#26【ホーム・アローン2】ep.2「やはり昔から本当に困ったら、星にお願いをする模様です」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#26にあたる内容を再編集したものです。
下記のアドレスでは投書も受け付けております。
■info@eiganimimittake.com
twitterでも配信情報を随時更新中です。
■https://twitter.com/mimittake
【ホーム・アローン2について】
1992年公開
監督:クリス・コロンバス
音楽:ジョン・ウィリアムズ
登場人物
ケビン・マカリスター:
主人公。8歳の少年。
ケイト・マカリスター:
ケビンの母。
ピーター・マカリスター:
ケビンの父。
バズ・マカリスター:
ケビンの兄。
鳩おばさん:
ニューヨークで暮らすホームレスの女性。
E・F・ダンカン:
おもちゃ屋の経営者。ケビンにキジバトの飾りをプレゼントする。
ヘクター:
ホテルの接客係。ケビンのクレジットカードが他人のものであると見抜く。
セドリック:
ホテルの荷物係。チップをせびる癖がある。
ハリー・ライム:
前作でケビンの家を狙った泥棒。今作ではおもちゃ屋の襲撃を計画する。
マーヴ・マーチャント:
前作でケビンの家を狙った泥棒。少し間の抜けたところがある。
【前回の振り返り】
前回の「サムウェア イン マイ メモリー」ではケビンくんのテーマと言えるような仕掛けになっていました。
(演奏)
そして後半では「泥棒のテーマ」ですね。
(演奏)
このフレーズが泥棒のテーマとして劇中に幾度となく登場しましたね。
この2つが映画の基盤となるような2曲でした。
【Christmas star】
今回はクリスマス スターという楽曲をやっていきたいと思います。
歌詞があるのですが、今回は歌詞は省いていきます。
この楽曲が演奏されるシーンには決まって共通点があります。
ホームアローン 2:ロスト イン ニューヨーク(オリジナル スコア)4曲目に収録されている「クリスマス スター」という楽曲の一部です。
(演奏)
前回もお話した通り、ホームアローン2のサウンドトラックは各種サブスクリプションで聴くことができないので、劇中で聴くか、itunesで購入するか、盤を買うかしないと聴けないのですが、本当に本当に本当にいい曲です。
英詞があるのでわかって当然なのですが、非常にクリスマスバラードな一曲ですね。
この楽曲が演奏されるシーンの共通点ですが、ケビンくんが星にお願いをする、特に家族のことを思う、という共通点があります。
さらに星が必ず出てきます。
その星が2種類出てきて、どちらも夜空にある星のことは指しません。
1つめはタイトルにもある通り、クリスマスツリーのてっぺんに付いている星のことです。
2つめは子供病院に付いている非常に大きな星の飾りです。
ケビンくんはこの2種類の星に誓うようにお願いをします。
演奏されるシーンは4回出てくるので、紹介していきます。
まずは、
39:05
ホテルで父の鞄から、アドレス帳や家族写真を眺めているシーンです。
この時ケビンくんは理想的なホリデイライフを送っているんですけど、心はどこか寂しいといった感じです。
窓の外を見ると子供病院の星がキラッと光ります。
そこでケビンくんは「おやすみ、ママ」と言います。
まるで答えるかのように「おやすみ、ケビン」と母のケイトさんが離れたフロリダから言いますね。
お互い聞こえるわけがないんですけれども、心は通じている的なことでしょうね。
願いではないのですが、家族を思う、星が出てくる、演奏される動機はそろってますね。
この楽曲のサビにあたるセクションがあるんですけど、こうですね。
(演奏)
ケビンくんが「おやすみ、ママ」というセリフの後に演奏され、そのタイミングがわざとなんですけど、非常にナチュラルに違和感なく使われていてグッときてしまいます。
次に、
1:14:00
ここはずっと怖いと思っていた鳩おばさんと打ち解けて、オーケストラホールから出た時のシーンです。
鳩おばさんにイブに1人でいることをつっこまれ、ケビンくんは色々悪いことをしたからと答えます。
それに対し鳩おばさんはイヴは点数を稼げるから「人の役に立つことをするのよ」とアドバイスをあげます。
これに対しケビンくんは家族に会いたい気持ちから人の役に立つことを考えます。
この時に子供病院の星がキラッと光ります。
