝点「4」の2位・伊勢志摩を逆転するためには1ポイント足りておらず、この試合ではドローも許されない。90分間で勝利することが、京都のJFL昇格に向けてのマスト条件だ。

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1st half

前半最初の決定機は15分、京都は相手陣内でボールを奪い返すと、右サイドでパスを受けた守屋が裏へ抜ける動きをした高橋にスルーパス。ゴールラインぎりぎりで高橋が折り返したボールにゴール正面のイブラヒムが強烈なヘディングシュートを放つが、これはGK・増田の正面。完全にフリーな状態だっただけに、伊勢志摩としては運が味方した場面だった。

その後も試合は京都が押し気味に試合を支配。守屋と縦関係に近い2トップを組むイブラヒムの突破が強烈で、スピード勝負になると難しい対応を迫られる伊勢志摩だが、最後にフリーにはさせまい、と必死で食らいつくマークを見せる。攻勢を見せる京都が全体を押し上げてくる分、後方のスペースを狙う手段もありそうだが、まずは跳ね返すことに集中といった様相だ。

我慢を強いられる時間の続いた伊勢志摩はHTが見えてきた44分、FWの西口が自陣からのクリアを拾ってマイボールにすると、単独のドリブルでPA内まで持ち運び、切り返しからフィニッシュ。シュートが弱くなりGKにキャッチされるが、伊勢志摩はようやくゴールの匂いを感じる場面だ。

一方の京都も前半ATにゴール前の競り合いのこぼれ球をイブラヒムがダイレクトで叩き、これがゴールの僅かに右を掠めて外れた後に前半終了。ここまでは京都がゲームを支配しているが、伊勢志摩も一方的にやられていたわけではなく、後半に試合の流れが変わることも充分にありえそうだ。

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2nd half

後半最初の決定機を迎えたのはここまで劣勢だった伊勢志摩。47分、ミドルゾーンでボールを拾った真野がDF間のギャップに縦パスを送ると、これに西口が反応してシュート。これは枠内を捉えたように見えたが、GK・真田がセーブでCKに逃れ、簡単にはゴールを許さない。

一方の京都も52分にチャンス。左サイドからワンタッチプレイの連続でアタッキングゾーンに攻め込み、最後は右サイドの清水が中へ折り返し。最後は中央でフリーとなった貫名がシュートに持ち込むが、ゴール右隅を狙ったコントロールショットは僅かに枠の右へ外れてしまう。流れるようなパスワークで伊勢志摩の堅守を完全に崩してみせた京都だが、このビッグチャンスも決めきることができず。京都の選手たちが一様に頭を抱え、スタンドからは失意と安堵の混じった大きな溜息がこだまする。

60分、1点が欲しい京都は攻撃に多く絡んでいた守屋を下げ、関西リーグで得点王に輝き、この大会でも既に4得点を挙げている青戸を投入。点取り屋の青戸がゴール前での仕事に集中する分、スピードのあるイブラヒムがサイドに開いて崩しに関与する場面が増えてきた京都だが、伊勢志摩の守備も対応に慣れてきたか、簡単には崩れない。

その後も手数で京都が上回る時間が続き、72分、最後の切り札、今季限りでの引退を発表しているFWの原一樹がピッチイン。74分にはPA外のやや遠めから榎本がロングシュートを放つが、僅かにクロスバーの上を掠めてシュートは外れる。80分にはGKのロングフィードを原が頭でフリックし、最終ラインの裏にボールがこぼれ、貫名がGKと1vs1のチャンス。伊勢志摩のDFが足を伸ばして先にボールを触り、ループ気味となった弾道のボールが自陣ゴールを襲うが、これも増田がかき出してゴールを割らせない。

その後も京都が果敢に伊勢志摩のゴールを脅かし続けたが、遂にタイムアップのホイッスル。0-0のまま耐えきった伊勢志摩は今大会を通して遂に1度もゴールを割らせることなく、パーフェクトな守備で決勝ラウンド2位の座を死守することに成功。JFL16位チームとの入替戦へ進むことになった。第1試合のクリアソンと同様、伊勢志摩の選手は歓喜爆発というよりも、昇格の望みが繋がったことへの安堵を感じられる面持ちでスタンドに挨拶。一方の京都は2019年のJヴィレッジでの決勝ラウンドに続き、またしても運命の第3戦で勝ちきれずにJFL昇格のチャンスを逃すこととなった。

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impressions

どちらが生き残ってもおかしくない一戦だったが、最後は伊勢志摩が気迫の撤収を見せた。前半と後半のそれぞれ早い時間帯に相手に決定機を作られたが、前半はGKのスーパーセーブ、後半も相手のシュートミスがあってピンチを脱出。これ以外のピンチも数えたらキリが無いほどだったが、失点を覚悟せざるを得ない場面を乗り越えていたせいか、冷静さを失わなかった。

前半は跳ね返すだけの守備が中心だった伊勢志摩だが、ある程度時間が経ってからは前線でボールを収めることができるようにもなり、手数では負けていても落ち着く時間が作れるようになっていた。一方的にボールを拾われ続けていたら、この無失点という結果は残っていなかっただろう。

京都は圧倒的に攻めながらも1点が遠かった。15分のイブラヒムの決定機を相手に止められてしまい、その後は伊勢志摩の守備が対応に慣れてきてしまった。イブラヒムの縦への突破は間違いなく相手の脅威だったが、最後に身体を入れられてなかなかフリーでシュートを撃たせてもらえず。中盤の選手もゴール前に数多く顔を出してチャンスを窺ったが、やはり伊勢志摩の身体を張った守備を前に苦しんだ。

アミティエSC時代から何度も地域CLの舞台に挑んでいる京都だが、決勝ラウンドの壁がなかなか厚い。今大会に関しては、決勝ラウンド初戦のクリアソン戦で敗れ、伊勢志摩に一歩遅れを取ってしまったことが重かった。対戦順の妙もまた地域CLならではの怖さであり、面白さでもある。いずれにせよ京都が見せたサッカーは関西リーグ王者らしい迫力のあるものだった。また来年以降のチャレンジに期待したい。

かくして、今季のJFL入替戦にはクリアソンと伊勢志摩の2チームが進出することが決定。JFL16位チームとの対戦になる伊勢志摩は、今大会で見せた守備が上位カテゴリーとの試合でどこまで通用するか、楽しみにしたい。

まだ入替戦は残っているが、今季の地域リーグはこれで一旦終幕。今年は関東リーグが原則無観客開催となった影響もあり、全くといって良いほどアンダーカテゴリーの動向を現場で観ることができなかったが、クライマックスともいえる地域CLだけでも足を運ぶことが出来て良かった。来年の地域リーグがどのような形で開催されるのかはまだ分からないが、個人的には、なるべく有観客で試合が行われ、ファンが現地に足を運べるような体制となることを願ってやまない。

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