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#15【ハムナプトラ / 失われた砂漠の都】ep.2「大神官様の力は恐ろしい。それに立ち向かう勇敢な男の話」
※この記事はPodcast番組「映画にみみったけ」内のエピソード#15にあたる内容を再編集したものです。
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【ハムナプトラ / 失われた砂漠の都について】
1999年公開
監督:スティーヴン・ソマーズ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス
登場人物
リック・オコーネル:
元フランス外人部隊のアメリカ人。エヴリンらとハムナプトラを目指す。
エヴリン・カナハン:
カイロ博物館に勤務する女性。
ジョナサン・カナハン:
エヴリンの兄。財宝目当てにハムナプトラを目指す。
アーデス・ベイ:
古代からイムホテップ復活を防ぐため活動していた集団「メジャイ」の一員。
テレンス・ベイ博士:
エヴリンの務めるカイロ博物館館長であり、「メジャイ」の一員。
イムホテップ:
復活した古代エジプトの大神官。恐ろしい妖術を操る。
アナクスナムン:
古代ファラオの愛人。イムホテップと道ならぬ恋に落ちる。
ベニー・ガーバー:
かつてのリックの部下。復活したイムホテップの手下になる。
【イムホテップのライトモチーフ】
古代エジプトより復活した大神官イムホテップさんにライトモチーフがつけられています。
しかしこれはイムホテップさんに、というわけではなくヴィランにつけられている、もしくは古代エジプトの脅威につけられているとも取れます。
Apple Music ハムナプトラ/失われた砂漠の都(オリジナル・サウンドトラック)の1曲目に収録されているImhotepという楽曲の一部です。
(演奏)
映画冒頭、
0:00:00
からこの楽曲は演奏されます。
3000年前のエジプト、テーベ”生者の都”にて、イムホテップさんと王の愛妾のアナクスナムンさんとのあれこれを説明するシーンです。
この時に演奏されるメロディの一部がイムホテップのライトモチーフです。
映画冒頭で演奏されるモチーフでは、王の登場時に演奏されるのがそうです。
初めに演奏されるこのモチーフは、イムホテップさんの登場ではなく、王の登場がこのモチーフの使われ方になっています。
その後このモチーフが演奏されるのは、映画中盤イムホテップさん無双のタイミングです。
ここからイムホテップさんが登場するたびに演奏されます。
(演奏)
イムホテップのライトモチーフ シーン1
1:04:06
イムホテップさんがバーンズさんから目を奪い、エブリンさんの前に初めて現れるシーンです。
少し前から不協和音の演奏が始まり、金管楽器で非常に力強くメロディーが演奏されるこのシーンは、観客に恐怖と驚きを与えます。
関係ないですけど、1999年公開の作品では非常にCGの技術が高いなと関心しました。
イムホテップのライトモチーフ シーン2
1:13:16
イムホテップさんがバーンズさんから目だけでなく、生命力そのものまでも奪いバーンズさんはしなびてミイラ化してしまうシーンです。
主人公たちがバーンズさんのもとに到着した時は、イムホテップさんはなんだかパワーワップしてる感じになってます。
イムホテップさんはアナクスナムンさんを生き返らせるために必要な、聖なる壺を持っている人を襲い始めます。
ここからイムホテップさん無双の始まりです。
イムホテップのライトモチーフ シーン3
1:19:12
2つ目の壺が奪われるシーンです。
ここでも同じように登場時に演奏されます。
イムホテップのライトモチーフ シーン4
1:20:53
3つ目の壺が奪われるシーンです。
影で襲われているシーンを観せる痺れる演出です。
その後、イムホテップさんの実態が登場したと同時にモチーフは演奏されます。
ということは、人間から生命力を奪うことで、どんどん本来の姿を取り戻していく時にこのモチーフが演奏されることになります。
イムホテップのライトモチーフ シーン5
1:23:33
イムホテップコールと大行進が起こり、町中の人々を奴隷化したイムホテップさんが登場した時に演奏されます。
これも当時大神官であったことから、本来の姿を取り戻したと解釈できそうです。
大行進にあわせて、大きなパーカッションの音から始まるのも印象的です。
イムホテップのライトモチーフ シーン6
1:27:22
ここでは今までと少し趣向が違い、男性コーラスと金管楽器でメロディが演奏されます。
4つめの壺が奪われてしまうシーンです。
男性コーラスはこの前後の演奏で使われています。
そのすぐ後
1:27:55
皆が奴隷に囲まれてしまい、イムホテップさん登場の時に演奏されます。
ここでも男性コーラスが使われます。
このシーンでは大事な会話が多く使われます。
そのため、ストリングスの高音部でイムホテップのモチーフが演奏されます。
イムホテップのライトモチーフ シーン7
1:41:08
アナクスムナンさん復活の儀式が始まる時に演奏されます。
ここはいままでの演奏に近く、金管楽器のメロディが非常に不安感を煽ります。
そのまま主人公たちのシーンに移りかわるのですが、そのスムーズな流れが見事の一言です。
イムホテップのライトモチーフ シーン8
1:49:29
アムン・ラーの書を手に入れたことで形勢が逆転しましたが、結局イムホテップさんは強かったシーンです。
主人公との一騎打ちになるシーンでこのモチーフが演奏されます。
ここもメロディは金管楽器ですが、戦闘シーンで会話もあるので、中規模な編成での演奏になります。
