「名も無き世界のエンドロール」★★

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☆ ★   映画のなかの人生、映画のような人生。 ★ ☆ 
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【映画とは、人生を2時間で切りとるもの】
映画が魅せる、人間のやさしさ、弱さ、強さを、いっそう鮮烈に、
そしてもっと映画を観たくなる、ひと味違うメールマガジン。

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  Vol.882「名も無き世界のエンドロール」★★   2021.2.4(木)
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  【1】STORY
   幼なじみの2人が仕掛ける途中のクリスマスパニック。
   実はその伏線は、彼らの子ども時代からの出来事にあった。

  【2】Review
   サスペンスと青春ラブストーリーは食い合わせが悪い。
   餃子とサンドイッチを一緒に食べることはできない。

  【3】Column
   忘れられないからこそ、生きていこうと心は願うはず。

___________________________________________なもなきせかいのえんどろーる

若手俳優2人が熱演するサスペンス。だと思う。
特に何の前情報もなく、小説すばる新人賞の受賞作!ということで、
原作もあるのかー、と思ってモノカキストとしては見にいった感じ。

#名も無き世界のエンドロール #映画レビュー

<オフィシャルサイト>


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┃1┃ STORY (観ていないあなたへ)
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幼なじみの男2人が仕掛けようとしているクリスマスのパーティ。
しかし2人の表情は真剣で、愉快なものとは到底思えない状況。
というのも、この2人にはもう1人の幼なじみの女性がいて、
彼女との馴れそめから、その伏線が次第に明らかになっていく。

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┃2┃ Review (観終わったあなたへ)
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【ポイント】★★

<内訳>
テーマ   :★★
ストーリー :★
キャスト  :★★★
スタッフ  :★★★

冒頭から前バラシで始まるので、全体にはサスペンス。
しかし登場人物たちの過去をたどっていくと青春ラブストーリー。

この食い合わせは、最初からムリがあったと思う。
サスペンスの途中途中で、ほんわかしたエピソードが差し込まれる。
餃子を食べている途中に、サンドイッチが出てくる感じだ。
大人の2人を真剣に見ようとする都度、気持ちを逆方向に引っ張られる。

断片的なエピソードの積み上げも、物語を引っ張れていない。
原作小説の印象的なセリフを並べても、映画的には印象に残らない。
全体に、小説をそのまま映画にしてしまったのだろうか。。。
映画にするなら、全編をサスペンスの統一感に仕立て上げた上で、
過去のエピソードは効率よく、固めて投入していくべきだった。

主役の2人も、女子高生の彼女も、子役たちも一生懸命にやっている。
でも、いちばん印象に残るのは、数分しか出てこない柄本明。
筋書きと関係なく、ワンシーンを印象的に持っていけるのがベテランだ。
「幼馴染みだよ〜」には、マスクの裏側でニヤけてしまいました。

最後の20分…ごめん、私は大枠の展開が予想できたので、
あんまり驚かなかった。こんなに引っ張ったんだから、
むしろ、最後はさらにひねっても良かった。
全体的に、もう少し持って行きようがあった気がする映画。。。

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┃3┃ Column(観終わったあなたへ) 
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フランス革命期に、牢獄で多く残された遺書を紐解いていくと、
いちばん多かったメッセージは、次のようなものだったと聞く。
「私のことを忘れないで」

人はそんなに簡単に、他人のことを忘れてしまうのだろうか。
そして、忘れられてしまうことを、どうして怖いと思うのだろう。

確かに、年齢を重ねてさまざまな出来事が、
「思い出せなく」なることはある(最近は実感する)。
だが、たまに同窓会などに顔を出して、思い出話に花が咲くと、
なぜか多くの人は、私の顔を見て驚くことがある。
「おまえ、なんでそんなこと…よく憶えているなあ」

あの時、君はどうしてこんな行動をしたんだろう。
なぜ、自分はこんな返事をしてしまったんだろう。
たぶん、その時、その時に、理由や、より良いやり方を、
一生懸命に自分は考えていたから、憶えている気がする。

まして、それが親友のことであったら、忘れることができようか。
それが、かつて自分が愛していた人のことであったなら。
ひとつひとつのセリフが、振る舞いが、そして笑顔が、
いまでも昨日のことのように、思い出すことができるだろう。

あの時、自分がこうしていたならば。
後悔は、いくつも積み重なって、消えることなんてない。
まして、その人が亡くなってしまったのであれば、
その後悔を、打ち消す機会さえ、もう二度と生まれてはこない。

この映画の2人が、大人になっても過去の出来事を追うのは、
きっと、幾つもの積み重なった後悔を打ち消したいからだろう。
でも、人生を賭けて過去を書き換えようとしても、現実は変わらない。
心のどこかにあるわだかまりは、胸の内から消えることはない。

単純な復讐劇の先にあるのは、いつも空虚な無力感だけ。
もっと大切なことは、自分自身が過去を忘れずに生きていくことだ。
だって、自分がいなくなったら、その人まで消えてしまうのだから。

そして、世界中の面白い出来事や、知らない話を満喫して生きることだ。
いつか、その人にもう一度会う時のために。
両手一杯では足りないくらいの思い出話を、持っていかなくちゃ。

2021/2/4 グランドシネマサンシャインにて。


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┃4┃ 次回予告 ほか
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その他、筆者からのお知らせなどなど。

★7年ぶりくらいに再開!…………………………………………
もう、こんなことやっていたのを憶えている人はいないと思うものの、
ようやくいろんなことが落ち着いてきたので、しれっと再開します。

このスタイル、20年前に会社勤めだったときから、
全く変わっていないので、何か新しい工夫を、とも思ったものの、
正直、「テキスト」という形式に変化がないので、
これ以上のやり方やまとめ方が思いつきませんでした。。。

とりあえずこのやり方でやってみながら、
さらにメディアの進化に合わせて、より良い表現方法、
伝え方などを考えて行きたいと思っています。

ちなみに、いちおう映画レビューっぽいものも書いていますが、
筆者の想いとしては、まずは多くの人に映画を観てほしい、
そしてそれはいまこそ、必要なことじゃないかと思ってます。

傑作だろうと駄作だろうと、何かひとつは心に残る、
考えることがあるはずで、それが映画の良さなのです。
「私はこんなことを考えたよ」という「コラム」こそ、
このマガジンで読み手の皆さんに伝えたいことの本質。

そして続きは、ぜひ皆さんも劇場に向かって、
ご自身で感じて、考えてみてほしいのです。
世界にはもっといろいろなヒトがいて、いろいろなコトがある。
知らないことや知らない見方を、リアリティを持って、
伝えていけるのが映画の良いところです。

「知りたいこと」よりも「知らないこと」を知る方が、
ずっと面白いし、後々タメにもなってくるはず。
1人でも多くの人が、できれば映画館で、そうしたキッカケを、
ちょっとでもつかんでもらえたらうれしいと思っています。

★これまでのバックナンバー…………………………………………

もう、まぐまぐもメルマもなくなっちゃてますが(苦笑)。
まあ、地道にここに新作を上げていこうかな。

かろうじて、昔やっていたブログがここに残ってる。
http://filmandlife.seesaa.net/

ニーズがあれば、Netflixで観られるものとか、
過去のマガジンを引っ張り出そうかなと思います。
気長にやっていきますので、今後ともよろしくお願いします。

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【映画のなかの人生、映画のような人生。】
 Vol.882 2021年2月4日
 発行者:モノカキスト
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