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Vol.886「ファーストラヴ」★★★★

 ☆ ★ 映画のなかの人生、映画のような人生。★ ☆

【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。

Vol.886「ファーストラヴ」★★★★
2021.3.22(月)

https://firstlove-movie.jp/

堤幸彦監督の新作は、直木賞受賞のサスペンスを映画化。
全然そんな経緯も知らず、堤監督が最近どんな映画を撮るのか、
気になって観にいきました。主演は北川景子、中村倫也、
そして獄中のサイコパス?を演じるのは芳根京子。

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【1】STORY
  美術家の父親を娘が大学で刺殺した事件。
  注目の一件を取材する公認心理師の女は、知人でも
  ある弁護人とともに、被告となった娘の殺害動機を
  探っていくが、それは自らの過去とも結びついていく。


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【2】Review
  リズム良く展開し、最後まで観させる佳作。


  【TOTAL】★★★★
  テーマ  :★★★
  ストーリー:★★★★
  キャスト :★★★★
  スタッフ :★★★★ 

  とにかくテンポ良く物事が進むので、途中で「へ?」と思うことは、
  全部置き去りにしたまま最後まで観せてしまう、テレビ的な作り。
  そして主役の北川景子に「へ?」と思っても、相棒の中村倫也が、
  一癖ありそうな、でも魅力ある男をうまく演じて引っ張っていく。

  何よりも犯人役の芳根京子が秀逸。彼女のメンヘラめいた雰囲気、
  でも、本当は何かありそうな悲劇のヒロインという位置づけが、
  映画全体に緊張感を与えるので、これもよくできているところ。

  構造自体は、犯人の動機捜しと、主人公の過去ストーリーが交錯、
  最後には法廷ドラマになってしまうという難しい組立ですが、
  テンポと演技で押し切って、なんとなくいい余韻を残して終わる。
  作り手の巧さがよく出て、最後には考えさせられます。

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【3】Column
  知らない誰かを好きになり、
  人は愛されていたことを知る。


  知らない誰かを好きになるということは、
  人生でいちばんの冒険の始まりである。  

  ひょっとしたら、見向きもされないかもしれない。
  どんなに尽くしても、伝わらないかもしれない。
  最後には裏切られてしまうこともあるだろう。

  そんな不安と戦いながら、時には強がってみたり、
  素直に伝えてみたり、隠してみたりとあれこれ身もだえ、
  それでも、人は誰かを好きになることをやめられない、はず。

  けれども、あきらめてしまう人たちもいる。
  どうして、一歩を踏み出すことができないのか。
  この映画では、ワケありの過去を持つ人々が、
  誰かを愛することの難しさに向き合っていく。

  父親を刺してしまった女子大生は、
  殺人動機について、見つけてくださいという。
  弁護にあたる国選弁護人の男、公認心理師の女。
  サイコパスめいた彼女の面会部屋での口調から、
  彼らは、どこかで自分たちに共通したものを感じている。

  「本当は、自分の親は私を愛していなかった」

  どこかで自分の中にある答えを、いつもかき消しながら、
  彼らは女子学生のなかに、自分たちの答えを探し出す。

  女遊びに事欠かなかった弁護士の男も、
  自分自身を打ち明けられない心理士の女も、
  そして、ずっと自分を傷つけてきた女子学生の被告も、
  本当は、誰かに振り向いてほしかっただけなのだ。

  でも、素直にそんなことを誰にも言えず、
  誰かに打ち明ける勇気すらもつことができず。
  だって、私はずっと振り向いてもらえなかったから。
  彼らはどんなに泣いても、母親から振り向いてもらえなかった。
  まして、見知らぬ相手に自分を打ち明けることはできなかった。

  初めて、見知らぬ誰かに恋をするということは、
  自分が愛されていたことを思い知るまでの旅路でもある。
  無条件に愛してくれる肉親の愛に、気がつくことである。
  ファーストラヴは、本当は誰もが親から受け取っているものだった。

  そして、あきらめずに進む人たちには、やがて分かる。
  本当は、誰もが同じように不安を抱えて生きていることに。
  絶対に愛される人がいないように、決して愛されない人も存在しない。
  真実に向き合えば、人はまた誰かにやさしくなれるだろう。
  
  2021/3/18 TOHOシネマズ池袋にて。

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【4】次回予告ほか
  次回は「14歳の栞」を観にいきます。
  ただ、公開が終わってしまうかもなので、その場合は違うものを。

★ 次回予告「14歳の栞」……………………………………………

とある中学校の1クラスを、それぞれの生徒の視点でひたすら追う。
ドキュメンタリーだが、ストーリーもメインキャラクターもいない。
そんな不思議な撮り方をしていて、意外と人気が出ているらしく、
予告編でも興味深いと思ったので、渋谷まで観にいってきます。


★これまでのバックナンバー…………………………………………

かろうじて、昔やっていたブログがここに残ってる。
http://filmandlife.seesaa.net/

なんと、まぐまぐが復刊できました。。。
https://www.mag2.com/m/0000197069

しかしなぜかバックナンバーは出てこない…。
まあそんなものか…ショックだが、やむなし。

そのうち過去のオススメを復刊します。
ちょっとお時間をください。
気長にやっていきますので、今後ともよろしくお願いします。

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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
 Vol.886 2021年3月24日
 発行者:モノカキスト
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