Vol.885「すばらしき世界」★★★

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 ☆ ★ 映画のなかの人生、映画のような人生。★ ☆

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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。

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  Vol.885「すばらしき世界」★★★     2021.3.17(水)
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  【1】STORY
   世間でも刑務所でも実直である故に衝突を繰り返す男。
   今回の出所で改心を図るが、屈辱と本音がぶつかり…。

  【2】Review
   ひとつひとつのシーンは温かく、そして冷静である。
   ストーリーの組立は曖昧。役所広司は熱演するが。。。

  【3】Column
   正しいだけでは、息苦しい世の中が続いている。

_______________________________________Under The Open Sky

いまや国際的にも知名度の高い西川美和監督の最新作。
出所後に改心を図る元ヤクザの男が、世間の風の冷たさと、
そして暖かさに触れていく様子をつぶさに捉えていくもの。
主演の役所広司のほか、キャストもみんな演技派ぞろい。

<オフィシャルサイト>
https://wwws.warnerbros.co.jp/subarashikisekai/

画像1


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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)

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実直であるが故に行き場のない男は、殺人事件で刑務所入り、
出所後は何とか堅気に変わろうと努力するも、世間の風は
冷たく、温かく見守る人もいれば、白い目で見る人も多い。
定職に就くこともままならず、彼はしばしばヤケを起こす…。

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┃2┃ Review (観終わったあなたへ)

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【ポイント】★★★

<内訳>
テーマ   :★★★★
ストーリー :★★
キャスト  :★★★★
スタッフ  :★★★★

印象的なシーンが多い映画です。
ひとつひとつのシーンに、リアリティがあって、
不器用で生真面目な主人公の人柄はもちろんのこと、
彼をとりまく人々のやさしさがよく描かれていく。

西川美和監督は、ひとつひとつの場面を、
ちゃんと描くのが昔から上手な監督です。
デビュー作から映画館で見てきたので間違いない。
場面づくりの完成度の高さが、この映画を引っ張ります。
たまには笑いもはさみつつ、よくできていると感心。

そして役所広司が元ヤクザの不器用さと孤独、
本当は憎めないオッサンであることとのギャップを、
全身で熱演していきます。とはいえ彼がスーツを着ると、
見慣れた我々には悪党に見えなかったりもしますが…。

ただ、これもいつものことと思うのですが、
ストーリー全体を引っ張る「軸」のようなものが、
いつもぼやけているので、観ていてスッキリしない。

例えば今作なら、こんなに世間にもてあそばれて、
自分らしさを棄てるようにせがまれてしまう主人公が、
どうしてそれでも生きようとしていくのか。
その問いに、あんまり応えていないような気がする。

そうまでして生きる意味、それを探す旅こそが、
彼が生活を定めるよりも必要だった気がするんですが…。

まあ、居並ぶ演技派を観ているだけでも価値ある作品、
ですので、気になる方は映画館で観て頂ければ。
それにしても、長澤まさみが目尻の小ジワを隠さない時代か…
私の記憶ではそれでも世界の中心にいたハズなのに…
みんな年を取ったんだな、って、ああ、私か。

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┃3┃ Column(観終わったあなたへ) 

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正しいことが何か。
それはきっと誰もが知っている。
しかし、正しいことを信じて生きることは、
きっと誰もができることでは、ないのだろう。

家に刃物を持った男が殴り込んでくる。
当然、妻を守ろうと戦うことは当然だろう。
しかし、その結果として彼はやりすぎてしまう。
そして、彼はまたしても悪党の烙印を押される。

何度も同じ事を繰り返している。
堅気を恐喝するチンピラを殴り飛ばす。
許せない、と思った時にはすぐに手を出してしまう。
正しいことをしているのに、彼は世間に評価されない。

本人はいたって真面目で、真面目すぎるほどだ。
しかし、彼には親もなく、養護施設から始まった人生は、
きっちりと目を配る人も、止めに入ってくれる人もいなかった。
彼を受け入れてくれる、堅気の場所はなかったのだ。

受け入れてくれたのは、渡世人の世界だけ。
だから彼は自然とそこに入っていくことになり、
そこで評価されるべく、生真面目に暴力をふるってきた。
彼の人生を悪くいうことは、本当にフェアだろうか。

歳を積み重ねて、長らく刑務所で暮らしたこともあり、
そんな彼を、改めて受け入れてくれる堅気の場所など、
本当にあるのだろうか。生活保護さえ本人は嫌がっている。
当然だろう、彼は正しいことをしてきたにも関わらず、
世間が、彼をそのような目で見て追い詰めているのだ。

それでも、彼を温かく見つめる眼差しがある。
本当は間違っていない、真面目な人だと信じる人もいる。
ケースワーカーだって、本当は立ち直ってほしいと願っている。
昔の姐さんだって、心を鬼にして彼を追い出していく。

堅気こそ、本当に生きるべき場所なんだ、
それはツライことなんだ、でも生きるしかない。
けれど、自分なりに正しいことを積み重ねてきたのに、
そんな自分を棄ててまで生きることに、何の価値がある?

堅気として生きることは、波風は立てないかもしれないが、
正しさを蔑ろにして、一面的な評価しか許さない世界を、
本当に素晴らしい世界と呼ぶことができるだろうか。

最近のメディアを眺めると、
過ちを犯した者に対する世間の目は、
ますます厳しくなっているように思える。
それでも、手を差し伸べる人はここにいる。
自分もまた、そのなかのひとりでありたいと願って。

2021/3/3 グランドシネマサンシャインにて。

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┃4┃ 次回予告 ほか

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その他、筆者からのお知らせなどなど。

★ 次回予告「ファーストラヴ」……………………………………

また、昔よく観ていた堤幸彦監督の映画を観てきます。
彼は確かTVドラマの「TRICK」で有名になったハズですが、
その後のスクリーンではちゃんとした硬派な映画を撮っていて、
個人的には応援しています。出演は北川景子、芳根京子ほか。


★これまでのバックナンバー…………………………………………

かろうじて、昔やっていたブログがここに残ってる。
http://filmandlife.seesaa.net/

なんと、まぐまぐが復刊できました。。。
https://www.mag2.com/m/0000197069

しかしなぜかバックナンバーは出てこない…。
まあそんなものか…ショックだが、やむなし。

そのうち過去のオススメを復刊します。
ちょっとお時間をください。
気長にやっていきますので、今後ともよろしくお願いします。

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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
 Vol.884 2021年3月17日
 発行者:モノカキスト
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