#53【ナイト ミュージアム】ep.1「また新しいライトモチーフの考え方」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#53にあたる内容を再編集したものです。
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【ナイト ミュージアムについて】
2006年公開(日本公開2007年)
監督:ショーン・レヴィ
音楽:アラン・シルヴェストリ
作曲家紹介
#31で作家紹介していますので 、まだの方はぜひ聴いてみてください。
作曲家作品
バック・トゥ・ザ・フューチャー PART 1,2,3
プレデター 1,2
ボディガード
スーパーマリオ 魔界帝国の女神
フォレスト・ガンプ/一期一会
マウスハント
スタートレック 叛乱
スチュアート・リトル 1,2
ハムナプトラ2/黄金のピラミッド
リロ&スティッチ
トゥームレイダー2
ヴァン・ヘルシング
ポーラー・エクスプレス
ナイト ミュージアム 1,2
特攻野郎Aチーム THE MOVIE
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
アベンジャーズ
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
アベンジャーズ/エンドゲーム
レディ・プレイヤー1
ピノキオ
登場人物
ラリー・デイリー:
失業中の冴えない男。博物館の警備員に就職する。
ニック(ニッキー)・デイリー
ラリーの息子。週に一度ラリーの元へ遊びに来る。
エリカ・デイリー:
ラリーの元妻で、現在はドンと再婚している。
セシル・フレデリックス:
警備員のリーダー。
ガス:
警備員の一人で元ボクシング選手。
レジナルド:
警備員の一人で黒人。
レベッカ・ハットマン:
博物館の案内員。
マクフィー博士:
博物館の館長。
(展示物)
セオドア・ルーズベルト:
第26代合衆国大統領。愛称はテディ。
T-REX(レックス/レクシー):
ティラノサウルスの化石。
骨で遊ぶのが好き。
デクスター(猿):
いたずら好きのサル。
ジェデダイア・スミス:
西部開拓時代アメリカの探検家のミニチュア。
オクタヴィウスと仲が悪い。
ガイウス・オクタヴィウス:
ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスのミニチュア。
アッティラ:
フン族の暴君。敵対者には容赦がない。
サカジャウィア:
ルイスとクラーク遠征隊に通訳として同行した、ネイティブアメリカンの娘。
ガラス越しで声が聞こえない。
アクメンラー:
古代エジプトの王で、映画オリジナルキャラクター。
石板の持ち主。
ネアンデルタール人:
いつも火を起こそうとしている。
モアイ像:
ガムが好き。
クリストファー・コロンブス:
コロンブスの銅像。
あらすじ
妻と離婚し失業中のラリーさんは、息子のニックくんに言われて訪れた職業斡旋所で、ニューヨークにある自然史博物館での仕事を紹介されます。
さっそく面接のため博物館へ訪れたラリーさんですが、そこで彼に与えられたのは夜間警備員の仕事でした。
こうして博物館の警備員として初めて迎えた夜のこと、ラリーさんは気を抜いて居眠りをしていました。
やがてラリーさんがふと目を覚ますと、展示物のティラノサウルスの化石がありません。
驚いたラリーさんが館内を探すと、なんと化石が生きているかのように自由に歩き回っていました。
さらにティラノサウルスだけでなく、館内の展示物たちが自分勝手に動き回り暴れているのです。
慌てふためくラリーさんは先輩警備員の老人、セシルさんに電話で助けを求めるのですが、セシルさんはどこ吹く風です。
こうしてラリーさんはたった一人、館内の展示物たちの大騒ぎをしずめて回るはめになってしまいました。
自由気ままな展示物たちに翻弄されるラリーさんでしたが、そんな彼をセオドア・ルーズベルト大統領の蝋人形が手助けしてくれます。
セオドアさんの言うことには、博物館に所蔵されているエジプトの出土品『アクメンラーの石板』の魔力によって、館内の品々は夜ごと命を得て動き回れるようになるのだそうです。
結局朝になると展示物は自然と動かなくなったのですが、荒れ放題の館内を見た館長からはこっぴどく叱られてしまいます。
もうこりごりだと思うラリーさんですが、ニックくんの手前仕事を辞めるわけにもいかず、こうして不思議な博物館で働くことになりました。
展示物たちのことをよく知るため、歴史の勉強を始めたラリーさん。少しずつ博物館の仕事もこなせるようになっていきます。
ある夜ラリーさんは動く展示物を見せようと、息子のニックくんを博物館に連れて来ていました。
しかしおかしな事に、その夜は展示物が動き出しません。
不思議に思ったラリーさんがアクメンラーの石板を見に行くと、すでになくなっていました。
石板を盗んだのは先輩警備員のセシルさんたちでした。
展示物に命を与える石板は人間に活力を与える力も持っていると気づいたセシルさんたちは、再び若々しさを手に入れるためこれを持ち去ったのです。
ラリーさんたちを捕らえ、犯行をなすりつけようとするセシルさんたち。