その病院まで行ってみると、窓際のベットに座っている子供に手を振ります。
その時にダンカンさんの玩具屋を襲う泥棒のことを思い出し、捕まえることを決意します。
ここは非常にいいシーンですね。
ダンカンさんがクリスマスの玩具屋の売り上げを、全て子供病院に寄付している話をケビンくんは聞いています。
それがダンカンさんの「人の役に立つこと」で、その大切なお金を盗む人を捕まえれば、間接的に「人の役に立つこと」ができるとケビンくんは考えたのでしょうね。この笑顔を守りたいってやつですね。
絡み合う糸が指一本で解けるような気持ちの良い回収が行われています。
キーワードとしては星、願い、家族、人の役に立つこと、という字面だけだとなんともキリスト教と言った感じですけれども、もともとそういう行事ですしね。病院も聖・アン・小児科病院だったと思います。
やはりここも家族に会いたいという願いと星が出てきて、その星が子供病院の星の飾りであったわけですね。
そして次、
1:48:42
ここではロックフェラーセンターにある、おおきなクリスマスツリーで見事泥棒を撃退したケビンくんは、プレゼントも要らないし、家族に言ったよくないこともすべて取り消すので、せめてママだけでも会わせてほしいとツリーにお願いするシーンです。
ここではその直後ケイトさんが登場して、サムウェア イン マイ メモリーの演奏が始まるのですが、そのお願いをしている時に演奏されています。
ここは基本的にケビンくんのセリフがずっとはいっているので、コーラスなしのメロディはストリングスで基本演奏されます。
歌詞があるとセリフと被ってしまうので、観客が混乱しないように配慮していますね。
こういった細かいというか当たり前でしょうけど、心配りが大変大きな効果を生みますよね。
ここでも家族に会いたいという願い、これはいうまでもありませんし、クリスマスツリーにとても目立つ大きな星がてっぺんに付いています。
クリスマスって願いが叶うしきたりもあるんですね。
サンタクロースの存在で勝手にお願いはプレゼント限定だとばかり思っていたので、少しばかり意外ではあったのですが、プレゼントもお願いしてもらえる仕組みでしたもんね。
話は戻って、ここは母と再開する間際まで演奏される仕掛けになっていました。
となると、やはり家族と会うことにこの楽曲が演奏される動機は含まれていないということになりますね。
あくまでも家族のことを思っていることが演奏の動機になっているようです。
そして最後、
1:53:23
家族みんなとクリスマスの朝を迎えられ、兄であるバズくんとも仲直りができて、ダンカンさんのお礼のプレゼントを開けるシーンです。
ケビンくんはプレゼントを開ける途中でクリスマスツリーを見上げます。
その時に演奏が始まります。
クリスマスツリーのてっぺんには星があり、ツリーにはキジバトが付いているのを見つけます。
それで鳩おばさんを思い出し、ケビンくんはそのキジバトの片割れを鳩おばさんにあげることを思いつきます。
このキジバトというのはダンカンさんのお店で子供病院への寄付をした時にもらったキジバトのことで、2羽1組で1羽を自分が、もう1羽を特別な人にあげるとお互いが持っている限り、永遠の友情で結ばれるという話でした。
このキジバトを鳩おばさんにプレゼントしたいと思うわけです。
そうなると、ここで新たな事実が浮き上がってきます。
この楽曲は今まで、家族、願い、星がキーワードだったのですが、鳩おばさんは家族ではありません。
ということは家族という括りではなく、大切な人、願い、星がキーワードだったことに最後に気づかせてくれるなんともおしゃれな作りになっていました。
これは案外気づかないでスルーしてしまいそうですね。
ずっと家族に対しての気持ちが演奏の動機だったので、勘違いしてしまいがちなのですが、家族=大切な人ということには変わりはありません。
そして鳩おばさんと永遠の友達になりたいという願い、そして大きなクリスマスツリーの星の飾りですね。
演奏の動機としては完璧で、ケビンが鳩おばさんに会いに行く時はサムウェア イン マイ メモリーが演奏されます。
ですので、演奏自体は長くないのですが、映画のラストにふさわしいエンディング感があり、とても感動的です。
Christmas star まとめ
クリスマス スターという楽曲をフューチャーしてみると、意外な結論に向かっていきましたね。