イムホテップのライトモチーフ シーン9
1:51:30
イムホテップさんが倒され、なんだか怨念こもる感じの液体に飲まれていく時に演奏されます。
このシーンは唯一今までのライトモチーフの動機とは異なり、消えゆくイムホテップさんに向けて演奏されているようにみえます。
これが古代エジプトの超常的な力が失われる様としてのライトモチーフとイムホテップさんに向かられたライトモチーフの二つを感じる場面だと思います。
イムホテップのライトモチーフ まとめ
イムホテップさんの登場でこのモチーフが演奏されることが多いですが、初めの王の登場や、途中でのイムホテップさんが本来の姿に戻ることが、ライトモチーフになっているように見てとれます。
古代エジプトの恐怖の対象にこのライトモチーフが用意されているようにも感じます。
そしてほとんどのメロディが金管楽器で演奏されていました。
これは力強さに繋がりますので、イムホテップさんがいかに主人公たちの前に立ちはだかる恐怖の対象であったかを聴いてとることができます。
【ヒロイックなテーマの様々な使い方】
この映画ではリック・オコーネルさんがヒーローとして描かれています。
このヒロイックな存在としてヒロイックな立ち回りをした時は、やはりヒロイックな音楽が演奏されます。
この映画では勇敢さを称える時にこのヒロイックな音楽が演奏されます。
そして主人公であるリック・オコーネルさんだけではなく、もう一人にもヒロイックな音楽が演奏される機会があります。
この2つのヒロイックな音楽をみていきます。
ヒロイックなテーマの様々な使い方1
ひとつめは、主人公であるリック・オコーネルさんのために演奏されます。
(演奏)
31:01
主人公を含め、ハムナプトラに向かう一行の乗る船が襲撃を受け、主人公がその脅威に立ち向かう際に演奏されます。
このシーンでは勝利を迎えるわけではなく、お互い痛み分けといった感じで終わっていきます。
よく使われる方法としては、勝利や登場時などにこのヒロイックな音楽は演奏されます。
しかし今回は登場時でもなく、勝利でもない時に演奏されます。
これは勇敢さを称えての演奏になります。
ですので、ハンドガン片手に敵を牽制し、ヒロインを逃がすまでがヒロイックな立ち回りになります。
1:44:25
アナクスムナンさん復活の儀式の途中で、捕まっているエブリンさんを助ける時に演奏されます。
このシーンでも勝利ではなく、ヒロインを助けることが演奏の動機になります。
ですので、イムホテップさんを倒した時にこのヒロイックなテーマは演奏されず、イムホテップさんもどこか被害者な感じで終わっていきます。
このようにある意味で勇敢さにつけられたライトモチーフのような意味を持っていました。
ヒロイックなテーマの様々な使い方2
もうひとつは、アメリカ的なヒロイックなテーマです。
見方によっては少しコミカルに、しかしその勇敢さに皆が敬礼するシーンで演奏されます。
(演奏)
これは一つのシーンだけなのですが、非常にかっこよく機能的な音楽の使い方でしたので、紹介します。
1:35:27
ウィンストン・ハブロックさんが、捕まったエブリンさんを助けに行くために飛行機を出してくれ、イムホテップさんに攻撃され墜落してしまいます。
その際ウィンストン・ハブロックさんは亡くなられてしまいます。
そしてその遺体は飛行機と一緒に流砂に飲まれてしまいます。
その際に演奏されます。
正確にはウィンストン・ハブロックさんはイギリス空軍のパイロットなので、真意はどうなのかわかりませんが場面として非常に効果的です。
このシーンでは主人公のヒロイックなテーマと、イムホテップさんのテーマ、そしてウィンストン・ハブロックさん追悼のテーマと、音楽的な移り変わりが非常に多彩な場面です。
ヒロイックなテーマの様々な使い方 まとめ
この映画ではヒーロー映画ほど、主人公の活躍は多くはありませんが、主人公の勇敢さを表現するライトモチーフとして機能しています。
その中で主人公が勇敢なシーンは多々あるのですが、このテーマが演奏される機会は多くありません。
それよりも優先すべきイメージがあるからです。
1:36:55
このシーンではジョナサンさんが壁の装飾を剥がし、その中から出てきたスカラベに襲われたシーンです。
その際主人公がナイフでスカラベを体から剥がし、銃で退治する一連の流れは、勇敢そのものですがここではスカラベに体を食べられてしまう恐怖の方が優先されます。
そのため音楽も非常にサスペンスフルでホラーな装丁で演奏されます。
アメリカ的なヒロイックなテーマは、その名の通り英雄に向けられた音楽として演奏されます。
音の違いから主人公のテーマとウィンストン・ハブロックさんのテーマは違いが見えてきます。
主人公のテーマはどこかアラビア音楽の雰囲気を持っています。
しかしウィンストン・ハブロックさんのテーマにはアラビア音楽の雰囲気がありません。
この違いをうまく用いることで、ヒロイックな勇敢さを使い分けているのです。
【エンディング】
今回は「ハムナプトラ / 失われた砂漠の都」で使われる「イムホテップさんのライトモチーフ」と、ヒロイックなテーマの2種類の使われ方を見てきました。
次回は本作と同じくジェリー・ゴールドスミスさん作曲の映画「エイリアン」から、エイリアンの登場シーンに共通する音楽的特徴と、作中で効果的に使われる無音についてお話します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
映画にみみったけ、放送時のパーソナリティはヨシダがお送りいたしました。
podcastのエピソードは毎週日曜日に配信中ですので、そちらでもまたお会いいたしましょう。
ではまた!