石板を取り返すため、ラリーさんは展示物たちの力も借りてセシルさんたちを追いかけます。
【はじめに】
簡潔ながらも笑いあり涙ありのコメディ映画ですよね。
コンセプトもとてもわかりやすくて今までにないもので、観終わった後味がとても爽やかなタイプの映画ですね。
コメディ映画ですが、夜中に博物館の展示物が動き出すのはファンタジーともいえますね。
しかし怖がるのではなく、その展示物といい関係を築こうとするのが、この映画のいいところかもしれません。
何かを学んだり考えたりというよりかはとても体感的で前向きな本作は、ある意味で癒し効果があるようにも感じます。
ファミリー向けなので、家族で観るにはちょうどよい映画ですね。
【様々なライトモチーフ】
今回はライトモチーフらしいライトモチーフは登場しません。
映画の中では何度も登場するキャラクターや場面はあるのですが、決まったフレーズを演奏したりすることはこの映画ではないんですね。
理由はアラン・シルベストリさんがあまりライトモチーフを多用する作家ではないという作家性の話になると思います。
以前やったバック・トゥ・ザ・フューチャーでもレディプレイヤー1でもメインテーマに展開を多く用いたり、決まったシーン、強く印象づけたいシーンにのみライトモチーフを使っていました。
もちろん監督の意向もあると思うので一概にはいえませんが、今回はライトモチーフというのはほとんど用いていません。
ではどのようにしてシーンやキャラクターのアイデンティティ性を確立しているかですが、それはジャンルによる書き分けが大部分を占めています。
今回の映画は様々な地域、歴史を取り扱っている博物館がメインに展開される映画です。
多種多様な展示物の登場はそれだけ音楽にも影響を与えます。
そこで今回は作中に登場するとても個性豊かな展示物の誰にどのようなジャンルが与えられているかを観ていこうと思います。
セオドア・ルーズベルト:ヒーロー音楽
まずは、今作のキーパソンといっても過言ではないセオドア・ルーズベルトさんですね。
第26代合衆国大統領の蝋人形です。
彼はその類稀なカリスマ性で主人公を幾度となく助けてくれて、ぽろっと大事な事を言います。
そんなルーズベルト大統領に与えられているのは「ヒーロー音楽」ですね。
やはり、アメリカの映画では大統領というのは基本的にアメリカンヒーロー音楽の要素が与えられることが多いです。
これはある種の地域性のようなもので、空を飛んだり車を持ち上げる力がなくても、人々からの尊敬を集める行いをする人へはヒーロー音楽が与えられることが多いですね。
なので方向性としてはアメリカンヒーロー音楽ということになります。
T-REX:コメディ音楽
つぎにT-REX(レックス/レクシー)です。
初めての登場時は恐ろしいヴィラン音楽だったのですが、その本性は可愛らしい犬みたいな性格でした。
そんな犬のような性格のレクシーくんであることがわかった時はコメディ音楽が用意されています。
とても軽やかでリズミカルな楽曲は、恐ろしい見た目と相反していて愉快に映ります。
実はコメディ音楽であることが重要な要素で、ここでいくら可愛らしい動きをしていても主人公にとってはデカい恐竜の骨なわけですね。
なので、音楽でできるだけ軽やかでリズミカル、さらに不安感のない音楽にする必要があります。
そうすることで、レクシーくんは悪いやつではなく、元気いっぱいな子犬のような印象を受けるようになります。
それが映画での立ち位置を表現することになるので、観客はこれからレクシーくんの登場に怯えることがなくなり、大型犬くらいの印象を受けるようになります。
アッティラ:アクションチェイス音楽
次にフン族の暴君であるアッティラさんです。
彼は、敵対した相手を何かと八つ裂きにしようとする過激派です。
そのため主人公とはいつも追っかけっこを繰り広げています。
ですので、彼にはアクションチェイス音楽がつけられていますね。
まさにといった具合で、彼らとの小競り合いは3回にわたって繰り広げられます。
初めはモアイ像にガムを持ってないか尋ねられた時、唐突に追い回されます。
もちろんチェイス音楽ですね。
次に手品を見せて友好を図ろうとした主人公が手品に失敗して、八つ裂きにされそうになるシーンです。
ここではアクション音楽ですね。
最後は展示物が好き勝手してはちゃめちゃになっているところを、アッティラさん達に見つかるシーンです。
ここでもアクションチェイスが演奏されるのですが、ここが今までと違うのは少し勇敢な要素を入れているところです。
その後両者は顔を突き合わせ、互いに雄叫びを上げるところで演奏が止まります。
ここからアッティラさんについて調べた主人公は仲良くなることに成功し、いい関係を築くのでアッティラさんに関するチェイス音楽はここで終わります。
アクメンラー:神秘的で超常的な音楽
次はアクメンラーさんというエジプトの王をモチーフにしたこの映画オリジナルキャラクターです。
とはいったもののアクメンラーさん自体に音楽が用意されているわけではなく、彼の所有する石板に関連する音楽が用意されています。
これはおもしろいですね。
アラン・シルベストリさんは、ハムナプトラ2の音楽を担当しています。
ハムナプトラの1作目はジェリーゴールドスミスさんが音楽を担当されていたのですが、2作目はアラン・シルベストリさんが担当されているんですね。