ケビンくんは大切に思う人が増えることで成長する、そんなストーリーが見えてきました。
このテーマが演奏される動機作りはジョン・ウィリアムスさんの音楽担当された映画では本当に芸術的な出来で、劇中のなにかしらに起因して音楽が用意されています。
映画は様々な話やキャラクターが入り混じるようにして構成されていますが、その内容を観客にいちいち説明っぽくならないように、だけどわかりやすく、初めて聴いても感情に直結するような音楽を毎回書かれます。
当たり前なんですけど、その当たり前をこうも美しく、理論的に書くことができる大芸術家と呼んでも過言ではない存在ですね。
【悲しいバラード】
続いてはスター オブ ベツレヘム(エレサレム)という楽曲です。
ベツレヘムはおそらくエレサレムと同義なので、キリストさんの地元だと思うんですけど、こちらも歌詞があるのですが省いていきます。
ホームアローン 2:ロスト イン ニューヨーク(オリジナル スコア)8曲目に収録されている「スター オブ ベツレヘム」ですが、やはりアップルミュージックでは聴けないのですが、アップルミュージック ホームアローン(25th アニバーサーリー エディション)[オリジナル モーション ピクチャー サウンドトラック] 13曲目に収録されていますので、2とは違いますが、こちらでも雰囲気は掴めると思います。
(演奏)
非常に美しく、どこか悲しげなメロディがなんとも印象的な一曲です。
基本的にはコメディ映画であり、クリスマス映画のため、このような厳かな響きはあまり演奏頻度は多くなさそうなものです。
サムウェア イン マイ メモリーという楽曲はフレーズ含め32回演奏され、その他にも泥棒のテーマやクリスマス スター、ウィー オーバー スレプトという大慌ての時演奏される楽曲、ソースミュージックやポピュラーミュージックなど、演奏しなければならない楽曲が多いこの映画のどこで演奏されていたのでしょう。
ということでそんな美しくも厳かで悲しいこの楽曲が演奏される動機は一体なんなのかをみていきたいと思います。
まず楽曲自体は悲しいバラードになります。
シーズン7 #22後半でバラードの聴き分け方をやっているので、まだチェックしていない方はぜひ聴いてみてください。
悲しいバラードなので、ポジティブなシーンで演奏される機会はなさそうですね。
ではいつも通りどのようなシーンで演奏されていたかをみてみたいと思います。
まずは、
16:24
ここではケビンくんが飛行機を間違えたことには誰も気づかず、母であるケイトさんだけがどことなく胸騒ぎを感じている、そんなシーンです。
その後、レーダーに映った飛行機が違う方向に飛んでいくシーンまで演奏されます。
この時ケイトさんのどことなく胸騒ぎがすること。
取り返しのつかないミスで、ストーリーの始まりと言える重大な出来事でもあります。
状況としてはこの2つが目立ちます。
せっかくの旅行なのにワクワクできていない。
そんな印象をケイトさんが受けていて、観客はその理由を知っている状態です。
では次に、
1:03:41
泥棒たちから逃げのびたケビンくんは、叔父であるロブさんの家を訪ねます。
しかし、現在は改装工事中で留守にしています。
ホテルからも追い出され、ロブおじさんもいない状態で、ひとり夜のNYの街を彷徨います。
その時にタクシーを拾うシーンでフレーズが演奏されます。
ここではケビンくんの心情が音楽に反映されています。
非常にホラーやヴィラン音楽の作りで作曲されている楽曲の中に断片的なフレーズが登場するという形ですね。
だれもおらず、心細く怖い、不安、と言った要素が入ります。
そして次に、
1:15:01
泥棒をやっつけるための罠を準備するシーンです。
ここでも断片的なフレーズが割と多めに演奏されます。
このシーンではしっかりとリズムの要素の強いドラムが使われています。
ホームアローン 2:ロスト イン ニューヨーク(オリジナル スコア)14曲目に収録されている「プレパリング ザ トラップ」という楽曲で聴くことができます。
この楽曲はクリスマス スターと同じトラックにまとめられていて、正確には「クリスマス スター/プレパリング ザ トラップ」というタイトルになっています。
この楽曲はメロディがスター オブ ベツレヘムと入れ替わるように演奏されているのが非常に印象的です。
(メロディを演奏)
準備シーンではやはりエネルギーを感じさせるために、リズムの要素が強く出てきます。