というわけでエジプトの神秘的な力を表現する音楽に関してはもうすでに経験されているというわけですね。
ということで、神秘的で超常的な時に演奏されるジャンルの音楽が用意されています。
このようなジャンルはスーパーナチュラル グランダーという超自然的で壮大なという意味のジャンルがあります。
ここでよく使われるのはターシェリープログレッションという進行ですね。
こういう進行です。
(演奏)
この進行を使うだけで一気に壮大さが出ますよね。
すべてではないですが、この進行を織り交ぜることでこのジャンルの音楽を作ることができますね。
この進行はミステリーやサスペンスでも使われます。
と少し脱線しましたが、この映画でもっとも神秘性が高いのはこの石板と言えます。
全ての元凶といいますか、夜中に博物館の展示物が動き出すのもこの石板のおかげというか、せいですよね。
ですので、超自然的で壮大であるとともに、神秘性をおびています。
アップルミュージック ナイト アット ザ ミュージアム 13曲目に収録されている「タブレット オブ アクメンラー」という楽曲があります。
この楽曲を聴いてみると、グロッケンシュピール、ウィンドチャイムなどの楽器が使用されています。
これらの楽器で出すことができる雰囲気は、やはりファンタジーの要素ですよね。
実は劇中に流れる楽曲全体にグロッケンシュピール、ウィンドチャイム、ハープなどが使われているのですが、その根源が石板にあると考えると、演奏されるたびに石板から不思議な力が降りかかっているように聴こえてきますね。
日常シーンで使われる音楽
そしてこれはライトモチーフではないのですが、映画は博物館の夜間警備をしている場面と日常の二つにわけた時、日常のシーンにはあまり音楽が使われていません。
使われているのは、
日常シーン1
42:55
博物館の外で息子のニックくんと元奥さんの再婚相手のドンさんと今度博物館を案内する約束をするシーンです。
控えめな明るいバラードといった音楽が演奏されますね。
日常シーン2
次に
48:23
同じ博物館で案内役として働くレベッカさんの夢の話と警備員の仕事が夢だったかという話をするシーンです。
主人公は息子のニックくんに心配かけまいとこの仕事についた事を打ち明けますね。
次に
48:45
にも演奏があるのですが、ここは一旦飛ばします。
日常シーン3
1:07:23
2日目の朝博物館に遊びにきた息子のニックくんの前で、主人公が館長に怒られてクビだと通告されているシーンです。
悲しそうなニックくんのアップでバラードが演奏されます。
しかしこのバラードは少しポジティブなバラードです。
理由はその後、クビを通達されていたけどもう1日チャンスももらうからですね。
演奏されるタイミング的にニックくんの気持ちにフォーカスしたかのように見えて、この後の主人公と館長とのやりとりにフォーカスされていました。
この息子のために今の仕事をしている話をするシーンともう1日夜間警備をするチャンスをもらうシーンは同じバラードが演奏されています。
アップルミュージック ナイト アット ザ ミュージアム 34曲目に収録されている「ア グレート マン」という楽曲でこのバラードを聴くことができます。
日常シーン4
そして、映画のラスト近くの
1:39:21
でも同じバラードが演奏されます。
このシーンはルーズベルトさんがニックくんに「父上は偉い人だ」というセリフに対し「知っている」とニックくんは答えます。
このようにこの3シーンで演奏される音楽が共通であることから、親子の愛のテーマということになりますね。
ある意味で親子のライトモチーフとでも言いましょうか。
この映画の大きなテーマのひとつである親子の絆が描かれているシーンでこの楽曲が演奏されていたわけです。
様々なライトモチーフ まとめ
このようにこの映画はライトモチーフこそ多くは用いていなかったのですが、ジャンルによって書き分けることで一貫性を出して視聴者が混乱しない作りになっていた、というわけですね。
なので、決まったモチーフやメロディがあるわけではないのですが、ライトモチーフと呼びたくなるつくりですよね。
その中でも息子のニックくんとの絆が描かれるシーンではしっかりとライトモーフを用意しているあたりはさすがの一言です。
この映画は夜間の博物館がメインで、自分の置かれている状況は各展示物に合うように作られています。
その展示物にジャンルによるライトモチーフを与えることで、エンターテイメントとしての楽しさを倍増させてくれているというわけなんですね。
本当にすばらしいです。
【エンディング】
今回はライトモチーフの様々な考え方について見てきました。
正攻法ではないけれど、映画の特徴にとても噛み合った手法が映画の楽しさと明快さに相乗効果を与えていて、音楽の効果としてもとても素晴らしい手法でした。
次回のサブスクリプションでナイトミュージアム2から1曲やろうと思うので、興味のある方は初月無料ですのでぜひ聴いてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
ではまた!
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