シーズン2 #5で詳しくやっているので、興味のある方はぜひ聴いてみてください。
そこではアクションの序章のテーマと題してバック・トゥ・ザ・フューチャーの中の楽曲を紹介しています。
スパイダーマンでもアトランティスでも、準備シーンにはやはりリズムの要素というのは欠かせないですね。
このシーンでは成功するかわからない不安があるもののいろいろな仕掛けをダイジェストでお送りしています。
最後に、
1:46:56
母のケイトさんが夜のNYを手がかりなしで息子のケビンくんを探し回っているシーンです。
道ゆく人に尋ねたり、警察に尋ねたりと不安でたまらない様子です。
それはそうですね。
正直大人でも夜のNYで迷ったらかなり怖いのに、8歳の大切な息子となっては気が気じゃないはずです。
そのなかでもどうにか息子に会うために道ゆく人に聞いて回っています。
このシーンではケイトさんがセリフを多くしゃべるため、邪魔しないようにコーラスではなく、ストリングスがメロディを演奏します。
メロディも引きのばされ、オリジナルに変更が加えられ、アレンジもかなり変更しています。
ではなぜメロディが引きのばされるかというと、通行人に話しかけるタイミングでメロディが演奏されます。毎回無視されてしまうのですが、次の通行人まで最後の音が伸びて、話しかけるとまたメロディが演奏される。そういった作りになっています。
それで警察に話しかける時は演奏が移り変わっています。
ここは不安感、焦燥感が目立っています。
この4シーンを見ていくと、共通する感情があります。
それは不安感です。
1つめのシーンでは、胸騒ぎのするケイトさんと実際に違う便に乗ってしまっている事実です。
2つめのシーンでは、ケビンくんがひとりぼっちで夜のNYを彷徨うことになり、心細く不安でいっぱいの時に演奏されています。
3つめのシーンでは、罠を仕掛ける準備をしているものの、うまくいくかわからない不安とそれでもやり遂げるという意志の硬さも垣間見られます。
ですので、2つのメロディが交互に演奏され、まるでケビンくんの気持ちを映しているかのように構成されていました。
4つめのシーンでは、見つからない息子が無事か不安でたまらない母の心情を描くかのように演奏されています。
このように強く不安を感じるシーンで演奏されています。
しかし、この中に泥棒のテーマやサムウェア イン マイ メモリーが演奏される動機があればそちらが優先されます。
そのため、それ以外の不安を感じるシーンでは演奏されていることがわかります。
悲しいバラード まとめ
この楽曲は不安感が動機で演奏される、不安のテーマとでもいうような楽曲でした。
さらに誰がという人の限定もなく、皆が不安を感じる点が非常に面白いですね。
しかし、劇中よく使われる楽曲ではそちらが優先されていました。
ですので、泥棒のために演奏されず、ここではマカリスター一家に限定されていました。
今回そのようなシーンは出てこないのですけれども、例えば鳩おばさんが不安を感じたらこの楽曲は演奏するのか、ダンカンさんが不安を感じたら演奏するのかなど、もしもを考えてみると非常におもしろいですね。
ホームアローンのほかの楽曲とはかなり異質な作りになっていましたが、テーマパークの中にお化け屋敷があるような、そんな負の要素として書かれていたこの楽曲は非常に映画に深みを与えているように感じました。
【エンディング】
今回2回にわたってホームアローン2をやってきましたが、テレビでも幾度となくみた映画なのに、細かい仕掛けがまだまだあったので、名作の真髄を垣間見ました。
そして今でも聴けばこうだったなあとすぐに思い出せるという耳馴染みの良いメロディを生み出すジョン・ウィリアムスさんは、稀代のメロディメイカーであり大芸術家であることもさらにわかりましたね。
金曜ロードショーでもやるみたいなので、これを機に今一度楽しんでみてはいかがでしょうか。
次回からは「君の名は」ということで、初の邦画を取り上げてみたいと思います。
最近サブスク系にも追加され、触れやすくなりましたね。
お恥ずかしながら、いまだに観たことがなくてですね、はじめて観てラジオを録りたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
ではまた!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?